魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦
マジカルは敵に美しい態勢の飛び蹴りをくらわせ、その時の反動を利用して空中で一回転して着地、ヨクバールは倒れそうになるが、数歩後退しながら何とか踏みとどまる。
戦いを見ていた小百合は、リンクルステッキとガーネットの出現で、その顔により一層真剣さが増した。あまりに真剣なので、ラナには小百合が怒っているように見える。
「リンクルストーンを使うということは、あれも魔法つかいプリキュアよね。フレイア様は、わたしたちを伝説の魔法つかいとは別の存在だと言っていたわ。つまりあれが」
「そうだよ、伝説の魔法つかいだよ! 伝説のリンクルステッキを使ってるから間違いないよ! すっごいよ、ファンタジックだよ!」
大騒ぎするラナを無視して、小百合は鞄から手帳とシャープペンを出し、素早く手帳に何かを書き込んでいく。
「なにしてるの?」
ラナが手帳をのぞき込むと、リンクルステッキとガーネットの形状や特徴が簡単に書き記してあった。
「うわ、小百合、絵うまいね〜」
「同じ魔法つかいプリキュアのことだから、なにかの参考になるかもしれないでしょ」
戦いは続いている。ヨクバールの態勢が整う前に、再びマジカルが接近して跳び、ヨクバールの眼前へ。ヨクバールがマジカルに向かって手を伸ばしてくる。
「リンクルステッキ!」
マジカルが近くに現れたステッキを取った。形状はミラクルの使ったステッキとほとんど変わらないが、先端のクリスタルは星形になっている。
マジカルはヨクバールに見せつけるようにして右手と左手の間でステッキを橋渡す。
「リンクル・タンザナイト!」
中央のダイヤが宵闇を思わせる深い青紫色の星型と月型の双子石と入れ替わる。するとリンクルストーンタンザナイトから強烈な光が放たれた。この時にも小百合のペンが素早く動く。
「ヨク!?」
タンザナイトの光をまともに見たヨクバールは、目暗になってミラクルとマジカルを見失った。
「今よミラクル!」
「うん!」
二人のプリキュアがそれぞれのリンクルステッキを手に叫ぶ。
『ダイヤ!』
ミラクルとマジカルは同時に高く跳躍し、右手と左手をつないで輪舞のように回転する。
『永遠の輝きよ! わたしたちの手に!』
二人が舞い降りると同時に、光の波が起こり周りに広がっていく。光の中心に立つ3人、ミラクルが右に、マジカルが左に、そして中央後方にはモフルンが。マジカルが高く掲げたリンクルステッキを鋭角に斜に構えると、モフルンが左手でブローチのダイヤに触れる。そしてミラクルがリンクルステッキを頭上に掲げると、モフルンの右手がダイヤに触れる。次の瞬間、ブローチのダイヤが強く輝き、光が巨大なダイヤの形となり、さらに広がって聖なる光の世界を創る。その輝く世界でミラクルとマジカルは手を繋いだまま、二人で一緒にリンクルステッキで三角形を描く。
『フル、フル、リンクル!』
二人の描いた三角が光を帯びて合わさると、瞬間に七色に輝くダイヤの形になる。その時に視力を取り戻したヨクバールが向かってきて拳を振り下ろした。七色のダイヤに樹木の巨大な拳が衝突して衝撃波が広がり、闇と光の魔法がせめぎ合うと、七色のダイヤが光り輝くハートのペンタグラムに変化する。そして、二人のプリキュアがリンクルステッキを高く上げ、繋いだ後ろ手に力を込めて魔法の言葉を。
『プリキュア・ダイヤモンド・エターナル!』
瞬間、ヨクバールが巨大なダイヤに封印される。二人が繋いでいた手を放して力強く前に押し出すと、それに呼応してヨクバールを封じ込めたダイヤが途方もない勢いで吹き飛んだ。その時に起こった爆風で隠れて見ていた小百合たちは危うく吹き飛ばされるところだった。
ヨクバールは、魔法で地球外へと誘われていく。
「ヨクバール……」
巨大なダイヤがヨクバールと共に白い彗星となり、宇宙の果てまで吹き飛んで爆ぜる。白い輝きが星雲のように広がり、その中から淡い光に包まれた桜の樹と闇の結晶が現れ出る。
天から降ってきた黒い結晶をマジカルは手にして眉をひそめた。
「これがヨクバールに力を与えていたの?」
プリキュアとヨクバールとの戦いによって刻まれた戦闘の跡が次々と修復されていく。ヨクバールを倒されてしまったフェンリルは、悔しくて牙をむいたが、すぐに冷静になっていった。
「あいつら、わたしのヨクバールに最初は苦戦していたのに、すぐに戦略を変えて対応してきた。戦いなれているね。どうする、ここでやっちまうか……」
フェンリルは少し考えて結論を出す。
「いや、あのプリキュア共の力がどれ程のものか分からない。いま戦いを挑むのは早計(そうけい)というものだね。今日のところは撤退(てったい)だ」
フェンリルは素早く走って近くの茂みに飛び込み姿を消した。
一方、隠れて見ていたラナとリリンは、ミラクルとマジカルが放った必殺の魔法に度肝を抜かれていた。
「すっごい魔法だったね〜、ヨクバール飛んでっちゃったよ〜」
「こっちまで飛ばされそうだったデビ」
「ダイヤモンド・エターナル……。わたしたちの合成魔法よりも強力かもしれないわね。さすがに伝説の魔法つかいといわれるだけはあるわ」
「ねぇねぇ、出ていって自己紹介しようよ。同じプリキュアなんだし、きっと仲良くなれるよ」
「それはさっきもダメって言ったでしょ。同じプリキュアだからって、仲間になれるとは限らないわ」
「そんなぁ、絶対仲良くなれるのに……」
「ダメと言ったらダメよ!」
小百合が厳しい表情を崩さないので、ラナは自己紹介を渋々諦めるしかなかった。
ミラクルとマジカルは再開を喜び抱き合って、それから二人で手を繋いで一跳びで遠く離れてどこかへ消えてしまった。
リコと再会を果たしたみらいは、薔薇の園がある公園のベンチに座ってリコから事情を聞いていた。
リコはとんがり帽子を膝の上に置いて話し、みらいはモフルンを抱いて耳を傾ける。
「校長先生の話によると、このままだとナシマホウ界が滅んでしまうそうよ」
「ええぇっ!? そんなに大変なことになってるの!?」
「それを防ぐために、わたしがきたのよ。多分、みらいが持ってる黒い結晶が関係あると思うの。それでヨクバールがパワーアップしてるみたいだし」
みらいはバッグから黒い結晶を一つ取り出していった。
「これ、その辺を探せばたくさん見つかるんだけど、魔法つかいにしか見えないみたいなの」
「ますます怪しいわね。まずはそれを校長先生に送って詳しく調べてもらいましょう」
「うん、そうだね」
「それと、これを渡しておかないとね」
リコは先にハート型の水晶が付いているステッキをみらいに見せる。
「それ、わたしの魔法の杖!?」
「あの時にみらいと別れて魔法界に戻ったら、足元にこれが落ちていたの。魔法の杖は魔法界で生まれたものだから、魔法界に引かれてみらいの手から離れてしまったのね」
「ありがとうリコ! またこの魔法の杖と出会えるなんて、わくわくもんだよ!」
リコは微笑すると、大きなトランクを持ちベンチから立ち上がっていった。
「早くみらいの家に行って校長先生に報告しましょう」
「リコ、もう一つすごく大切な話があるんだよ」
「なにかしら?」
作品名:魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦ 作家名:ユウ