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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 フェンリルは少し気の毒そうに言った。 彼女は樹の枝から降りると少女の姿になって手の中にあるものを放った。三つの闇の結晶が空中で怪しく光って再び彼女の手の中に戻る。
「まあいいだろう。プリキュアを倒す手立てはまだある。見せてもらおう、人の非情さというやつをね」
 フェンリルは三つの闇の結晶を上空に投げて首にかけているタリスマンをかざした。
「いでよ、ヨクバール!」
 タリスマンから放たれる闇の瘴気を浴びたフェンリルが苦し気に呻く。このはな島が広がっていく黒い雲におおわれ、4人のプリキュアの頭上に広がる闇の魔法陣に三つの闇の結晶が吸い込まれた。異変を感じたプリキュア達が森から出て漆黒の天上を見上げると、闇の魔法陣から竜の骸頭がうまれいずる。竜頭骨の仮面の下で闇がうごめき、仮面が魔法陣から引き出されていくと黒く燃え上がる体が徐々に現れてくる。長い腕の先に鋭い爪のある巨大な手が開き、背中に黒い翼が広がる。それが地上に降りた時、重厚な体を支える豪脚(ごうきゃく)が平原の花を踏みしだき、長い尻尾が地上を鞭うつとえぐられた大地と共に花が散る。竜頭骨の仮面以外、全身が黒い炎に包まれた暗黒のドラゴン現れ、その周囲にある花々が黒い炎に焼かれて消えた。
「ヨクッバアァーーーールッ!!」
 漆黒(しっこく)の怪物の咆哮(ほうこう)が島全体に広がり、花の平原で蜜を集めていた妖精たちが一斉に逃げ出した。空気が震え、細かい針が肌を刺すような感覚を受けてプリキュアたちが構える。
「な、なんだよあれ!?」
 今までに見たこともない異形の怪物にチクルンは震えた。
 ヨクバールは虚空の目に現れた怪しげな赤い光で、口から黒い炎を吐き出しながらプリキュア達を睨んだ。するとウィッチが怯んでしまった。
「うわぁ、なんか怖そう、あのヨクバール……」
「さっきの巨人が召喚したの?」
「あの巨人じゃないと思うわ。きっと他にも仲間がいるのよ」
 ミラクルにマジカルが言った。ヨクバールが歩みだし、こちらに近づいてくるとダークネスが前屈みに足元に力を込めた。
「先にしかけるわ、ウィッチ!」
「え〜、あれと戦うの?」
「あんた、びびってる場合じゃないでしょ!」
「わ、わかってるよぅ」
「行くわよ、しっかり合わせなさい!」
「うん! いっくよ〜っ!」
 ダークネスとウィッチがその足で花びらを巻き上げながら疾走する。そしてヨクバールの前で二人が同時に跳び、ダークネスの蹴りとウィッチの拳が竜骸の仮面に一寸の狂いもなく同時に当たる。
「ヨクゥ」
「なんですって!?」
「ええ〜っ!?」
 二人同時の攻撃を受けてもヨクバールは微動(びどう)だにしなかった。黒く燃える手が二人を弾き飛ばした。
「キャッ!?」
「ふわーっ!?」
 吹っ飛ばされた二人が宙返りして着地した時に、ミラクルとマジカルがヨクバールに突撃していく。
『はあぁっ!』
 二人同時の拳がヨクバールのボディーに食い込む。
「ヨクッ、バール!」
 衝撃を受けたヨクバールが後退する。それを見ていたダークネスが解けない設問にでもぶつかったように眉をひそめた。それから彼女はウィッチに目で合図して二人同時に走る。今度はヨクバールの横に回ってダークネスが跳び、ウィッチが懐に入っていく。
「とりゃ、とりゃ、とりゃーっ!」
 ウィッチの連速パンチがヨクバールの脇腹に決まる。ダークネスもヨクバールの頭部に空中蹴りを何度もあびせた。
――やっぱり、わたし達の攻撃はきいてないわ。
 ヨクバールはダークネスたちの攻撃を受けても直立不動で毛ほども感じていないようだった。
「たあーっ!」
「てやーっ!」
 ミラクルとマジカルの同時の蹴りにはヨクバールが反応して動いた。黒い炎に包まれた腕で二人の攻撃を防ぎ、腕から受けた衝撃で一歩後退する。その瞬間にヨクバールの真紅の目が燃え上がるように強く輝いた。まだ空中にいるミラクルとマジカルに黒く燃え上がる拳を叩きつけ、ダークネスは黒い翼で吹き飛ばされ、ウィッチはかぎ爪の付いた足でけり上げらた。4人同意に吹っ飛んで悲鳴と共に花園に墜落し、土煙と花びらが爆発するように吹き上がった。
 4人のプリキュアがクレーターのように陥没した大地に一か所にかたまって倒れていた。真っ先に立ち上がったダークネスはヨクバールが大きく開いた口に黒い炎が渦巻いて球になり、その火弾が大きくなっていく様を見た。
「まずいわ!」
 ダークネスが叫んだ時に、ヨクバールが真っ黒な火球を吐き出した。よける暇はなく、黒い火の玉が4人の目の前で爆発し、轟音(ごうおん)と一緒に黒い炎がドーム状に広がっていく。それは4人のプリキュアの悲鳴まで飲み込み、草花を消し去って平原の一部を焦土(しょうど)にする。プリキュアたちは黒い炎に巻かれながらバラバラに吹き飛んで、全員が花園の中に沈んだ。森の入り口からフェンリルが直立して戦いの様子を見つめていた。
「あれは三つの闇の結晶から生まれた究極のヨクバールだ。わたしが召喚できる中では最強だ。それだけじゃない。あのヨクバールの攻撃で面白い状況が生まれるはずだ。どうなるのか楽しみだね」
 最初に花の中から立ち上がったのは防御の態勢がとることのできたダークネスだった。
「あのヨクバール、今までのやつとはけた違いの強さだわ……」
ダークネスは他のプリキュア達がはたして攻撃に対してどう動いたのか、それを見る余裕はなかった。草花はダークネスのひざ上くらいまでのびているので、倒れているほかのプリキュアたちの姿が見えない。
「いったぁ〜い……」
 ダークネスの近くでウィッチが立ち上がる。
「ウィッチ、大丈夫?」
「うん〜、大丈夫みたい!」
「ミラクルとマジカルは?」
 ダークネスから少し離れた場所で草花が動くのが見えた。その辺りを飛んでいた黄色の蝶が、立ち上がってきた二人の少女に驚いて上へと逃げる。ミラクルとマジカルは一緒に立ち上がったのだが、ミラクルはマジカルの肩を借りて立っている状態で、ダメージが大きいようだ。ダークネスとウィッチよりも、ミラクルとマジカルの方がダメージを受けていることが見た目でわかる。その様子からダークネスはさっきから感じていた違和感に答えを出した。
「あれ、なんかミラクルとマジカル、すごく苦しそう……」
 あまりものを深く考えないウィッチでも二人の様子がおかしいのに気付いていた。ダークネスが近づいてくるヨクバールに注意を向けながら言った。
「エレメント(属性)の影響よ」
「エレメントって??」
「魔法にはエレメントというものがあるの。そして物や生物にもエレメントがあり、人間も生まれついてエレメントを持っているわ。人は持っているエレメントによって得意な魔法が変わってくる。そして、わたしたちプリキュアにも強い影響を受けるエレメントが存在している。わたしたち宵の魔法つかいのエレメントは闇よ。伝説の魔法つかいのエレメントは恐らくそれとは真逆の光。そして、あのヨクバールは強力な闇のエレメントを持っているんだわ」
 話を聞いていたウィッチは頭の中が完全にこんがらがってしまった。
「ダークネスのいってることぜんぜんわかんないよぅ。それが、ミラクルとマジカルが苦しそうなのと関係あるの?」