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MEMORY 尸魂界篇

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「四十六室の全滅と冬獅郎と雛森さんの重症と、それを為したのが藍染で、双殛の丘にいるって事を、勇音さんが天挺空羅でみんなに報せてくれたんだ。白哉もそれで真相を知ったわけ。」
「一護が少女だという事は……?」
「夜一さんが昔作った隠れ家に、傷を癒す温泉があってな。それに浸かった時に白哉も気付いた。」

 肩を竦める一護に、雨竜がポツリと呟く。

「朽木白哉と対峙した傷が治ってるってそういう意味だったのか。」

 話がひと段落着いたと見て取った狛村左陣が口を開く。

「貴殿は、市丸隊長を反膜に囚われないように大虚を攻撃しておられたが、東仙や藍染を見逃したのは何故だ?」

 一護はチラリとギンを見て、狛村に視線を向ける。

「あんたほどの霊圧があって、何故藍染にあっさりやられたと思う?」
「む?」
「鏡花水月は、五感の全てを催眠状態に出来る能力があるんだ。幻覚だけを見せる代物ならまだいい。虚実入り混じった状態ってのは始末に困る。」
「何が言いてぇ?」

 冬獅郎が口を挟んでくる。
 一護は溜息を吐いて口を開く。

「鏡花水月を封じる術を知らなきゃ、奴を引き留めても意味がない。」

 溜息を吐きながらの一護の言葉に、隊長格が色めき立つが、元柳斎は眉を上げただけで何も言わなかった。

「それに………裏切ったって話だけで信じられるか?」
「あ……?」
「冬獅郎は実際、雛森さんが殺され掛けた姿を見てるし、自分も攻撃されてる。けど、勇音さんの天挺空羅を聞いていない者にとっては、藍染の裏切りは信じられない事じゃねぇの? 檜佐木さんなんて、自分で拘束したのに東仙要の裏切りを信じきれてないだろ。」

 一護の視線が檜佐木修兵に向くと、檜佐木はバツが悪そうに顔を背ける。東仙は藍染に心酔してると言った一護の言葉を頭から否定していた檜佐木の事を、乱菊から聞いていた冬獅郎は苦いものを飲み下した。

「鏡花水月を封じる術がなければ、どうぜ捕縛しても意味がないと思ったってのが一番。」
「市丸を連れて行こうとした反膜を断ち切ったのは?」
「勘で、市丸が藍染側じゃないって気付いたから確かめたら、市丸が藍染を倒す為に内部に侵入した事に、藍染が気付いてるからさ。あのまま一緒に行かせても、市丸は命と引き換えにしても藍染を倒せない。」
「市丸を助ける為だったのか?」

 そんな単純な理由だったのか、と言わんばかりの冬獅郎に、一護は苦笑する。

「助けた事になんのか? 藍染に信用させる為とはいえ、市丸は藍染の手先になって色々とやらかしてる筈だ。免じて貰えんの?」

 織姫と乱菊と吉良は心配そうに、ルキアは眉を顰め、白哉は表情を変える事なく、冬獅郎も含め、隊長格は難しい表情になる。

「総隊長次第なんだろうけどね。」
「では、何故、足止めをした?」

 肩を竦めた一護に、元柳斎が疑問をぶつける。

「市丸が鏡花水月の封じ方を知っているかどうか、確認したじゃん。」
「術までは訊かぬ、と申していたな。」
「無理に口を割らせたって、嘘教えられるのが関の山じゃねぇの?」

 くすりと一護が笑いを漏らしてギンに視線を向ければ、ギンは肯定するように肩を竦めた。

「私は市丸に信じてほしいんだよ。私は今回、ルキアに冤罪が掛けられて処刑されそうになってるのを止める為に瀞霊廷に、藍染言うところの殴り込みを掛けたけど、それは護廷隊が掟に従う事を優先して真実を見誤ったからだ。末席に身を置くだけと言っていたルキアですら、死神という魂のバランサーとしての誇りを持ってる。なら、隊長格の死神がその誇りを持たない筈はないんだ。私は市丸に護廷に留まって、護廷隊のみんなを信じて力を合わせてほしいと願うよ。」

 真っ直ぐにギンに視線を据えて、一護は真摯に言葉を紡ぐ。
 一護の視線を黙って受け留めていたギンが溜息を吐いて口を開いた。

「言ったやん、一護ちゃん。かなんなぁ、て。ボクにどんな処分が下されるかは知らんけど、ボクは一護ちゃんを信じるよ。」
「市丸………。」
「ギン、でええて。ギンて呼んでや。」
「……うん、ギン。取り敢えず宜しく。」

 元柳斎は、ギンの心を捉えたのは、間違いなく目の前にいる年端もいかぬ現世の子供だと理解して溜息を吐いた。

「なぁ、剣八が剣道を使わないのは何で?」

 一護は元柳斎に正面から真っ直ぐな視線を向けて訊いた。元柳斎は片目だけを見開いて一護を窺ってから溜息を吐いた。

「中央四十六室の指示じゃ。」
「………つまり、四十六室は、剣八が今以上に強くなったらいつ何時反乱を起こされるか判らねぇって戦々恐々してたわけなのか?」
「歯に衣着せぬ言い方じゃの。まぁ、否定の術はないの。」
「いくらなんでも剣八はそこまで莫迦じゃねぇだろ。」

 頭痛がするように左手で顔半分を隠す一護に隊長達は苦笑する。

「当時の更木は、そうと信じるにはちと無理があるほど荒れておったでな。」
「今からでも………。」
「冗談じゃねぇ。面倒くせぇ事は御免だ。」

 鮸もなく言った剣八に、一護は苦笑し、元柳斎は溜息を吐いた。

「そういえばいちごちゃん。」
「ん?」

 場の空気を変えるように、織姫が口を開く。

「あの時、どうして恋次君を先に治療って言ったの? 白哉さんの方が酷かったのに。」
「………って、双殛の丘での話?」
「うん。」

 頷く織姫に、一護は苦笑する。

「死神ってのは、霊圧の高さがそのまま生命力の強さに繋がるんだ。」
「うん?」
「私は二人と直接対峙したからさ。恋次の霊圧の高さも白哉の霊圧の高さも肌で感じたわけ。で、怪我の具合から考えて、恋次の方が先にヤバくなるな、と思ったんだ。」

 肩を竦める一護に、冬獅郎は目を瞠る。

「朽木が藍染に後れを取ったのか?」
「狛村さんの乱入で膠着状態は動いたんだけど、藍染の攻撃で恋次が庇ってたルキアを奪われて、白哉は私を庇って傷を負ったんだ。白哉はその体で、ルキアを助ける為に動いたからさ。」
「………それでも朽木より阿散井の方が危ねぇって判断したってか。」
「意志だけなら恋次の方が強かったんだけど、生命力と直結してるのは霊圧だからなぁ。」

 一護はカリカリと頬を掻く。
 一護の言い分に、冬獅郎は眉を顰め、白哉は苦笑し、織姫はきょとんとする。ルキアは仕方ないとばかりに溜息を吐く。恋次が恨みがましそうに視線を向けて来るが、事実なので仕方ない。

「朽木が庇ったってのは判るんだが、阿散井も朽木もボロボロだったのに、黒崎は無傷だったって?」
「勇音さんの天挺空羅を聞いた隊長達が集まるまでの時間稼ぎに集中してたのもあるけど、消耗すると反膜断ち切れないからさ。」
「って、お前、反膜が降る事知ってたのかよっ⁉」

 身を乗り出す冬獅郎に、一護は困ったように笑う。死神達ばかりか、現世組も驚いて一護を見る。

「勇音さんの天挺空羅聞いてて確信した事がある。」
「なんじゃ?」
「藍染が自己顕示欲が強い奴だってのは浦原さんから聞いてたんだけど、浦原さんに冤罪被せた時は自分がした事隠したわけだろ? それは尸魂界に居座り続ける為だったんじゃね? その藍染がばれても構わず動いてるって事は、尸魂界から逃亡する気だって。」
「それは………!」
作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙