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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 ダークネスとウィッチが息を合わせて突っ込んでくる。ミラクルとマジカルは胸で両腕を固く組んで集中し、ダークネスとウィッチの同時の飛び蹴りを防いだ。それでもすさまじい衝撃を受けて二人一緒に鉄砲玉のようにぶっ飛んで、背中から激突した大木を次々とへし折ってから地面に叩きつけられる。その後も体で地面を穿って進み、彼女らが通った後に吹き上げた粉塵が蛇のように長く連なった。
「モフ―ッ!? ミラクル、マジカル!?」
 モフルンが粉塵の中を走っていくと、目の前に防御の態勢のまま土に埋もれているミラクルとマジカルの姿が現れた。モフルンが口の辺りに両手を持ってきて震えていると、マジカルが思いの外元気に立ち上がった。モフルンは安心して星の宿る瞳に涙を浮かべた。
「あんな攻撃をまともに受けたら立ち上がれなくなるところだったわ」
 後から立ち上がったミラクルには、もうどうすればいいのか分からなかった。二人に向かってダークネスがゆっくり歩いてくる。
「スピードに決定的な差があるのだから、対抗して戦えば確実に攻撃を受けてしまう。最初から防御に集中してダメージを最小限に抑えるとは最良の選択だったわ。マジカルは冷静ね」
 歩いていたダークネスが途中で立ち止まって桃色の小さな袋を拾い上げる。
「あ!? わたしたちの闇の結晶!」
 ミラクルが叫ぶと、ダークネスが弦月的な笑みを浮かべた後に言った。
「これはもらっておくわ」
 ミラクルがどうしようと言うようにマジカルのことを見つめた。
「後わたしたちに出来ることといったら……」
 マジカルは校長の言葉を思い出すと、ミラクルの手を握って言った。
「撤退しましょう」
「マジカル……」
 撤退というマジカルの言葉がミラクルには衝撃だった。相手に手も足も出せず、その挙句に逃げるなど、プリキュアとしての誇り傷ついて悲しくなる。うつむき加減で目を伏せているミラクルとは逆に、マジカルは笑みを浮かべて言った。
「これは戦術的撤退よ、負けじゃないんだから」
 普通なら完全な負け惜しみにしか聞こえないが、微笑するマジカルを見ているとミラクルは安心して胸がずっと軽くなった。ミラクルがモフルンを抱き上げ、二人同時に森の大木を跳び越える大ジャンプをしてダークネスの前から去っていった。
 後から歩いてきたウィッチがダークネスと並ぶと言った。
「いっちゃったね」
「マジカルは……」
 ダークネスが手のひらに乗せた桃色の袋見つめる。
「マジカルはわたしたちの攻撃を受けた時に、わざとこの袋を落としたのよ」
「え、そうなの!? なんで!?」
「ミラクルはどんなに追い詰められても諦める気配がなかったわ。今までそういう気持ちで戦ってきたんでしょうね。マジカルがこうしなかったら、ミラクルは力尽きるまで戦い続けたかもしれない。マジカルがこの袋を落として、それをわたしが手にしたことで戦う理由がなくなった」
「そんなことしないで普通に渡せばよかったのに」
「そんなことしたら完全に負けを認めることになってミラクルの心が傷つくでしょう。マジカルはミラクルの身と心の両方を守ったのよ。あんなに追い詰められた状況でそこまで配慮できるなんてね」
 ダークネスが硬い表情で袋を握りしめる。彼女には勝者の余裕といったものは一切なかった。

 みらいとリコは無人島の先端から緩やかに波立つ海を見つめていた。プリキュアになって初めての敗北を味わい、さすがに二人とも元気がなかった。みらいに抱かれているモフルンが心配そうに上を見て、みらいの顔をのぞいた。みらいが海を見つめたままに言った。
「わたしたちの魔法がぜんぜん通用しなかったね。むこうの魔法の方が強いってことなのかな……」
「そうじゃないのよ」
 みらいが右を向いて、はっきり断言するリコを見つめる。
「小百合はわたしたちに勝つためにずっと研究していたのよ。今思えば、あの二人とは二度一緒に戦ったけれど、リンクルストーンの魔法を一度も使わなかった。それに対してわたしたちは、ほとんどの魔法を小百合に見せてしまった。小百合は自分たちの手持ちの魔法で、わたしたちの魔法にどう対抗するか考えて、完璧に対策を練って挑んできたのよ。むこうに手の内を晒してしまったのがわたしたちの敗因よ。迂闊(うかつ)だったわ」
 二人の視界に飛び去って行く2人乗りの箒が入ってくる。リコは小さくなってゆく小百合たちの姿を強い光を灯すマゼンダの瞳で見つめていった。
「次は負けないわ」
「リコ……」
「負けっぱなしじゃ悔しいでしょ、次は絶対に勝ちましょう」
「うん!」
 リコが自信満々に言うと、みらいの顔に明るさが戻った。
「さあ、帰って校長先生に報告しましょう」
 リコが言った。それから二人は箒に乗って大空へ向かって飛翔した。
 
「う〜ん」
 その夜、ラナは帰ってきてからベッドに転がってずっとうなっていた。リリンを膝にのせてテーブルで勉強していた小百合がついに我慢できなくなって言った。
「さっきから変な声出してなによ?」
「みらいとリコ、迷ってるよね。さっき戦ってる時に迷ってるって感じしたんだ」
「それは結構なことだわ。迷いは弱さにつながるからね」
「そんなのずるいよ! ちゃんと闇の結晶を集めてるわけを話そうよ。そしたらもっと気持ちよく戦えるでしょ」
「なんですって? そんなことしたら……」
 小百合があごに手をそえて考え込んだ。そして考えがまとまると笑みを浮かべる。
「そうね、妙案かもしれないわね」
「妙あん? 妙なあんこ?」
「なんであんたは、いつもいつもそんな変な方向にいっちゃうのよ!」
 小百合に少し強く言われると、ラナが珍しく考えだした。小百合が黙って見ていると、何か閃いたのかラナの難しい顔がふっとゆるむ。
「小百合の家で食べたいちご大福おいしかったよね!」
「なんの話よ!?」
「だって、妙あんでしょ?」
「妙案っていうのは、いい考えかもしれないってことよ!」
「そうでしょ〜っ! いい考えでしょ〜っ!」
 ラナがベッドから降りて小百合に接近し、碧眼をキラキラと輝かせた。小百合は少しだけうざったそうに言った。
「明日の放課後あたりに魔法学校に行きましょう」

 魔法学校の終業のチャイムが鳴り響く。通学の生徒たちが箒や絨毯のバスで飛び立っていく。それとは入れ違いに魔法学校の制服姿の小百合たちが二人乗りの箒で校門の前に降りた。小百合はラナにリリンを抱かせてから言った。
「ラナはリリンと一緒にここにいて」
「一人で行くの?」
「あんたと一緒だと面倒なことになりかねないから、ここで待っててね」
「はぁい……」
 ラナは残念そうな顔をしていた。本当はリコとみらいに自分の気持を伝えたかったのだった。
 生徒がほとんどいなくなって学校が静まり返った頃に、みらいが一人で校舎の中を散歩していた。小百合たちとの戦いがあり、それを思い出すとやるせない気持ちになり、気を紛らわすのにモフルンを抱いて歩いていた。みらいは窓辺に立ち止まり、暮れ行くオレンジと影の黒に染まった外の景色を無心で見つめる。
「みらい!」