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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 その時、少し強い風が吹いてきて小百合は悲鳴をあげて体を揺らした。情けない姿の相方にラナは呆れてしまう。
「おおげさだなぁ。そんなに怖がらなくてもだいじょーぶだよ」
「大丈夫じゃないわよ!」
 エリーが小百合の体を支えると、それでようやく人心地になれた。
「後はしっかり飛ぶ練習をすればいいから、ラナちゃんが見てあげてね」
「まっかせて〜」
「そ、そんな!?」
 小百合は見捨てられた子猫のように哀れな姿をさらす。
「大丈夫よ。飛ぶことに関してはラナちゃんは魔法界一だから」
「本当に大丈夫なんでしょうか……」
 小百合はものすごく心配だった。

 翌日、闇の結晶探しがてら小百合はラナと一緒に箒で飛ぶ練習をしていた。ラナは小百合が飛ぶのを見て色々注文を付けていた。
「小百合は重心が変なんだよ。そんな前かがみじゃなくて、もっと背筋を伸ばして!」
「こ、怖いのよ」
「そんなかっこうしてたらあぶないよ〜、おちちゃうよ〜」
「そ、それはいやっ!」
 ラナに脅されて小百合が背筋を伸ばす。
「そうだよ、やればできるじゃん」
 ラナにそんな風に言われて小百合は悔しかったが、今は圧倒的にラナの方が立場が上なので黙っていうことをきくしかなかった。
「じゃあ〜、もう少しスピードだしてみよ〜」
 と言ってラナはぶっ飛ばし、小百合の目の前から一瞬にして離れてマッチ棒くらいの大きさになってしまった。
「こらーっ!!」
 小百合が叫んでいる間に、ラナはものすごいスピードで戻ってくる。
「小百合、おそいよぉ」
「そんなバカげたスピードについていけるわけないでしょーっ!!」
 小百合の激怒する声がすぐ近くに漂う雲間に響き渡った。
 帰って来る頃には、小百合はラナの適当な指導のせいで疲れ果ててしまった。地上に降りると足が鉛のように重く感じる。
「疲れたわ、もう寝たい……」
「小百合ったら、おばあちゃんみたいだねぇ」
 ラナに言われて小百合が目を細めてジト目で睨むが、教えてもらっている立場なので文句は言えない。ラナは元気に夕日の落ちるリンゴ村の農道を走り、リンゴの樹の影と夕日のコントラストを越えて家のドアを開ける。すると視線の先にあるテーブルの上にチクルンが立っていた。
「よう、窓が開いていたから勝手に入ったぜ。お前が色々心配してると思ってきてやったんだぜ、感謝しろよ」
「チクルン!」
 後から小百合が入ってくると、その腕に抱かれているリリンが笑顔を浮かべる。
「チクルンが遊びに来たデビ!」
 リリンが小百合の腕の中から飛んでいってチクルンの前に降りていく。疲れ果てていた小百合はもうかまう気力もなかったが、ラナとチクルンの会話を聞いて意識がそちらに向いた。
「みらいたちは元気だった?」
「それがよ、リコが落ち込んでんだよ」
「リコが落ち込んでいる?」
 言ったのは小百合だった。チクルンは小百合の顔を見るなり口をつぐんでしまった。まずいことを言ったという顔をしていた。それで小百合は鋭く察した。
 ――前の戦いで与えた過去のトラウマが効いたんだわ。
 小百合は前の戦いで墓穴を掘ったと思っていたが、今になってあの時に与えた言葉がリコを苦しめている、そう結論付けた。
「わたしは疲れたからもう休むからね」
「ごはんは?」
「もう食事をする気力もないわ……。フレーザーに今朝焼いたパンと、あとリンゴのサラダがあるから、みんなで食べなさいね」
 小百合はそういって、奥の風呂場に入っていった。チクルンは小百合がさっき言ったことなど気にしていないように見えたので安心した。


 小百合はラナと一緒に闇の結晶を探しながら飛行の練習をして、三日目にはようやく普通に飛ぶことができるようになっていた。
 この三日間、散々飛び回ってもあまり闇の結晶が見つからないので、ラナは少し嫌になってきた。
「闇の結晶、ぜんぜんないね〜」
 小百合が黒い布袋の中身を見て言った。
「三日間かかってたったの7個」
 すると小百合のポシェットの中から顔を出しているリリンが言った。
「もっと他の場所を探すデビ?」
「いえ、もういいわ。練習のためにもう少し散歩してから帰りましょう」
 小百合が先行し、高度を上げて飛んでいく。
 ――あれれ、この方向って?
 ラナは小百合が魔法学校の方に進んでいることに気づいた。なんだか嫌な予感がした。小百合と横並びになって様子を見ると、明らかに小百合は何かを探すように視線を動かしていた。これはもう決定的だった。みらいとリコの姿を探しているのだ。ラナはどうか出会いませんようにと心の中で祈っていた。
「いたわ」
 ラナの願いも空しく、二人は出会ってしまった。眼下に広がる青い海が斜陽を返して宝石のようにキラキラと光る。その上に箒に乗って並んでいる二人の姿があった。ラナは胸が苦しくなって言った。
「小百合、やめようよ。いまリコは落ち込んでるんだって」
「だからやるんでしょう。闇の結晶を奪える機会を見逃すつもりはないわ」
 抑揚のない小百合の声を聴いて、ラナは小百合から視線を自分のひざの上に落として無言になった。潤む碧眼が彼女の悲しさを伝えていた。それを見た小百合の表情が少し動いた。
「あんたがどうしても嫌なら止めるわ」
 今度の小百合の声には感情がこもっていた。冷徹だった彼女の表情にラナを慈しむ温かさともの悲しさが表れていた。するとラナは半分閉じていた目を開けて顔を上げ、小百合を強く見つめる。
「小百合が本当にやりたいと思うことをやって! わたしはぜったいついていくから!」
 小百合はきっとラナがそう言ってくれると思っていた。
「行くわよ」
 小百合たちは高高度からみらいたちを追跡する。海面ではみらいたちの影を小百合たちの影が追っていた。注意すれば追跡に気づけたかもしれないが、リコはうつむき加減で時々ため息をつき、みらいはそれを心配して、注意が散漫になってしまっていた。
「闇の結晶みつからないね」
「ええ……」
「あれだけ探してもたったの5個だよ」
「ええ……」
 魂が抜けたようなリコの返事にみらいの表情が悲痛に染まる。
「モフ……リコ、元気出すモフ」
 みらいに片手で抱かれているモフルンが、みらいの心に呼応して心配そうに隣を飛んでいるリコに声をかける。みらいはリコが持ち前の負けん気で立ち直ってくれると信じているのに、何日たってもリコの元気は回復しなかった。
「……みらい、あの島に寄ってから魔法学校に帰りましょう」
 みらいがうんと頷くと、リコがか細い笑みを見せる。リコがみらいに元気を誇示しようと、時々見せるそんな笑いが痛々しかった。二人は先に見える巨大な赤い傘のキノコが生えている無人島に向かって斜め下方向へ旋回した。


 いたるところに巨大なキノコが生えている無人島をみらいたちは歩き回り闇の結晶を探す。しかし、これがなかなか見つからなかった。途中で疲れてしまったみらいは、腰かけるのに丁度いいキノコをみつけてリコと一緒に座った。
「ぜんぜん見つからないね、闇の結晶」
 うんともすんとも言わないリコの横顔をみらいが見つめる。何だかぼーっとしていて精彩がない。いつものリコと比べるとまるで別人だった。
 ――どうしたらいいんだろう……。
「モフ、モフ」