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桜恋う月 月恋うる花

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 斎藤さんの特技は抜刀術。所謂射合い抜き。試合ではあまり使われない技だけど、この人の場合はかなり極めていそうなのよね。
 沖田さんはイケイケだったから読み易かったけど、この人は静かな分、沖田さんよりは読み難い。けど、足音をさせているようではまだまだね。
 間合いを詰めてスピードを読んで剣筋を測り、避けて反動を利用して振り抜く。バランスを崩した隙を突いて小手で木刀を落とす。
 よし!

「一本! 神矢」

 斎藤さんをして驚愕に目を瞠っている。

「随分早い」
「ありがとうございます。和麻さんと比べたら半分にも満たない速さですけどね」
「八神殿はそんなに速いのか」
「ええ。最早人間の域を逸脱していますからね」

 ウインクをすると、感心したような視線を和麻さんに向けた。和麻さんは何処吹く風である。
 それにしても、沖田さん、斎藤さんと続くと癖が強くて切り替えしなくちゃだから結構クルかも。
 乱取りとかなら複数分を自分に都合よくリズムを作ってしまえばいいけど、一人相手だと相手を自分のリズムに引き込むのは案外大変なのよね。沖田さんも斎藤さんも若い割に熟練度が高いから。

「んじゃ、次は俺様が行くとしますか」

 名乗りを上げたのは永倉さん。
 この人は、試衛館出身者の中では一番癖がない正統派だから楽といえば楽なのよね。
 強い事には変わりないけど、剣を振るう時には計算よりも勘だから、
 速さで沖田さんに劣る以上勝てない相手じゃない。
 青眼に構えた永倉さんに合わせて青眼に構え出方を待つ。
 一歩踏み込むと同時に振り上げたので、軽く横に動いて構えた木刀で流すように受けて滑らせるように流す。
 方向を操り、永倉さんが反転する前に、受け留めていた木刀の角度を変えてそのまま突き込む。
 仰け反って避ける処へ続け様に撃ち込む。
 沖田さんの三段突きを真似て撃ち込んでみたが、ぎりぎりで躱された。
 脚を停める事無く移動しながら、永倉さんが体制を整えて横薙ぎに払ってきた木刀を、立てた木刀で停め、袈裟懸けに撃ち込んで来ようとするのを避けて擦れ違い様に脇に撃ち込む。
 パンッ!
 小気味のいい音が響く。

「い、一本! 神矢」

 土方さんが狼狽えたように判定する。
 試合、となれば永倉さんが試衛館出身者では一番強い筈だから、無理もない反応なのかも知れない。
 土方さんの視線が鋭くなっている。
 あらら? もしかして読みに走っている?

「休憩を入れるか?」

 あ、やっぱり。
 くすりと笑って、小さく首を振る。

「続けてで構いません」
「……平助、思い切っていけ」
「応さ!」

 軽い身のこなしで立ち上がった平助君の剣は、正統派の永倉さんとは大違い。
 服装と同じで、基本や規則性を無視している。
 熟練度が足りない所為か無駄な動きが多いから、読み難いけど体力消耗も激しいわね。
 次々繰り出される技を軽く躱しながら観察を続ける。
 癖は強いけど、性格かしら、かなり素直な剣筋だわ。
 これは気合で強いクチみたいね。
 撃ち込んでくる剣を躱し流し、相手の力を利用して体力消耗を防いで凌ぐ。隙だらけ過ぎて決め所に悩みそうだわ、これは。
 苦笑して、時間のロスを抑える為に、平助君の小手を受けた木刀を跳ね上げて、そのまま振り下ろし肩に叩き込む。

「あっ!」

 負傷するほどの力は入れてないけど、手にしている木刀を落とすくらいの力は入れたから、もしかしたら痺れくらいはあるかも知れない。

「一本、神矢」

 土方さんの声にはもう驚きは含まれていない。
 平助君は顔を顰めて肩を抑えていたが、荒くなった息が収まる頃にはほっと息を吐いて立ち上がった。

「すげぇな、神矢」
「ありがとうございます」

 すっと頭を下げる。

「続けていけるか?」

 背中から掛かった声に振り向くと、好戦的な笑みを浮かべた原田さんが、既に木刀を肩に掛けて立ち上がっている。楽しそうな表情でそれこそウキウキしている。

「あ~、やる気満々、ですねぇ」

 苦笑して、正位置だろう真ん中に戻る。
 身長差は和麻さんと然して変わらないけれど、流石に体格差は威圧感を感じるくらいだわね。尤も、これくらいで気押されたりはしないけれど。
 確か原田さんは隊士に稽古を着ける時に、相手に合わせて剣を振るう人だった筈。もしかしてバリエーションを楽しめるかも。
 私もつい、期待にワクワクしてしまう。

「なんか、静香姉様、楽しそうですね」

 ぼそりと煉の声がする。
 和麻さんが、観察するような視線を原田さんに向ける。
 綾乃は不思議そうに私と原田さんを見比べている。


作品名:桜恋う月 月恋うる花 作家名:亜梨沙