魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦
ずっと上の青空に青い光が生まれた。ラナがその光を見つめていた。ひかりはどんどん大きくなっていく。ラナはその光が何なのか直感的にわかって叫んだ。
「リンクルストーンだ!」
敵も味方も、全ての視線が降りてくる青い光に注がれる。小百合も空を見上げた。光はまっすぐに小百合の下に降りてきた。小百合が両手を出すと、青い光が手の中に落ちて、銀の台座の上に涙型の二つの青い宝石が寄りそうリンクルストーンになった。それぞれの宝石には中央で交差する3本の光があった。
「青空のリンクルストーン、スターサファイアデビ!」
「スター……サファイア……」
小百合が口にしてみると、心に懐かしいような不思議な響きがあった。
「みらいが小百合を思う心が、スターサファイアに通じたデビ」
そんなリリンの言葉を小百合は頭から追い出し、心を殺してラナに言った。
「変身するわよ!」
「うん!」
小百合の左手とラナの右手が重なると、赤い三日月に魔女の黒い帽子が重なるエンブレムが現れる。二人がつないだ手を後ろに、体が星のような七色の光が宿る黒いローブに包まれて、二人同時に解放されている手をあげる。
『キュアップ・ラパパ!』
二人の腕輪のダイヤからあふれた暗い輝きが交差して、螺旋に絡み合いながら、リリンの胸のブローチに吸い込まれ、黒く輝く輝石になる。
『ブラックダイヤ!』
小百合とラナは手を広げて迎え入れる。
『リリン!』
飛んできたリリンと手をつないで輪になると、3人の下に星々の瞬く闇が広がり、輪になって回転しながらどこまでも落ちていく。
『ブラック・リンクル・ジュエリーレ!』
リリンの体に黒いハートが現れると、月と星の六芒星が現れて、3人はその中へと吸い込まれると、魔法陣が強く輝く。
空中に現れた魔法陣の上にリリンと宵の魔法つかいプリキュアとなった二人が召喚される。リリンが前に飛んでいくと、二人は魔法陣の上から跳んで塔の天上へと降りた。
「穏やかなる深淵の闇、キュアダークネス!」
「可憐な黒の魔法、キュアウィッチ!」
新たに二人のプリキュアが現れ、フェンリルの表情が険しくなった。
「なんてことだい。恨まないどころか、伝説の魔法つかいが宵の魔法つかいにリンクルストーンを与えるとはね。これではっきりと分った。わたしが悟ったプリキュアの本質はやはり正しかったのだ。プリキュアの間には、どんな事があっても、マイナスの感情は生まれ得ないのだ! プリキュアの本質の下では、属性が対極などということは問題にならないのだ!」
フェンリルの背中に白い翼が現れ、彼女はヨクバールの背中から飛んでもっと高いとろこまで行くと言った。
「ヨクバール、プリキュアどもを叩き潰せ!」
「ヨクッバアァァールッ!!」
4人のプリキュアを威嚇するようにヨクバールの翼が開き、竜の仮面の赤い目が光る。怪物の巨体の前に無数のツララが現れ、低温の白い煙を吹きながら次々と発射される。ミラクルとマジカルは襲いくるそれを鮮やかに避けつつヨクバールに接近し、二人でバレリーナのようにスピンして、二人同時に一糸乱れぬ華麗な蹴りを竜の胸板に叩きつける。ヨクバールは衝撃を受けて上体を反らすが、ダメージは少ない。
ツララは塔の天上に雨のように降って突き刺さっていく。ダークネスはそれをよけながら、ミラクルとマジカルの連携攻撃をしっかり見ていた。
「ここじゃ逃げ場がないわ。ウィッチ、外に飛ぶわよ」
「えっ!? そんなことしたら落ちちゃうよ!?」
「大丈夫よ」
ダークネスはそれだけしか言わないが、ウィッチはそれで十分に安心できた。ダークネスが大丈夫っていうなら大丈夫なんだ! と。二人は塔の屋上を駆け抜けて宙へと躍り出た。それを見たフェンリルが驚愕する。
「どういうつもりだ!?」
重力が二人をつかむ前の一瞬の停滞時、ダークネスの思考が冴える。
――ミラクルとマジカルのスタイルは、最後に残されたサファイア、その能力は飛翔。わたしたちが手に入れたスターサファイアの魔法は間違いなく。
二人が落ち始める頃に、ダークネスはリンクルストーンに呼びかけた。
「リンクル・スターサファイア!」
ダークネスとウイッチの前に現れたスターサファイアは、二つに分かれると、それぞれブレスレッドのブラックダイヤと入れ替わった。その瞬間に、ダークネスとウィッチが元になって風が広がり、二人は地上へ着地でもするように宙に立った。
「なにっ、飛んだだと!? あれが新たなリンクルストーンの能力なのか!?」
フェンリルが声を上げると、ダークネスとウイッチが急上昇し、ミラクルとマジカルに攻撃を続けているヨクバールに接近する。
『でやーっ!』
ダークネスとウィッチのダブルパンチがヨクバールの腹にめり込み、巨体を少し後方へと押し出した。
「ヨクッ!?」
ダメージは大きくないが、怯ませるのには十分だった。
「わたしたち空飛んじゃったよ!? ファンタジック〜っ!」
ウィッチが笑顔にウィンクをそえてパチンと指をならす。ミラクルは空中戦に介入してきた黒いプリキュア達を、驚きと嬉しさを交えた顔で迎えた。
「すごいよ! 二人も空を飛べるんだね!」
「あんたのくれたリンクルストーンのおかげでね」
ミラクルにいうダークネスの声の響きがとても冷たかった。それからダークネスは、やりなれた仕事の段取りを仲間と話すように機械的に言った。
「マジカル、サファイアスタイルはスピードに優れる分パワーが落ちているわ。攻撃はわたしたちが担当する」
「わかったわ。わたしとミラクルで敵の注意をひきつけるから」
4人の共闘が決まって、ミラクルとウィッチは嬉しくて胸が弾む。しかし、マジカルはダークネスの赤い瞳に異常な冷たさがあるのに気づいて、またミラクルが辛い思いをするんじゃないかと心配になった。
――今は戦いに集中しないと。
マジカルは気持ちを切り替えて、ミラクルに目で合図した。二人が同時に飛翔してヨクバールに接近する。
「こっちよ、つかまえてみなさい」
マジカルが小馬鹿にするように言うと、ヨクバールが爪で切り裂いてくる。マジカルがそれを難なくよけると、今度はミラクルが両手を振って、
「ほらほら、こっちだよ!」
ヨクバールが口から吐いた冷気をミラクルがさっと避けると、揺らいだ羽衣が陽光で透けて見えた。マジカルとミラクルがヨクバールの相手を始めると、ダークネスがウィッチに言った。
「塔を利用して攻撃力を上げるわよ」
ダークネスは説明もなしに白い塔に向かっていく。ウィッチは素直に後について飛んだ。そして、ダークネスと一緒にくるりと回って態勢をかえ、塔の白い壁に足をつく。ウィッチは何も考えず、ただ何となくダークネスに動きを合わせているだけだった。
「思いっきり、気合入れていくわよ!」
「よ〜し! がんばるよ〜っ!」
二人が蹴った瞬間に、白い壁に亀裂が入った。壁を蹴った勢いに飛翔の速力をのせて、ロケットみたいに飛んでいく二人を、リリンが羽を動かしながら上から見つめていた。
「てやあっ!!」
「とおっ!!」
ヨクバールに急接近したダークネスとウィッチのダブルパンチがヨクバールに炸裂した。
「ヨクバール!?」
作品名:魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦ 作家名:ユウ