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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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「素敵なフリッターができあがったわね」
「あ、ありがとうございます……」
 両手を柔らかく組んで笑顔を浮かべるリリアに、フェンリルはぜえぜえと肩で息をしながら言った。初めての料理に魔力も神経も使ってもうへとへとである。
「じゃあ、仕上げよ」
「や、やっぱりやるのか……」
「あなたがこんなに一生懸命に料理を作ったのは、食べてもらいたい人がいるからでしょう。その人のことを思い浮かべるよの。あなたきれいだから恋人かしら?」
「いえ、そんなのはいません」
「じゃあ家族かしら?」
「まあ、なんというか、猫……です」
「ペットの猫ちゃんね! ペットも家族の一員だもの、あなたの愛は伝わるわ。その猫ちゃんのことを思い浮かべてやってみましょう」
 フェンリルはなんか違うなと思いながら言った。
「わかりました、やってみます!」
 フェンリルはぎこちない手つきでハートを作り、それをフリッターに向けて手下の猫たちのことを思い浮かべた。
「愛情! はいれーっ!」
「それじゃ、怒ってるみたい。もっと猫ちゃんを可愛がるように優しい気持ちで」
「あ、愛情は・い・れ!」
「う〜ん、まだ愛情が足りないわね」
 フェンリルは頭を振って明らかに邪魔になっている手下猫たちのイメージを追い出す。
 ――この試練を乗り越えなければ、本当においしい料理はできないんだ! 覚悟を決めろ、フェンリル!
 ただ猫の餌になるものを作りたいだけだったフェンリルの中に料理に対する情熱が燃え上がった。フェンリルは少女らしい可憐な動きで白くてしなやかな指で描いたハートを愛を注ぐように魚のフリッターに急接近させて、
「愛情は・い・れ?」
 可愛らしいウィンクまでしてリリアを感動させた。
「素晴らしいわ、フェンリルちゃん! あなたの料理に込められた愛情は必ずとどくわ」
「あ、ありがとうございます、先生……」
 フェンリルは恥ずかしくてリリアの顔が見られなかった。それからフェンリルは、もう一つ料理を習ってリリアの家を出た。彼女は広々とした草原の広場に立ち青い空と白い雲を見ながら感慨深い気持ちになって言った。
「人間って毎日あんな風に料理作ってるのか、こりゃバカにできないね」
 それから何日後かに、魔法商店街の野良ネコに美味しそうな料理を食べさせる美少女のことが噂になり広まっていくのであった。

 夜の魔法商店街に二つの人影が躍る。影が商店の屋根に飛び移り、一方の影が背中のマントを泳がせて疾走し、その後をとんがり帽子をかぶった影がついていく。二人は屋根から屋根へと飛び移り、ひときわ高い商店の屋根の上に舞い降りた。大きな三日月を背景に二人の少女の黒い影が青白い月光の中に浮んでいた。
「この時間なら闇夜に紛れて行動できるわ」
「わたしたち黒っぽいもんね〜」
「猫を片っ端から捕まえてみましょう」
「プリキュアだったら猫なんて簡単に捕まえられるね!」
「さあ、狩りの時間よ」
 ダークネスの声が宵の闇に吸い込まれる。二人は散開して夜の魔法商店街を駆け巡った。ある猫は人の気配を感じて逃げようとした瞬間に首根っこを捕まえられた。
「フにゃーッ!?」
 びっくりして鳴き声をあげると、口にくわえていたものが落ちた。ダークネスがそれを拾って月明りに照らす。闇の結晶だった。
「いきなり当たりだわ」
 ダークネスが猫を放してやると一目散に逃げていった。
「まて〜」
 ウィッチも何かをくわえている猫を追いかけていた。その猫が人が通れない細い路地に逃げ込むと、ウィッチは商店の屋根に飛び乗り上から追いかけて、猫よりも早く走って猫が別の路地から出てくるところを待ち伏せして捕まえた。すると猫は爪を出して暴れまくる。
「引っかいたってむだだよ。猫の爪なんてぜ〜んぜん痛くないんだから」
 ウィッチが手を出すと猫が諦めて口にくわえていた闇の結晶を放した。
「ごめんね」
 と言いながらウィッチは猫を放した。二人は次々と猫を捕まえていった。闇の結晶を持っていない猫の方が多かったが、それでも十数個は集まった。魔法工場街でも同じことをしてかなりの収穫を得ることに成功した。

 翌朝、フェンリルがいつもの路地裏の集会場に行くと、集まってきた手下の猫たちに元気がないので気になった。
「どうしたお前たち? 今にも死にそうな顔をしているよ」
 群れの中からロナが出てきて言った。
「フェンリル様、それが……」
「はっきりいいな」
「闇の結晶を奪われましたにゃ」
「なんだと!? 誰に奪われたっていうんだい!?」
「みんなの話だと、黒っぽい服を着た二人組の女の子らしいにゃ。猫よりもずっと早くて、あっという間に捕まったそうにゃ」
「なああぁっ!?」
 フェンリルが歯を食いしばり牙をむく。
「こっちの作戦の裏をかいてきたか、プリキュアめ!!」
 フェンリルは腹が立ってどうしようもなく、近くの壁をバリバリ引っかきまくった。
「くっそーっ! プリキュアめ! 頭にくる!」
「フェ、フェンリル様……」
 フェンリルの怒りに触れてロナの心が凍り付く。手下の猫たちは自分たちは終わったと思う。しかし、フェンリルはこの怒りを手下の猫たちにぶつけるわけにはいかなかった。それは自分の首を絞めることにしかならないと彼女は心得ている。フェンリルは壁に一通り怒りをぶちまけると、手下たちの前に座って言った。
「お前たちは気にしなくていい。奪われちまったものは仕方がない。これからも今まで通りやっておくれ」
「りょ、了解にゃ!」
 ロナが答えると他の猫たちは安心しすぎて魂が抜けそうな息を吐いた。手下の猫たちがいなくなるとフェンリルは光の翼で飛び上がり、商店街を見おろしながら思った。
 ――プリキュアが邪魔してくるんじゃあ、わたしも動かなきゃいけないね。

 朝にエリーがノックする音を聞いて扉を開けると、外に半分目を閉じている小百合が立っていた。
「今日もお願いしますぅ」
 ちょっと寝ぼけているのか、言葉づかいが変だった。
「小百合ちゃん、大丈夫? 眠そうだけど」
「ねるのが夜中になってしまって……。大丈夫です」
「中に入って」
 エリーが小百合をテーブルの前に座らせると、小百合は座ったままうとうとしてしまう。そんな小百合の前にエリーはコップにジュースを注いで出した。
「はい、しぼりたてのリンゴジュースよ」
 小百合は目を開けて少し赤い目で申し訳なさそうにエリーを見る。
「ありがとうございます」
 一口飲めば甘くてさわやかなリンゴの果汁が小百合の体に染み渡るように感じる。あまりにも美味しくて殆ど一気に飲んでしまった。これで少し目が覚めた。その時にエリーが小百合の対面に座って言った。
「ずっと小百合ちゃんに言いたいことがあったのよ」
「なんでしょうか?」
「ありがとうね」
「え?」