魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦
「光と闇の場合は、同じエレメントは互いに与える影響が小さくなり、逆のエレメントは互いに与える影響が大きくなるのよ。つまり、あの強力な闇エレメントのヨクバールの攻撃によって受けるダメージは、同じ闇エレメントのわたしたちには大したことはないけれど、逆の光のエレメントを持つミラクルとマジカルはとても大きなダメージを受けてしまうのよ。わたしたちの攻撃が通用しなかったのもエレメントの影響よ」
それで何となく理解できたウィッチが言った。
「あのヨクバールと戦ったら、わたし達の攻撃はきかなくて、ミラクルとマジカルは先にやられちゃう?」
「そういうことね」
「ど、どうしよう、ダークネス!? それじゃあのヨクバール倒せないじゃん!」
「ウィッチ、それは逆よ。むしろ勝機が見えるわ」
ダークネスが言うとウィッチがまったくわからない顔をしていた。ダークネスがマジカルと目を合わせると、その直後にマジカルがミラクルに何かを伝えた。その時、距離と詰めていたヨクバールが口を開き、口腔に再び黒い火の玉が現れる。
「マジカルはわたしの意図に気づいてくれたようね。ウィッチ、説明している暇がないから、わたしの動きを見ていて!」
ウィッチが声をかける暇もなくダークネスが跳んだ。同時にヨクバールが黒い火の玉をミラクルとマジカルに向けて発射する。ダークネスが二人の前に跳び込み火の玉を受けて黒い爆発の中に消えた。ウィッチはその行動に驚きつつも、何となく理解してヨクバールに突っ込んだ。ミラクルとマジカルも黒い炎を突き抜けてヨクバールに接近する。
「ヨクバール!」
ミラクルとマジカルに漆黒の拳が迫る。そこに跳び込んできたウィッチが、
「リンクル・ブラックオパール!」
円形の黒いシールドでヨクバールの拳を防いだ。その隙をついてミラクルとマジカルがヨクバールに迫る。
『はあ――っ!』
ミラクルの右ストレートとマジカルの左ストレートがヨクバールの顔面に叩き込まれた。竜頭骨の仮面が内側にへこみ、ヨクバールの顔面が歪む。
「ヨクッ!?」
ミラクルとマジカルの防御をまったくかえりみずに攻撃に全力を置いた一撃で、ヨクバールが頭をのけ反らせて後退する。相当な衝撃にもかかわらず倒れずに踏んばるところにこのヨクバールの強さが現れていた。
4人のプリキュアの協力戦が展開されるとフェンリルは目を疑った。
「なぜ協力する!? 宵の魔法つかいがあのヨクバールから受けるダメージは少ないはずだ。だったら、伝説の魔法つかいを見捨てて逃げりゃあいいじゃないか。そうすれば邪魔者を排除できるというのに、どうしてリスクを覚悟してまで一緒に戦う必要がある!?」
フェンリルはプリキュアたちの戦いが自分の予想とまったく違う方向に展開するので混乱していた。
ヨクバールがミラクルとマジカルに向かって口から黒い炎を吐き出す。ミラクル達の前にダークネス達が走り込んでくる。
「リンクル・スタールビー!」
ダークネスの腕輪に深紅の輝石が輝くと、二人で手を握り合い、その手を後ろに力を込める。二人は腕輪のある手を前に呪文を唱える。
「プリキュア・ブレイオブハートシールド!」
スタールビーとブラックオパールが輝き、漆黒の中に虹色のブレイオブカラーの宿るハート型の盾が二人の前に現れて黒い炎を吹き散らす。そして、黒い炎のブレスが途切れた瞬間を狙ってミラクルとマジカルが前に出てヨクバールの懐に入って跳んだ。
『たあ――っ!』
放たれた矢のように飛んできた二人の飛び蹴りがヨクバールの腹部にめり込んだ。
「ヨクッ、バールッ!?」
ヨクバールは両手の拳を前に体が前屈みの状態になり、かかとで大地を削り草花をなぎ倒しながら滑っていく。その巨体が止まった時に真紅の双眸が怪しく光り怒りを燃え上がらせた。ジャンプして大地を震撼させながらミラクルとマジカルの前に着地する。真紅の目で睨まれた時に二人は危険を感じた。ヨクバールの黒く燃え上がる尻尾が鞭のようにうなる。ミラクルとマジカルの前に現れたダークネスとウィッチが、二人の胸に手を触れて攻撃の範囲外へと押し出した。代わりにダークネスとウィッチが尻尾攻撃をまともにくらって悲鳴をあげながら吹っ飛ぶ。
「ダークネス、ウィッチ!?」
ミラクルが叫ぶと、ヨクバールの意識が再び伝説の魔法つかいへと向いた。すると、ヨクバールの横から薄ピンク色の無数の花びらが吹き付けてきた。ヨクバールが振り向き意識が攻撃者のダークネスへと変わった。
「さあ、こっちに来なさい!」
「ヨクバール!」
草花を踏みつぶし花を蹴り上げながらヨクバールが走り出す。ダークネスとウィッチは目の前で腕を交差させて防御の態勢で迎え撃った。
「ヨク! バールッ!」
ヨクバールはむきになってダークネスとウィッチに何度もパンチを叩き込んだ。二人は防御しながらじっと攻撃に耐え続けていた。
それを見ていたフェンリルが叫ぶ。
「そいつらに気をやるのはまずい!」
ヨクバールの背後からミラクルとマジカルが空を切り花びらを逆巻いて走ってくる。
「ミラクル、はりきって、がんばって、思いっきりいくわよ!」
「うん、まかせて!」
ミラクルとマジカルがヨクバールの左右に走り込み、ジャンプした。
『でやあ――っ!』
ヨクバールの顔の高さでミラクルとマジカルが同時にバレリーナのように回転し、ミラクルの右足とマジカルの左足の回し蹴りが同時に炸裂した。ヨクバールの竜頭骨の仮面が変形し全体に細かい亀裂が入った。
「ヨクバールッ!!?」
大きなダメージを受けたヨクバールが三歩四歩と後退するが、
「まだ倒れない!?」
マジカルの声に反応するように、ミラクルとダークネスが動いた。二人は隣り合って立っていた。
「リンクルステッキ!」
ミラクルは虚空に現れたリンクルステッキを右手に取って高く上へ。同時にダークネスもリンクルブレスレッドのある右手を胸の高さまで上げる。
「リンクル・ペリドット!」
「リンクル・オレンジサファイア!」
無意識の中で二人の魔法の動作が重なった。そして、ミラクルがステッキを前へ、ダークネスが右手を前に出した時、二人の前に黄緑色のハートの五芒星魔法陣とオレンジ色の月と星の六芒星魔法陣が現れた。二つの魔法陣が互いに引かれ合うように転がると、ミラクルとダークネスの間で重なった。
「なっ!?」
「えっ!?」
ダークネスとミラクルの驚く声が重なり、二人の前に見たこともない魔法陣が現れていた。形状は伝説の魔法つかいのハートの五芒星魔法陣に近いが、それよりもサークルの中にある五芒星が大きくなり、周りにある五つのハートが小ぶりになっている。その中心の五角形の中に三日月があり、魔法陣は黄色に輝いていた。それを見たマジカルもウィッチも声が出なかった。
ダークネスが驚いたのはわずかな時間で、彼女はすぐに真顔になって叫んだ。
「行くわよミラクル!」
その声を聴いたミラクルの胸が熱くなる。
「うん!」
二人の中に新たな魔法の伊吹が流れ込んでくる。
『プリキュア・メープルリーフブレイズ!』
二人の魔法陣から燃え上がる無数の葉が吹き出し、それらがヨクバールの周りで渦巻いて漆黒の体に一気に貼りついて燃え上がった。
作品名:魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦ 作家名:ユウ