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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 闇色の少女たちが左右別々の場所に飛ぶ。そして、二人同時に壁を蹴って、二人同時に校長に迫っていく。その時、校長が杖の底で床を強く突いた。そこから白い魔法陣が広がり、
「秘術! 閃光の障壁!!」
 校長の魔法陣の周囲から高く吹き上がった光の壁が一瞬で周りに広がり、校長に迫っていた黒い少女たちは白い閃光にのまれて消えた。光はドーム型の部屋いっぱいに広がった。
 部屋から目の眩むような閃光が薄れていくと、禁呪に禁呪を重ねた校長が刃物が突き刺さるように痛む心臓を押さえてうずくまった。険しい顔で苦しそうにうめきながらの、辺りの状況を確認する。そして彼に絶望を与える二人の黒い影が、互いの傷ついた体を支え合ってひざを付いていた。
「くおおぉっ!」
 校長が魔法の杖を支えに立ち上がろうとすると、それよりはるかに素早く闇に塗りつぶされた少女たちが立ち、後ろで手と手を握る。同時に二人が出した手の前に三日月と星の黒い魔法陣が現れた。校長が痛む胸を片手で押さえた状態で杖を構える。黒い魔法陣から暗い色の炎が噴出し、大きな流れとなって校長に向かってくる。
「キュアップ・ラパパ! 光よ守りたまえ!」
 光の壁に黒い炎がぶつかり、焔を広げて光を飲み込まんとする。校長が杖を持つ手は震え、そして、ついに光の守りは破られた。校長の苦痛の叫びは黒い炎に飲み込まれた。
 校長は必殺の炎を受けた後も気力だけで立っていた。全身から煙を吹き上げ、グリーンの目は光を失い虚ろだった。
「倒れるわけには……いかぬ……」
 彼のかすむ視界に黒い者が近づいてくるのが見える。倒れそうになっている彼の体を痛烈な衝撃が襲う。闇そのものとなったプリキュアの二人同時の飛び蹴りが校長の体を打っていた。
「ぬあああぁっ!!?」
 校長は壁に叩きつけられ、崩れた石壁と一緒にずり落ちた。手放された金色の杖が床に一度跳ねて、高い音がドーム内に響いた。校長は失われつつある意識の中で考えた。
 ――強き思いだ。君たちは誰のために戦っている? わしは生徒たちのために戦っている。しかし、わしは負けた。あの子らの思いの方が強かったのだ……。
 もう校長は指一本動かすこともできなかった。ぼやけてほとんど見えない視界の中に、二つの黒い影の存在だけが際立っていた。そして、部屋を照らしていた魔法の光が力を失い全てが闇にのまれる。彼は、リコ、みらい、小百合、ラナの顔を順番に思い浮かべていった。
 ――ここまでか……すまぬ……。
 彼は目を閉じると、どこまでも続く深い闇に落ちていった。体の痛みも、息の苦しさも、あらゆる感覚が次第に遠ざかってゆく。その過程が意外に心地よく、心を穏やかにしてくれる。校長はこれが死なのだと認識し、そう悪いものでもないなと思った。そして、落ちてゆく闇の先に希望の光が見えた。光は次第に近づいてきて、ついに校長の見ている世界の全てに満ちた。目を開けると、やはりその場所にも光が満ちていた。校長はついに天に召されたかと思う。だが、目の前で光を放つものを見た瞬間にあらゆる思考が吹き飛び、叫んだ。
「なんと!!?」
 校長が目覚めた場所は先ほどと何も変わっていなかった。校長の目前で緑色の宝石が温かい光を放っていること以外は。
「リンクルストーンエメラルド!!?」
 校長はエメラルドの力で体の傷が癒されていることを知った。エメラルドはひとりでに宙を移動して、床に倒れている杖の先端の中に入った。驚きに満ちていた校長の顔が、急に凛々しく引き締まる。彼は金色の杖を掴んで立ち上がった。杖に宿ったエメラルドの優しい光が闇を追い払い、黒い影の少女たちの姿まで照らしていた。
(この子たちを許してあげて。ただ大切な人を守りたかっただけなの)
「ことは君!?」
 それは確かに花海ことはの声だった。校長は悲し気な瞳で漆黒の少女たちを見た。二人は足元で黒い炎を散らして疾走した。そして同時に高く跳ぶ。校長はエメラルドの宿る杖を上に向けた。
「キュアップ・ラパパ! 光よ守りたまえ!」
 二つの影が光の壁を鋭く蹴った瞬間に、白い衝撃が広がって二人同時に吹っ飛び、双方壁に叩きつけられ、めり込んだ。二人は怯まず壁から降りて再び後手に右手と左手をきつく結ぶ。そして、先ほどとほとんど同じシーンが繰り返される。再び黒い魔法陣から噴き出した炎が校長に襲いかかった。
「キュアップ・ラパパ! 光よ貫け!」
 校長の杖からでた光の波動と黒い炎がぶつかり合い、光が闇を打ち払い闇色のプリキュアたちをおおい尽くす。二人は同時に床に倒れるが、倒れたまま手をつないで起き上ろうとした。その決してあきらめない姿に校長は胸が熱くなった。
「もうよい。もうやめるのだ。君たちの気持はよくわかった。君たちが長い間守り続けてきたものが必要なのだ。今プリキュアとなって戦い、苦しんでいる少女たちのために」
 校長の心が届いたのか、闇色に燃える少女たちは立ち上がるともう動かなった。ただ、仲の良い姉妹のように片方の手だけはつないだまま離さなかった。
 校長は菩薩のように胸で片手を立て、エメラルドが輝きを放つ杖で少女たちを示し、そして彼は慈悲の心で呪文を唱えた。
「キュアップ・ラパパ! 光よプリキュアの魂を天へと導きたまえ!!」
 校長の杖の先端がさらに強く輝き、そしてエメラルドを挟んで二つの白い光輪が現れる。杖から放たれた穏やかな光の流れが黒い少女たちを包み込む。光の流れの外側を飛んできた光輪が少女たちの頭上に移動しゆっくりと下降した。輪をくぐった部分から少女たちの闇が晴れていく。そして、校長は彼女たちの本当の姿を見た。
「黒いプリキュア……」
 桃色の長い髪の少女はキュアダークネス、金髪のショートヘアの少女はキュアウィッチそのものの姿だった。二人は淡い光の中でやんわりと両手を合わせて寄りそい、悲し気な、そしてどこか安心したような表情を浮かべた。やがて少女たちは光となり、人の姿を崩して散っていく、光はまるで春に舞い上がる綿毛のように可憐だった。



 大きな三日月の夜に、小百合は椅子に座ってラナの寝顔を見つめていた。ラナが起きたらどんな言葉をかけようか、ずっと考えていた。その時、誰かに呼ばれたような気がして顔を上げた。小百合は立ち上がり、引かれるように歩いて外に出る。リリンもその後についていった。すると、夜空に無数の星のようなものが見えた。しかし、星ではない。それは星よりもずっと近くにあって、小百合を見つめてでもいるように同じ場所にいつづけた。そして、小百合には微かに声のようなものが聞こえた。
「え? お願いって? あなた達は誰なの? お願いって何なの?」
 無数の光が流れとなって名残惜しそうに円を描いてから夜空に舞い上がっていく。小百合には彼女たちが何を言いたかったのか、何となくわかるような気がした。



 闇に沈む白い神殿が存在するとある島で、フレイアもまた三日月の上を流れていく光を見ていた。無数の星のような光の流れが形を変えて、二人の人間が手をつないでいるような姿になった。
「そうですか、ようやく母なる宇宙に帰ることができるのですね。どなたかは存じませんが、二人を救って頂いたことを感謝いたします」