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桜恋う月 月恋うる花

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 細部までは知らないようだったが、その存在を知っているだけでも充分、俺達の機密を握っているという事だ。

「態々そんな事まで話して良いのか?」

 利害が一致するというのは、あくまでも神矢達の言い分を信用しての場合であって確証があるわけじゃねぇ。
 にも拘らず、そんな事まで明かせば、自分達の置かれた状況を悪くする事が理解らねぇ馬鹿じゃねぇ筈だ。
 真意を問うように見つめれば、神矢は苦笑して肩を竦めた。

「未来から来たのだと言ったでしょう? 明確に言えば、何をすれば確実に私達が元の場所へ戻れるのかは判らないけれど、新選組が失った人材を失わずに済む術があります。上げ損なった功績を上げる術も判ります。」

 神矢にとっては過去の事、なのだろう俺達の歴史。
 これからの俺達に何が起こるのかを知っていながら、全てを語ろうとはしない。
 それはおそらく、俺達の未来というものはあまり明るくはない、という事なのだろうな。


作品名:桜恋う月 月恋うる花 作家名:亜梨沙