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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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「ラナちゃんのことよ。あの子、おばあちゃんを亡くしてから落ち込んじゃって、ご飯もろくに食べなかったのよ。たった一人の肉親を亡くしたんだから、そうなるのは当たり前なんだけど、わたしも村の人たちも明るくて元気なラナちゃんしか知らなかったから、どうしていいか分からなくてね。そしたら今度はラナちゃんがいなくなって大騒ぎ、村の人総出で探したりもしたのよ。そうかと思えば、ひょっこり小百合ちゃんと一緒に帰ってきてびっくりしたわ」
「そうだったんですか。申し訳ありませんでした」
 それを聞いたエリーがクスッと笑った。
「小百合ちゃんて、ラナちゃんのお姉さんよね。小百合ちゃんが謝ることないのに」
「確かにわたしが謝るのは変ですね」
「ラナちゃんが帰ってき一番うれしかったのが、いつものラナちゃんに戻っていたこと。それはきっと小百合ちゃんのおかげだから、だからありがとう」
「そんなこと……」
 救われたのは自分の方だと小百合は思う。小百合はラナを自分が救ってやったという感覚は持っていなかった。
「今日の箒の練習はお休みね」
「え? どうして?」
「小百合ちゃんは頑張りすぎだから、たまにはお休みしないとね」
「そんなことありません。今は魔法学校だって行っていませんし」
 言ってから小百合はあっと思って手で口を塞いだ。それからエリーの顔を見て小百合は言った。
「エリーさんは、わたしたちが学校に行っていないこと気にしてますよね」
「気にならないと言えば嘘になるけど、理由もなく学校を休むような子たちじゃないって分かってるつもりだから。きっと、それ以上に大切な理由があるんでしょう。それは聞かないでおくわ」
「エリーさん……」
 エリーの心づかいに小百合は胸が温まるように感じる。でも少し眠かった。そんな小百合にエリーは言った。
「今日は帰ってすぐに寝ること」
「はい、そうします……」

 ロキの居城、暗黒の城。城の廊下に瞬間移動してきた白猫フェンリルは、ロキに闇の結晶を献上するために歩き出した。すると、途中でボルクスに出会った。図体はでかいのに、ちみっこい猫の前で萎縮していた。
「あんたこんなところで何やってんだい?」
「今ロキ様のところにいっても怒られるだけだからよお……」
 彼はプリキュアが倒せなくて悩んでいるのであった。元は自分の闇の結晶集めを邪魔されたくないフェンリルが彼に提案したことだが、半分はボルクスをからかうつもりで言ったことなので、そんなに真剣に悩まれるとフェンリルは彼が少し可哀そうになってきた。
「とりあえずプリキュアは置いといて、あんたも闇の結晶を集めなよ。そうすりゃ、ロキ様も少しは認めてくれるさ」
「いや、俺はプリキュアを倒す! プリキュアはロキ様にとって邪魔なんだ。俺はそれを倒してロキ様に認められたいんだ」
 フェンリルは目を細めて白い尻尾を動かした。
 ――こいつはこいつなりに真剣なんだな。
「おい、フェンリル。俺はお前の命令を聞かなきゃならねぇ。だから命令してくれ、プリキュアを倒せと」
「……まて、お前はわたしが何にもいわないからこんな所にいたのか?」
「ロキ様にそういわれたからな」
「アホか! そういうのを指示まち人間っていうんだよ! いや、お前は指示まち巨人か。とにかく、プリキュアを倒したいんなら行動しろ!」
「そうか! よし、今からプリキュアを倒しに行くぜ!」
 ボルクスが急に元気になって屈強な腕を天井に突き上げて言った。
「まてまて、闇雲にいってもダメさ。わたしがいい作戦を考えたからお前も手伝え」
「なにをするつもりだ?」
「名づけて、プリキュアに変身させないで倒しちゃおう作戦だ」
「なんだか卑怯な作戦だな」
「うるさい! 卑怯だろうが何だろうがプリキュアを倒せばロキ様は喜ぶ! そうだろう!」
「お、おう、確かにお前のいうとおりだ」
「プリキュアはお前に倒させてやるよ。まあ、変身させないからただの小娘だけどな」
「しかし、変身させないってのはどういうことなんだ?」
「そこんところは、わたしが何とかする。とにかくお前はプリキュアを倒せ」
 フェンリルが牙をむき出しにして狂暴な笑みを浮かべた。

 テーブルの上のリリンは口をへの字に曲げて小百合とラナを見ている。二人は向かい合ったままくっついて眠りこけていた。リリンは朝からほったらかしにされて、もう昼が近づきつつあった。まだ二人が起きる気配がなかった。
「リリンはつまんないデビ! おなかすいたデビ! 小百合、ラナ、おきるデビ!」
「……ついに飛べたわ………」
「むにゃ…みんな一緒だぁ……」
 小百合とラナの寝言が帰ってきた。
「デビーっ!」
 リリンが癇癪(かんしゃく)を起して机を両手で何度もはたく。ぬいぐるみの手なのでパフパフいうだけで小百合たちを起こせるような音は出なかった。
「もういいデビ」
 リリンはドアに飛んでいって外に出ていく。外にはリンゴがたくさんなってるので、それでも食べようと思ったのだ。そして、外に出ると心ときめく匂いがリリンの鼻に触れる。
「くんくん、甘い匂いがするデビ!」
 リリンが匂いをたどると地面に白い小皿に乗った一枚のクッキーが見えた。
「クッキーデビ!」
 リリンは少し形の悪い丸いクッキーを手に取って一口食べる。サックリ甘いクッキーが口の中でほろりと溶けて天にの昇るような気持になった。
「とってもおいしいクッキーデビ〜」
 美少女姿のフェンリルがリンゴの樹に隠れてリリンの様子を見ていた。彼女は闇の結晶の反応をたどってこの場所を発見したのであった。
 ――どうだい、リリア先生直伝のふわりんクッキーの味は! 一口食べたらもうやめられないよ。
 まだクッキーの匂いがするのでリリンが辺りを見ると、白い小皿のクッキーが点々と置いてあった。明らかに怪し気だが、リリンは何も疑わずにクッキーを食べては移動した。そしてついに見つける、リンゴの樹の横に大皿にのった山盛りのクッキーを。
「すごいデビ! おいしそうデビ!」
 リリンがクッキーまで走って夢中になって食べ始まると、リンゴの樹の後ろから伸びてきた手がリリンを素早く捕まえて、樹の陰に引っ張り込んだ。
「デビーッ!?」
 リリンの叫び声はすぐにぷっつりと消えてしまった。それからリンゴの樹の後ろからフェンリルが現れて、手に持っている白い袋を持ち上げて見た。中でリリンが暴れて袋が動いていた。
「まずは一匹」
 フェンリルは弧の笑みを浮かべると、背中に光の翼を広げて上昇し、魔法学校のある方向へ飛んでいった。
 それからしばらく後、今度は魔法学校の校庭にある噴水の縁で誘き寄せられたモフルンが山盛りのクッキーを食べていた。
「とってもおいしいクッキーモフ〜」
 近くの支柱に潜んでいたフェンリルがそろりと出てくる。後ろから近づく人影にクッキーに夢中のモフルンは気づかない。捕まる直前に水にフェンリルの姿が映ってモフルンは振り向いた。
「モフ―ッ!?」
 袋をかぶせられてモフルンが悲鳴をあげる。モフルンを探していたリコとみらいが悲鳴を聞いて噴水の前に駆けつけた。みらいが辺りを探しても誰も見当たらなかった。
「モフルンどこにいるの!? モフルン!!」
「みらい、これを見て」