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桜恋う月 月恋うる花

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「じゃ、取り敢えず、場所移動しましょうか。警戒心を持たれているのははっきり言って鬱陶しいので、さっさと払ってしまいたいですから」

 くすりと笑って、態と挑発する。
 この程度の挑発で動揺するなら取るに足りないけど、どうなるかしらねぇ。
 内心で考えながらもそれを表には出さないように気を付ける。
 ぞろぞろと連れだって壬生寺に出向くと、巡察当番に当たっていないらしい平隊士が集まっていた。
 主だった幹部が勢揃いしている集団に、平隊士達がざわめく。
 千鶴ちゃんはおっかなびっくりといった様子で土方さんの後ろからくっついている。
 沖田さんと並んで歩く私の後ろで、和麻さんがうんざりしたように溜息を吐きながら歩き、綾乃が面白そうに、煉が心配そうに見遣っている。
 近藤さんの実力の程は判らないけれど、少なくとも和麻さんはこの中の誰よりも強い事は確かだものね。

「で?」

 一音で疑問を向けてくる土方さんに、私は頷いて応える。

「まずは私からお相手致しますよ」

 前に進み出た私に釣られるように、周囲から人が引けていく。
 真ん中に立った私に、斎藤さんが木刀を投げて寄越す。
 斜め後ろから投げられた木刀を振り向かずに受け取ると、平隊士の間にざわめきが起こる。
 和麻さんに視線を送り軽く肩を竦めると、和麻さんは軽く視線を伏せて鼻先で笑いを漏らした。
 斎藤さんは気配を消していなかったのだし、投げられた木刀は緩い放物線を描いていたのだ。
 受け取る事が難しい状態などではなかった。
 軽く握ってゆっくり振る。
 一振りでこの木刀のバランスを把握するくらい、私にも和麻さんにも訳なく出来る事。

「平助……」
「待って、土方さん」

 平助君を指名し掛けた土方さんを遮って沖田さんが声を上げる。

「僕にやらせてよ、土方さん。神矢は散々僕を挑発してくれたんだから、応えるのが礼儀でしょ?」
「総司」

 一瞬眉を顰めた土方さんが此方を窺うように視線を向けてくる。思わず失笑してしまう。

「天下に名だたる新選組の沖田総司に相手をして頂けるとは光栄の極みというもの。私は一向に構いませんよ」

 沖田さんは『羅刹』の首を刎ねた時の私の剣捌きを見ているから、私の腕を把握した気になっているのでしょうけど、生憎とあんなのは普段の鍛錬並みでしかないのよね。
 どうせ昨夜のも、思い掛けない手だったから油断した、なんて言い訳染みた考えなのでしょうし。
 内心の余裕を隠し、態度はあくまでも真剣に。というか、どんな小物相手でも気を抜くのは愚の骨頂。
 獅子は鼠を刈るにも全力を傾ける、という諺があるくらいだもの。
 うっかり手抜きなんかして隙を突かれる愚を犯す心算はない。
 尤も、沖田さんにだけ理解るようにわざと負ける心算ではいるけどね。


作品名:桜恋う月 月恋うる花 作家名:亜梨沙