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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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「もっとも重要な点は、君たちがこのリンクルストーンを持っているということだ。それには何か意味があるはずだ。リンクルストーンは見つけようと思っても見つかるものではない。わしの知っている限りでは、リンクルストーンは必要とされる時に選ばれし者の前に現れる、そういう性質を持っている」
 小百合は見破られたと思った。
「これは君たちが大切に持っていなさい。決して手放してはならぬ」
 そう言われて小百合がリンクルストーンに手を伸ばす。リンクルストーンをポシェットに戻す手が少し震えていた。今この瞬間にも、お前たちが黒いプリキュアだ! と看破(かんぱ)されるんじゃないかと怖くなった。しかし、校長は何も言わず優し気な微笑を浮かべているだけであった。
「明日から学校が始まるからな、今日はよく休むがよい。君たちには寮の2人部屋を開けておいたぞ」
 それを聞いたみらいの目が輝く。
「リコと同じ部屋なんだね!」
「そういうことね」
「わくわくもんだぁ!!」
 それからみんなで校長室から出た時、小百合は安堵して長い息をはいた。
「あなた達はこれからどうするの? 寮に部屋はないみたいだけど」
「わたしの村は学校の近くにあるんだ」
「そうだったの、あなたは家から通っているのね」
「うん、箒でひとっ飛びだよ!」
 リコとラナが会話している間、小百合は心を落ち着けていた。まだ鼓動が少し早かった。そして小百合ははっきりと悟っていた。
 ――校長先生は、わたし達の正体に気づいているわ。気づいても何も言わなかったんだわ。
 校長は小百合の想像をはるかに超えて理知的だった。実際に会ったその瞬間に、これはいけないと思った。自分たちの正体がばれているのは疑いないが、小百合が思ったような最悪の展開にはならなかった。校長は小百合達がみらい達に敵対しているプリキュアだと知っても学校に来ることを許可してくれたのだ。
「立派な教育者だわ」
 小百合は校長の対応に感服した。
 魔法学校を出て校門の前に立ち、小百合はブラックダイヤを日の光に当てて見つめた。
「守護のリンクルストーンはプリキュアに変身するために必要な宝石。伝説ではダイヤ以外にルビー、サファイア、トパーズが存在する。わたしたちにもブラックダイヤ以外の守護のリンクルストーンがあるのかも」
「どしたの小百合? さっきからずっと真剣な顔しちゃって」
「あんたはいいわね、なにも考えてなくて気楽で羨(うらや)ましいわ」
「小百合も何も考えないで楽しくなればいいんだよ〜」
「それは絶対無理」
 と小百合は強く言い切った。

「校長先生、お呼びでしょうか」
 校長室に凛とした女性の声が響く。
「入りたまえ」
 校長がいうと目の前に若い女性がぱっと現れる。校長室には扉が存在しない。その代わり、テレポートして室内に入る事ができるのだ。
 校長の前に現れたのは二十歳そこそこの女性で、顔がリコによく似ていた。瞳の色は同じマゼンダだが、長い髪には少し癖があって髪先がまとまっている。髪色はリコの菫色より少し青味が強い。白いブラウスに新緑色のロングスカート、腰回りに草色の帯、そして同じ草色のケープを纏い、胸元には赤いリボンタイ、その柔和な表情の中に強い意思と深い知性を醸し、彼女の姿を初めて見る人のほどんとは、その独特の空気に触れて、この人は出来ると思うのだ。おまけに容姿端麗なので余計に人目を引く。
 彼女は校長に会釈して言葉を待った。
「忙しいところすまないな、リズ先生」
 リズはリコの姉で正式な教員になってまだ間もないが、魔法学校を首席で卒業しており、知識においても魔法においても魔法界で指折りに優秀な魔法つかいだった。
「校長先生から大切なお願いがあると聞きました」
「うむ、これから忙しくなりそうなので、君にわしの仕事を手伝ってもらいたいのだ。教員の仕事もあるので無理を承知でお願いするのだが」
「よろこんでお受けいたします」
 リズは笑顔で答えた。
「わたしは何をすればよろしいのでしょうか?」
「今、魔法界を騒がせている闇の結晶のことは知っておろう。それに関連する仕事を手伝ってもらいたいのだ。まずは、君に明かさねばならぬ秘密がある」
 今までやさし気な顔をしていた校長は、急に真剣な面持ちになり語り始めた。

 小百合たちは魔法学校からラナの故郷へと向かう。箒にのる二人の少女の頭上に流れる雲が迫り、まるでうごめく白亜の天井のようだ。小百合は上を見て、雲があまりに近いので少し怖くなった。
「もうちょっと高度下げた方がいいんじゃないの?」
「へいきだよぅ」
「いいから下げて、あと速度も速すぎるから少し落として」
「あう〜、小百合は怖がりさんだね!」
「全部あんたのせいよ。初めて箒に乗った時にひどい飛び方するからトラウマになってるの」
「あんなの普通だよ〜」
「あんな戦闘機並みのローリングが普通なんていってるのはあんただけよ!」
「この箒でゆっくり飛ぶの難しいんだよ」
「つべこべいわずに言う通りにして」
「わかったよぅ」
 ラナは箒を急降下させる。急な重力の変化に小百合の身に怖気が走る。気が付けば今度は海面すれすれに飛んでいて足が水面につかりそうだった。
「今度は低すぎよ!」
「え〜、いう通りにしたのに〜」
「なんでそんなに極端なのよ! あんたの中には中間っていうのがないの!?」
「むぅ、小百合はわがままさんだね〜」
 といってラナは高度を少し上げる。小百合はもっと文句をいいたかったが抑えた。ラナはわざとやっているわけではないので、あまり強くいうのもかわいそうだと思った。
 やがて前方にハート型の島が見えてくる。
「あの島にあるリンゴ村がわたしの故郷だよ!」
 ラナは嬉しそうにいうと島に向かって降下を始めた。海に浮かぶハート型の島の海岸線付近には小百合が見たことのない植物達の雑木林があり、その内側に赤い果実がたわわに実るリンゴの木が林立している。島の中心に村があり、そこから広大なリンゴ畑に向かって放射状に農道が走っていた。上から見るとマリンブルーの中に燃え立つ深紅のハートで、雑木林の緑の縁取りがリンゴの赤で染まるハートをさらに美しく際立たせていた。
「きれいだわ」
 小百合は感動を素直に言葉に出した。その一方でラナは急に心配そうな顔になっていった。
「おばあちゃんのリンゴ畑どうなってるのかなぁ……」
 たったそれだけの言葉を聞いて、小百合は胸に疼きを覚えた。その言葉や声にはラナの悲しい気持ちが深く浸透(しんとう)していた。そして二人は島の中心の村に向かって降下していった。

 ラナと小百合はレンガ造りの小さな家の前に舞い降りた。ラナが箒を片手に近くのリンゴの木に数歩近づくと大きな碧眼に涙を浮かべた。
「おばあちゃんのリンゴなってる!」
「ラナちゃん!?」
 ラナが自分を呼ぶ声の主を見ると、リンゴの木の隣にうら若き乙女が立っていた。青い瞳、赤いリボンで長い栗色の髪を束ね、白いカートルに足首まである長い空色のスカート、腰に赤い布ベルトを締め、肩回りを覆う草色のケープをリンゴのブローチで止めている。彼女はラナに向かって走り、そしてラナをきつく抱きしめた。
「よかった、みんな心配していたのよ」
「エリーお姉ちゃん……」