魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦
上空に現れた黄色い魔法陣からミラクル、モフルン、マジカルが飛び出してくる。モフルンは大きなプリンの上にお尻から落ちて、ポヨンと跳ね返されてプリンが揺れる。そしてミラクルとマジカルが同時に地上に降りた。右側のミラクルが右手を上げて人差し指でクルリと小さな円を描き、バックフリップしてから右手を横に弾く。
「二人の奇跡、キュアミラクル!」
瞬間にミラクルの周りに色とりどりのキャンディーが現れて、瞬間に消えていく。
左側のマジカルが右手を上に人差し指で小さな円を描き、その手を右下に勢いをつけて高速スピン、着地と同時に左手を横に振る。
「二人の魔法、キュアマジカル!」
瞬間にマジカルの周りにメレンゲのイリュージョンが現れ消えていく。
ミラクルとマジカルは右手と左手をやんわりとつなぎ、頬を寄せて目を閉じる乙女たちの姿は眠り姫のように可憐だ。二人は右手と左手を放し、楽しい笑顔でずっとつながっている方の手を同時に上げて、バレリーナのような片足立ちになる。それから互いに背を向け合って足を高く上げ、手を放して地上に足を揃えると、離した左手を右手を前に再び手を握る。
『魔法つかい! プリキュア!』
「トパーズのプリキュアモフ!」
モフルンが黄色い斑点のあるキノコの上で両手をあげて言うや否や、ミラクルとマジカルの姿に感動したウィッチが叫ぶ。
「うわぁ、かわいい!!」
ミラクルとマジカルの周りに二つの黄色い球体が現れると、さらにウィッチの目が輝いた。
「なにそれ!? なんでそんなのついてるの!? いいなぁ、それ!」
騒いているウィッチの隣ではダークネスが怪訝な表情を浮かべていた。
――ダイヤ以外のスタイルを選んでくるですって?
ダークネスは以前ミラクルとマジカルに、はっきりとダイヤ以外のスタイルには弱点があると明言している。サファイヤやトパーズのプリキュアとは戦ったことはないが、ダークネスはそれを確信していた。少なくとも、マジカルはそれをはっきり認識しているはずだと思った。考えられることは二つ、我を忘れて愚かな選択をしているか、勝てる確信があって選択しているか。
ダークネスは真意を確かめるためにマジカルの目をまっすぐに見つめた。マゼンダの瞳の輝きは強く敵の影に怯えている気配などみじんもない。
「わたしたちの力を見せてあげるんだから!」
マジカルの声から絶対の自信を感じる。ダークネスは後者だと思った。それに気づいたダークネスが笑みを浮かべる。
「面白いわ。トパーズの力、見せてもらいましょう」
「かかってきなさい!」
「ウィッチはミラクルの相手をしなさい!」
ウィッチの返事を待たずにダークネスが足に力を込め、地面の土を削り飛ばしてダッシュする。
「とあぁーっ!」
ダークネスの右の拳を直前で避けたマジカルの髪が拳圧で巻き上がる。さらに左の拳、回し蹴り連撃でマジカルが押しまれる。そして、回し蹴りをよけた瞬間にマジカルが反撃した。
「はあぁーっ!」
ダークネスに向かって突き出したパンチはあっさりと手の平で受け止められてしまった。ダークネスの手がマジカルの拳を包み込み、先の戦いの場面が再現される。
「攻撃が軽いわ」
余裕な表情を浮かべていたダークネスが、上空から来るものを察知してはっと見上げる。槍先のように細く尖った黄色の物体が迫っていた。ダークネスがバク転し地面に片手を付いたときに、数舜前に彼女がいた場所に黄色い槍が突き刺さった。ダークネスが少し距離をとって着地すると、マジカルが黄色い槍を両手に持ち、それが中ほどで別れた。二つに分裂したそれが、マジカルの手の中でブーメランの形になった。
「はっ!」
マジカルが同時に黄色いブーメランを放つと、それが高速回転しつつ左右に弧を描いてダークネスに向かっていく。ダークネスは一つ目を蹴り上げ、二つ目を踵落としで真っ二つに割っていなした。ダークネスがブーメランに気をとられていると、マジカルが彼女の斜め上方向に跳躍してくる。すると、吹っ飛ばされて空中に漂っていたブーメランと割れて地上に転がっていた黄色の欠片が球体に変化して高速でマジカルの背後に集まり扁平の円になる。マジカルはそれを踏み台にして突出した。
「たあっ!」
ダークネスはマジカルの予想外の動きに虚を突かれて、空中で回転を加えてのマジカルの蹴りに対応できずまともに食らった。
「ぐうっ!?」
衝撃を受けて後方にはじけ飛んだダークネスがえびぞりに地に手を付き、バク転して態勢を直してマジカルを見つめた。その時にマジカルの肩の上あたりに二つの黄色い球体が浮んできた。
「これがトパーズの能力。あの球体、やっかいだわ」
マジカルが高く跳んでダークネスの頭上へ。
「上から来る気? なら、狙い撃ちよ」
ダークネスが右手を腕輪と共に上げて呼びかける。
「リンクル・オレンジサファイア!」
ダークネスが向かってくるマジカルに手のひらを合わせると、その手の周囲に次々と火の玉が表れて連続で撃ちだされた。するとマジカルは黄色の球体を合わせて平らにし、空中でそれを足場にして巧みに火の玉を避けた。マジカルが移動する先に黄色のクッションが先回りして足場になる。それを繰り返して次々に襲ってくる火の玉を避けていく。そして、ダークネスが間近で放った一発を今度は黄色のオプションを硬質化し盾に変えて防いだ。ダークネスの目の前で爆発が起こり目くらましになる。
「はあっ!」
炎を突き破ってきたマジカルの急降下蹴りを前腕でガード、衝撃で後退する。ダークネスがマジカルと再び対峙すると言った。
「これじゃ敵が二人いるようなものだわ。けれど、ダイヤスタイルに比べると本体のパワーが落ちているわね。そしてもう一つ、恐らくその黄色い物体の能力はそれほど高くはない」
ダークネスが右手を横に叫ぶ。
「リンクル・スタールビー!」
ダークネスの腕輪のブラックダイヤがスタールビーに入れ替わり、深紅の輝石から生まれた赤い輝きがダークネスの胸に吸い込まれる。そして爆走、彼女はマジカルに迫る。それに対してマジカルが黄色い盾を前に出した。ダークネスはかまわずに思い切りパンチを盾に叩き込む。するとそれが粉々に砕けて黄色い欠片が散った。マジカルはさして驚きもせずに後方に跳び、ダークネスがそれを追う。
「逃がしはしない!」
マジカルが着地すると、ダークネスはもう目の前に迫っていた。彼女の前に黄色い破片が集まって丸い形になる。
「何度やっても同じよ!」
ダークネスが拳を後ろに引いて力を込めると、黄色い球体が平面に大きく広がった。ダークネスは瞬間的にまずいと思ったが、もう攻撃の勢いは止められなかった。ダークネスの拳が柔らかな黄色い物にめり込む。すると黄色の物体はダークネスの勢いを受け止めてぐっと長く引き伸ばされて円錐に近い形になり、ダークネスの視界が黄色に阻まれる。間もなく膜状になった黄色い物がダークネスの攻撃に耐えきれずに突き破られた。ダークネスが一瞬視界を失った隙に、マジカルの姿は消えていた。
「上ね!」ダークネスの勘は当たったが、マジカルが既に次なる攻撃への手を打っていた。
「リンクルステッキ! リンクル・ガーネット!」
作品名:魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦ 作家名:ユウ