二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

INDEX|117ページ/168ページ|

次のページ前のページ
 

 リコが噴水の縁のところに置いてある手紙を見つける。リコがそれに近づくと、清らかな水面には鏡のように自分の姿が映り込む。リコは手紙を拾い上げて見た。
「これって……」
「なんて書いてあるの?」
 手紙には魔法界の文字で「ぬいぐるみは預かった。返してほしければ、このはな島に来い」と書いてあった。
「大変だわ! モフルンは誰かにさらわれたのよ!」
「すぐに助けに行かなきゃ! でも、このはな島って?」
「このはな島は妖精の聖地と言われている場所よ。人が立ち入ってはいけないことになっているから、校長先生に許可をもらいに行きましょう」
 二人が全力で走って校長室に向かった頃に、小百合たちもリンゴの樹に貼りつけてある手紙を見つけていた。
「寝ている間にリリンがさらわれるなんて不覚だわ……」
「どうしよう、小百合……」
「どう考えても敵の罠があるけれど、それでもこのはな島に行くしかないわね。ラナ、このはな島って知ってる?」
「知ってるよ、名前は!」
「……場所は?」
「わかんない!」
「……エリーさんに聞いてくるから、あんたは出発の準備ね」
「はぁい」
 ラナが緊張感のない返事をする。小百合はラナが事の重大さを理解していないように思えて不安になった。それからすぐに二人は箒に乗ってリンゴ村から飛び立った。

 モフルンとリリンが二人一緒に樹に縛り付けられていた。その前に白猫のフェンリルが座っている。地面では丈の低い野の花が満開になっているので、フェンリルの体は半分くらい花に埋もれていた。
「リリンもモフルンも捕まってしまったモフ、大変モフ」
「プリキュア大ピンチデビ」
 地面を軽く振動させて巨体がフェンリルに近づく。
「なんだぁ、そのぬいぐるみ共は?」
「こいつらを捕まえておけばプリキュアは現れないのさ」
 フェンリルが言うとボルクスが首をひねる。
「本当なのか?」
「後はここにやってくる小娘どもをつぶすだけだ。それはあんたに任せるよ」
「おう、任せておけ!」
「わたしは見物させてもらうよ」
 フェンリルは少し離れた場所にある樹の幹を素早く駆け上がって太めの枝の上に座った。ボルクスは地面の花を押しつぶしてあぐらをかいて待ち構えていた。

 みらいとリコが箒で島の先端部に降りてくる。そこからもう広大で鮮やかな色彩の草花の平原になっていて、遠くの方が霧が濃くなっていて見えなかった。この島はほとんどの土地は草花に覆われているのだ。
「うわぁ、すごく広いお花畑だね」
「前に行った妖精の里は、ずっと遠くに見えるあの霧の中にあるって、校長先生が言っていたわ」
 その時、二人は誰かが草花を踏みながら近づいてくる音を聞いた。振り向いた二人の視線の先に小百合とラナが立っていた。
「小百合、どうしてここに?」
 リコが言った。みらいは小百合の姿を見たとたんに辛い気持ちになって表情を曇らせた。小百合がそんなみらいの姿を見つめて、彼女がいつも抱いているモフルンの姿がないことを確認した。
「あんた達もやられたのね」
「もっていうことは、そっちもリリンがさらわれたのね」
 小百合は頷いてからリコに言った。
「協力しましょう。お互いに2人じゃどうしようもないでしょ」
「ええ、そうね。4人でも心配だけど、2人よりはましね」
 それを聞いたみらいとラナの表情がぱあっと明るくなる。しかし、みらいの胸の奥には決して抜けない棘のような悲しみが疼(うず)いていた。
「4人のプリキュアがそろったらどんな敵でも楽勝だよね!」
 ラナが言うとみんな妙な顔で黙ってしまう。
「あれ? みんなどしたの?」
「あんた、重大なことがわかってないわね」
「なあに、重大なことって?」
 まるで理解していないラナに小百合は腕を組んで物分かりの悪い子供をさとす母親のように言った。
「わたしたちがプリキュアに変身する時にどうしているのかよく思い出してみなさい」
「えっと、変身するときは二人で手をつないでキュアップ・ラパパ―っていってからリリンが飛んできて……」
 ラナが急に黙り、徐々に顔が青ざめてくる。そして最後に震えあがって言った。
「うわ〜っ!? リリンがいないと変身できな〜い! どうしよう小百合! ちょうやばいよ!」
「今頃それに気づくあんたの方がやばいわよ」
 思わず笑ってしまうみらいに、呆れ顔のリコ、二人とも先行きが不安になった。急に元気をなくして萎縮するラナは、天敵を怖がる小動物を思わせる。
「プリキュアに変身できないのに、どうやってリリンとモフルンを助けるの……?」
「だから4人で協力するんでしょう」
 小百合が言った。不安でいっぱいのラナが目で何かを訴えるようにリコとみらいを見つめる。
「大丈夫よ。きちんと作戦を立てていけば必ずチャンスはあるわ」
「そうだね! でも、この広い島のどこを探せばいいんだろう?」
 みらいが広大な花畑の前で途方に暮れると小百合は言った。
「敵はわたし達をおびき寄せたいはずだから、わざわざ探させるような真似はしないと思うわ」
「なにか目印になるようなものが置いてあるかもしれないわね」
 リコの言うことに同意するように小百合が頷き、みんなでその目印を探して歩き出した。
「あ、なんかたってる」
 目の良いラナがさっそく何かを見つけると、それに駆け寄った。ラナは矢印の形をした白い看板に書いてある文字を読み上げる。
「ぬいぐるみはあっち、だって〜」
「すごくわかりやすい目印だね」
 みらいがそう言うと、危機的な状況のはずなのに、このちょっとしたコミカルさを感じる文字入りの看板のせいで緊張がゆるんでしまいそうだった。小百合が看板の横に立って言った。
「この矢印の方向だと、あの森の中ね」
「作戦を立てましょう」
 リコの提案でその場の空気が再び緊張した。

 このはな島の花の平原では蜂のような姿の妖精が花の蜜を集めていた。妖精には働き者が多いが、その中にやる気のないのが一人いた。彼は頭全体を覆うピタリとした黄色い帽子の上に蜂の触角を付け、黒いタンクトップの上に黄色と黒の横しま模様のストラップ付の半ズボン姿で、背中にある蜂の翅で羽音をたてて飛んでいる。彼は適当にちょろっと蜜を集めてから仲間から離れて寝る場所を探していた。
「ま、いちおう蜜は集めたしな。後は適当な場所で昼寝でもすっか」
 彼が寝るのに丁度いい場所を探し求めていると、森の中でどんと座っているボルクスを発見した。
「な、なんだあのでかいのは!?」
「モフゥ……」
 ボルクスの後ろから聞き覚えのある声が彼の耳に聞こえてきた。気になった彼はボルクスに見つからないように隠れながら近づいていく。
「あ、あいつは!?」
 彼はボルクスの背後で樹に縛られているモフルンに気づいて慎重に近づいていく。
「モフルンじゃねぇか、こんなところで何やってるんだ?」
「あ、チクルンモフ〜っ!」
「しーっ! でかい声出すな、あいつに気づかれるぞ!」
 チクルンが慌てて後ろを見ると、ボルクスは背を向けてじっとしていた。
「だれデビ?」
 モフルンの横からリリンが顔を出すと、チクルンが驚いてリリンの前に飛んでくる。
「なんだ? こいつもぬいぐるみなのか?」
「リリンモフ、モフルンのお友達モフ」