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MEMORY 尸魂界篇

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 京楽の問いは一護に向けられていたので、一護は溜息を吐いて霊圧を収めて口を開いた。

「一旦は義魂丸代わりに私の体に入れた。体を持ち逃げしようとしたら、間違って不良品売り付けた浦原さんが回収に来るのに任せようと思ってさ。けど、あいつは私が虚退治に手間取ってる間に、別の所に出た虚から現世の人間守って怪我までしてさ。なんとか駆け付けて退治した虚が消失する前に地面に落ちそうになったら、それを蹴り上げたんだ。」
「蹴り上げた?」
「脚力強化されてた改造魂魄だ。理由ってのが、蟻の行列が其処にあって消失前の虚が落ちたら蟻が潰されて命が失われるから、っての。」

 苦笑しながら溜息を吐く一護に、死神達も呆れながらも、一護の言った身を以て証明したという言葉に納得する。

「自意識は男で、スケベで下品でお調子者で弱いくせに偉そうにしてるけど、命を大切にするって意識は人一倍強い奴だからさ。」
「改造魂魄なのに、弱いのかい?」

 京楽が不思議そうに首を傾げる。

「私が浦原さんに弟子入りしたのは十三になる前で、死神化してなかったから斬拳走鬼の走こそ出来なかったけど、斬拳鬼は結構容赦なく叩き込まれた。一角や恋次と対戦した時の体捌きは生身でも出来る。」
「「!!」」

 恋次も驚愕したが、一角のそれは更に上回る。

「マジかよっ⁉」

 噛みつく勢いで身を乗り出す一角に、それが通常では有り得ないくらい優秀だと証明している。

「それだけ鍛えてある体で低級の虚に怪我させられるなんて、弱いからじゃんか。」

 一護が当たり前のように言ってのけると、その場の多くが溜息を吐いた。周囲の反応に小首を傾げる一護は、本気で理解っていないのだと知れて、死神達は呆れて良いのか感心して良いのか判らなくなる。

「ホッホッホッ。なるほどの。改造魂魄だからと言うて、無闇矢鱈と処分すれば良いというものでもないという事じゃな。」

 言葉の出ない死神達の中で、やはり踏んだ場数の違いからか、度胸が座っている何よりの証明のように元柳斎が笑い出す。

「良かろう。黒崎一護。お主を正式に死神代行として認めよう。義魂丸も支給できるのだがな。」
「要らね。私にはコンで充分だ。」
「コン、と言うのは改造魂魄の名前かい?」

 笑い含みに浮竹が尋ねると、一護はくすりと悪戯っぽく笑う。

「そう。改造魂魄のコン。本人はカイが良いっつったけど、それだとちょっとカッコイイから却下した。」
「却下したの?」

 一護の返事に京楽も笑いながら訊ねる。

「本人は納得したのかい?」
「誰かに訊かれたらなんて答える心算だ、って突っ込んだら大人しくなった。」
「………誰に訊かれるんだい?」
「あの時点じゃ誰にも訊かれないねぇ。」

 一護が澄まして言うと、ドッと笑いが起きた。

「一護ちゃん、見掛けに拠らずイケズなんやねぇ。」

 ギンが力が抜けたようにしみじみと言うものだから、余計に笑いを誘った。抱腹絶倒する面々の中で、白哉は困惑したように苦笑している。砕蜂は笑いを堪えようとしているが肩が震えているし、卯の花は流石に控えめだが、狛村も肩を震わせて笑いを堪えている。厳格な元柳斎や生真面目な雀部まで笑っている。

「愛嬌があって、悪巧みなんか出来るような奴じゃねぇのよ。」

 肩を竦める一護に、元柳斎もそれ以上の否やは言えなかった。

「一護ちゃんは、本当に命が大切なんやねぇ。」
「………私が虚の罠に気付かずに掛かった所為で母は殺されたようなもんだ。」
「一護………。」
「いちごちゃん………。」

 ギンがしみじみとした声で口を開くと、一護は堅い声で答えた。

「仇は、自分の手で討ったではないか。」

 宥めるように言うルキアに、一護は苦笑する。
 本来の母・真咲なら、グランド・フィッシャー如きに後れは取らない筈だった。

「母親っ子で、母がいなければ何も始まらないような子供だったのになぁ。」

 苦笑する一護の瞳には諦感がある。

「もしかして、グランド・フィッシャーが五十年も死神の眼から逃れてたのって、藍染が関わってたりする?」

 ギンに向けられた一護の問いに、ギンは深く溜息を吐いて答えた。

「全然無関係、とは言えへんね。」
「どういう意味?」

 ギンに詰問したのは口を挟まないようにしていた乱菊だ。

「グランド・フィッシャーは最初、尸魂界、流魂街で藍染隊長が見つけて、疑似餌を操る能力があるんやったら現世の方が餌がある、て教えはったんは藍染隊長や。」
「なっ!!」

 身を乗り出した乱菊の大きな胸に後頭部をどつかれた形で、冬獅郎が前のめりになる。

「松本……。」

 低くなった冬獅郎の声を下から聞きながら、乱菊はきょとんとする。

「隊長~? どうかしましたぁ?」
「てめぇ……。」

 一護はその様子にくすりと笑いを漏らす。

「乱菊さん? そういうの現世じゃセクハラって言うんだぞ。」
「え~? あれは男が女性にする嫌がらせの事………。」
「加害者・被害者が男女どちらでも言うんだよ。」

 一護が溜息を吐きながら言うと、乱菊が不満そうな表情をする。

「冬獅郎が見掛け以上の子供なら兎も角、そうじゃないんだろ?」
「………判ってて、呼び捨てか?」
「……ああ。悪い。感覚としてどうしても見た目に左右されるから。妹二人が丁度冬獅郎と同じ見掛けの年齢なんで余計に。」

 肩を竦めてさり気なく訂正を回避した一護に、冬獅郎は苦虫を噛み潰した表情になる。

「すっかり喜助に感化されおって。」

 夜一が溜息混じりに呟くと、聞き付けた一護がチロリと舌を覗かせる。夜一と一護を見遣って空鶴がクックックと喉を震わせて笑いを噛み殺す。
 場が和やかに流れていく。



作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙