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桜恋う月 月恋うる花

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 千鶴ちゃんは、流石実質主婦業を担っていただけあってまあまあ手際が良い。
 屯所内で陽当たりが良い割に人通りの少ない場所に布団を並べて陽に当てる。無論、その前に拭き掃除を済ませておいてからだから、実質布団を日干し出来る時間は短いが、そこは〝力”を有効利用。
 布団を干した傍を雪搔きし、その場で煉に焚火をして貰って熱風を送ったから余計に乾いた。
 隊務の合間に沖田さんがちょっかいを掛けてきたので、邪魔にならない範囲は好きにさせていたけれど、邪魔になる時は容赦なく冷水を浴びせた。
 井戸から汲んだ水?
 そんなの勿体ない。
 大きな雪玉を作って投げつけ、沖田さんの頭の上で瞬時に溶かしてやったわよ。雪玉は大きくとも水になってしまえば大した量じゃないから、髪が濡れる程度にしかならないけど、どうかすると襟足に落ちるから結構冷たい筈。
 折角干している布団の上では仕掛けなかったけれど、廊下などの拭き掃除の時は、雑巾を濯いで絞る手間を省くくらいの気持ちで、容赦なく仕掛けた。
 沖田さんは文句を言っていたが、近藤さん、土方さん、山南さんの許可は取ってある。私の方が分がいい。
 千鶴ちゃんは始終心配していたが、斎藤さんは流石に私が仕掛けるタイミングが何を意味しているのか早々に気付いたようだ。
 私達が掃除をしている傍で刀の手入れをしながら和麻さんと話したり、将棋をしたりしながら、懲りずに繰り返し仕掛けてくる沖田さんを諌めていた。
 昼餉の支度にも手を出しながら、掃除と布団干し。
 夕餉の支度には綾乃も加わったが、綾乃は質素な食事に眉を顰めていた。
 確か新選組は、怪我やら病気やらで、実働人数が隊士数の割に少ないんだっけ。
 衛生と食事の管理をもっと徹底しないと資金の無駄だわね。
 後で土方さんに直談判してみよう。
 夕餉の支度が終了した頃には、短い冬の日は傾き始めていた。

「すっかり斎藤さんの非番を潰してしまいましたね。」
「構わん。あんた達のお蔭で干した布団で眠れるからな。」

 夕食の後、近藤さんの案内と、斎藤さん、沖田さんの護衛(監視)付で、私達と千鶴ちゃんは近藤さんの別宅まで案内された。

「この寒空にのんびりお散歩はしたくないです。小走りになってもいいから急ぎましょう。」

 言うと、近藤さんが気遣わしげに千鶴ちゃんと綾乃を見遣る。

「私は大丈夫ですよ?」

 千鶴ちゃんはニコリと気丈に笑って近藤さんを見返した。

「あたしだって大丈夫です。」

 綾乃は意地、なんだろうね。

「着いてからゆっくりすれば良いでしょう。和麻さん、綾乃と煉をお願いしますね。」
「わーってる。綾乃、煉、はぐれんなよ。」
「理解ってるわよ。」
「頑張ります。」

 足を速めた近藤さんに、私は千鶴ちゃんの手を掴んで続いた。綾乃はムキになって続いて来ようとしている。ムキになって突っ走ろうとする綾乃を和麻さんが牽制し、千鶴ちゃんのスピードに合わせて近藤さんが脚を進める。ばらけないようにスピードを保ち、固まって速足で歩きながら、近藤さんの別宅まで急いだ。



作品名:桜恋う月 月恋うる花 作家名:亜梨沙