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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 ラナが納得して小百合はようやく恐怖から解放された。スピードがだいぶ落ちて、小百合に周りの景色を見る余裕がでてくる。まず大きく吸い込んだ空気が違った。潮の香と緑の香が一体となり、体中が浄化されるような清々しさがあった。ナシマホウ界でも山奥にいけば空気は良くなるが、それよりもさらに一段上のような気がする。そして落ち着いて周りの景色をみて小百合は息をのんだ。青い海に切り立った断崖の島々が浮んでいたり、空中に浮いている島も見えた。大抵の島に巨大な枝葉が茂っている。中には現実とは思えない巨大なキノコが生えている島もある。大きな島には集落も見えた。上空には三日月が見える。昼なので光はしないが、それでも目で容易にとらえることができる。その大きさはナシマホウ界の十倍はありそうだった。そして、そんな景色のなかに何本も光のレールが走っているのが見え、その上をカタツムリニアが行き来している。カタツムリが嫌いな小百合だが、それは未知の素晴らしい景観として見ることができた。
「これは本当にファンタジックね」
 と小百合が思わずつぶやいていた。
「いっくよ〜」
 ラナが少しだけスピードを上げて切り立った断崖の島々の間を縫うように飛ぶ。その時に小百合は気づいた。断崖だと思っていたのは巨大な樹の幹だということに。ナシマホウ界では到底考えられない巨大な樹が海から生えて、その上に森や町が繁栄しているのだ。
「信じられない、島が全部樹だなんて……」
「これが魔法界だよ、すごいでしょ〜」
「ナシマホウ界の大地の代わりに、ここには樹があるのね。つまり魔法界の核は鉱物ではなくて樹木の根に相当するもので、そこから巨大な樹が生えて大地を形成している。そういうことよね?」
「へぇ、そうだったんだぁ。早百合ってあたまいいね!」
「あんたに聞いたわたしが馬鹿だったわ……」
 それから早百合は何もいわず魔法界の不思議な光景に魅入っていた。ラナが箒を急降下させて今度は海面ギリギリを飛んでいく。もう一段スピードを上げ、ラナが通り過ぎた直後に海面が左右に割れるように波立っていく。
「やっほ〜」
 小百合はまた怖くなってきた。
「またスピード上がってるわよ!」
「まあまあ、これくらいは平気でしょ」
 ラナは勝手に決めつけてそのまま飛び続けるが、急に減速した。小百合は自分に気を使ってくれたのかと思ったが、そうではなかった。
「お〜い!」
 ラナが手を振ると、海面から顔を出していた3人の少女たちも手を振り返す。それを見た小百合は目を疑った。
「こんな海の真ん中になんで女の子が?」
「女の子だけど人間じゃないよ〜」
 ラナがゆっくり近づくと、少女たちが海から飛び上がった。その下半身には魚のようにヒレが付いていた。
「人魚!?」
 人魚の少女たちはラナのまわりでしばらく飛んでいた。
「おお、すごい! そんなに飛べるんだ!」
 人魚たちが再び海に入ると、水面から顔を出して薄紫の髪でツインテールの少女がいった。
「わたしたち魔法学校にいきたいから空を飛ぶ練習をしているの」
「人魚さんが魔法学校に? それはファンタジックだね!」
 ラナが上昇して海面から離れていくと、人魚たちが見えなくなるまで互いに手を振っていた。
「小百合びっくりしたね〜、人魚が空を飛ぶんだって〜」
「わたしは人魚の存在自体に驚いてるわよ……」
「よ〜し、次は魔法の森にいってみよ〜」
「そろそろ戻った方がいいんじゃないの? リコ達を待たせたら悪いわ」
「まだまだ大丈夫だよ」
 ラナはいってまたスピードアップする。お次は海を越え、途方もなく巨大な深緑色の花の上でラナが箒を停止させる。小百合は真下に見える緑の花のようなものを見つめた。
「あれは何なの?」
「近づけばわかるよ」
 ラナが箒を操って近づいていくと、途轍もなく広大な森だということがわかった。密集した樹木や草花が花の形を成しているのだ。
「すごいわね……」
 森の中心には大穴があいていて何とも言えず奇妙で壮観な光景だった。小百合は黙ってそれを見続ける。
「あ〜、ペガサスがいるよ〜」
「ペガサスですって!?」
 ラナは頭上を飛んでいるペガサスを見つけて急上昇。あっという間に追いついてペガサスと並走する。小百合は間近でペガサスをよく観察した。一言でいうなら背中に大きな翼の付いた白馬だが、ナシマホウ界でいう馬とは少し体形がちがっていた。そして白い体毛は普通の馬よりもつやがあるようで、そしてもう少し毛深いように思われた。小百合は草原に住む馬とは違い、ペガサスが森に適応した結果だろうと考えた。
 突然、森の方から重厚な咆哮が響いた。名も知らぬ鳥たちが森の中から無数に飛び出し、魔法の森の中心にある大穴から竜巻のように空気が吹き上がり、続いて大きな翼を広げた深緑の巨体が現れた。
「うわぁ、森ドラゴンだ!」
 ラナが森から飛び立とうとしているドラゴンに近づいていく。次から次へと現れる伝説上の生物を小百合は息をのんで見つめている。ドラゴンに接近しても怖いとは思わなかった。巨体に鋭い爪の付いた手足、尻尾と首は長く、頭には2本の角が生える。意外だったのはそのドラゴンがウロコではなく体毛に覆われていたことだ。
「森ドラゴンは大きいけど、とっても大人しいんだよ〜」
 ラナの説明を象徴するように、ドラゴンの目は優し気だった。全身が毛で覆われているので竜というよりは空飛ぶ巨大な獣という方がしっくりくる。
「次は学校に戻るついでに魔法商店街にいくよ〜」
 箒が上昇して雲間を飛翔する。魔法界はナシマホウ界に比べて雲が発生している高度がずいぶん低い。小百合にはその理由がすぐに分かった。魔法界はナシマホウ界以上に海の割合が大きいのだ。島ばかりの魔法界より地続きのナシマホウ界の方が地上面積が広い事は簡単に想像できる。魔法界では海から上がった水蒸気が大量の雲を作り出しているのだろう。
 小百合は考えながらも流れていく景色を見て楽しんだ。雲から突き出る島々や、下に流れる雲と青い海とのコントラストもまた神秘的な光景であった。
「あれが魔法商店街だよ」
 箒が降下し雲を突き抜け商店街に急速に近づく。商店街の全容はきれいな正八角形で、その形の中に様々な店舗が並んでいる。
「これぜ〜んぶお店なんだよ!」
「もはや商店街というレベルではないわね……」
 低空で商店街の中央広場にさしかかる。広場も正八角形であり、その中心には猫の石像がある。そして、その広場から外に向かって蜘蛛の巣状に水路が広がっていく。魔法商店街を後にするとすぐに別のものが見えてくる。ラナはそれを指さしていった。
「あれが魔法学校だよ!」
「えっ!?」
 それは小百合が今まで見た中で最も勇壮な樹であり、その巨大さは圧巻でエベレストを連想させる。海から樹の中腹辺りに決して消えない虹がかかり、背後を大きな三日月が飾り、雲を突き抜けて枝葉が広大に茂る。その姿はもはや植物の域を越え、この巨大な樹自体が神域といった風体であった。
「あの樹のどこに学校があるっていうの?」
「樹の上にちゃんとあるよ〜」
 箒のスピードが上がった。小百合たちは魔法学校にまっすぐに向かっていった。

「本当に樹の上に学校らしきものがあるわ……」