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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 ケイは最初は驚いたものの、動くぬいぐるみはモフルンで見慣れているので、リリンとも握手してすぐにうち解ける。そしてケイがリズに教えてもらいながら勉強を始めると、小百合はその様子を見て一瞬だけ悪女のような暗い笑みを浮かべた。

 放課後になりラナが図書館に小百合を迎えに行くと、まだ勉強が終わらないと言われたので、校内をブラブラしながらお気に入りの場所に向かった。
「ここでねてよ〜っと」
「草が気持ちいいデビ〜」
 ラナはリリンと一緒に柔らかい草の上に寝転がった。辺りには森といって差支えないくらいに大きな樹が並んでいるが、ここは校舎に隣接して建っている円柱状の塔のような建物の屋上であった。ラナが中でも一番大きな樹の下に大の字になって真上を見つめると風で梢(こずえ)が揺らいで葉の間から漏れる光がラナの視界で明滅し、眩しさで半分目を閉じる。ラナは休み時間に一人で暇なときは、いつもここで寝ていた。以前はここにいることが多かったが、今はみらいとおしゃべりしたり、リリンやモフルンと遊んだりして、この場所にくるのは久しぶりだった。
 ラナが次第に眠くなって目を閉じると、誰かが草を踏んで近づいてくるのを感じた。足音は複数あった。
「うん〜?」
 ラナが目を開けると前にレティアと二人の取り巻きが立っていた。
「いたいた」
 やせてる方がラナを見おろして歯を見せて嫌な笑いを浮かべる。ラナは立ち上がると、不安そうな顔になり萎縮してしまった。そんなラナに取り巻きの小太りの方がいった。
「あんたもう学校くるなっていったでしょ、きたって意味ないんだから」
「アハハ〜、そうだよねぇ。でも、今は小百合がいるから〜」
「なにをヘラヘラ笑っているの? 癪(しゃく)に障る」
 レティアが睨みを効かせていうと、ラナは息が止まったようにしゃべるのを止める。取り巻きの痩せてる方が魔法の杖を出して振った。
「キュアップ・ラパパ! 浮いちゃえ!」
 魔法がラナにかかって小柄な体が浮き始める。
「うわぁ、やめてよぅ」
「自分の魔法で何とかしたらいいじゃん」
 ラナがどうしよもできなくて空中で足をジタバタさせると、取り巻きの二人が大笑いする。
「酷いことしちゃだめデビーっ!」
 リリンが飛び上がってやせてる方の杖を持っている腕に組み付く。
「な、なによこのぬいぐるみ!? 動いてる!? しゃべってる!?」
「やめるデビ!」
「離しなさいよ!」
 やせてる方が思いっきり腕を振ると、リリンが勢いで吹き飛ばされて草の上に転がる。
「デビッ!?」
「やめてよ、リリンに乱暴しないで!」
 ラナは何とかしようともがくが、宙に浮いているのではどうにもならない。リリンが起き上って怒った顔でいじめっ子たちを見てから、そこから飛んで森の外へ出ていった。
「アハハ、見捨てられちゃったね!」
 太ってる方が笑い、それからやせてる方が言った。
「ほら、もう魔法が解けるよ」
「きゃっ!?」
 急に魔法が解けてラナは一メートルくらいの高さから落ちた。
「あうぅ、いたぁい……」
 また取り巻きの二人が笑った。レティアは少しにやけているくらいで笑いはしないが、その眼には嗜虐的(しぎゃくてき)な光がある。取り巻き二人がラナをいじめるのを見て、彼女は楽しんでいた。
 その頃、リリンは図書館に飛び込んで小百合が勉強している教科書の上にダイブしていた。
「ちょ、ちょっとなに!?」
「小百合、たいへんデビ! ラナがいじめられてるデビ!」
「なんですって!!」
 小百合は図書館から飛び出し、飛んでいくリリンの後を走った。体育の成績も優秀な小百合は、長い脚でハヤテのごとく廊下を駆け抜けていく。途中で校長室に向かっていたリコたちとすれ違った。小百合の様子が必死だったので、二人とも思わずその姿を目で追いかけた。みらいが心配そうに言った。
「なにかあったのかな?」
「ちょっと気になるわね」
 みらいとリコは後を追いかけてみることにした。
 ラナに対するいじめは続いていた。
「キュアップ・ラパパ! 足よ地面にくっついちゃえ!」
 太ってる方の魔法でラナの足が地面から離れなくなってしまう。
「うわっ、うう〜、足が離れない〜」
 太ってる方がラナに近づいて胸を押した。
「ほら」
「うわぁっ!」
 両足が動かないラナは後ろに倒れて尻餅をつくしかなかった。またレティアの取り巻きから笑い声があがった。その時、彼女らの背後から小百合が早足で近づき、まるでレティアたちが空気でもあるかのように無視して横を通り過ぎ、かばう様にしてラナの前に立った。ラナのすぐ近くにいた小太りの少女が小百合に睨まれ我知らずに後ろに下がっていた。
「いじめっ子というのはどこにでもいるものなのね」
 レティアたちが突然現れた闖入者(ちんにゅうしゃ)を見つめる。ラナは輝くような笑顔を浮かべていた。
「小百合!」
 小百合が睨むと、取り巻き二人が少し怯んだ。小百合が怖い顔をしているわけではないが、その美しい容姿に秘めたる凄味がオーラとなって外に出ていた。この時にリコとみらいの姿が屋上の入り口に現れる。この森はみらいにとって思い出深い場所だった。
「あれ、ここって確か……」
「見て、杖の樹の下」
 リコとみらいの視線の先に向かい合う少女たちの姿があった。
「なにしてるんだろう?」
 二人が様子を見守っていると、小百合が言った。
「あんたたち、これ以上わたしの友達を傷つけたら許さないわよ」
 取り巻き二人は完全に小百合をバカにして笑っていた。いくら凄味があっても、相手は魔法が使えないのだから怖くない。そんな余裕を見せている者たちに小百合が衝撃を与える。
「校則第3条、魔法で他人を傷つけてはならない。この校則を破った場合、最も重い処罰が下されるわ。退学になってもおかしくない」
「な、なにを偉そうに! この学校の生徒でもないくせに!」
 レティアが敵意をあらわにして言った。やせてる方がまた杖を振る。
「あんたも同じ目に合わせてやる。キュアップ・ラパパ! 浮いちゃえ!」
 その魔法が小百合の前で弾けて消える。実際の魔法は目には見えないが、何も起こらないのでやせた少女が唖然とする。
「な、なんで? なんで浮かないのよ!?」
「魔法実技の教科書に魔法は強い精神力で跳ね返せると書いてあったわ。あんたの精神力がわたしの精神力よりも劣ってるってことでしょ」
 小百合が言うと、やせた少女は悔しさのあまり今にも泣きそうな顔になって叫ぶ。
「なんですって!? こいつ、生意気!」
 レティアは朝にリコから聞いた言葉を思い出していた。先端に小さなダイヤの形の赤い飾りの付いた杖を出して小百合に向ける。
 ――こんな子が、そんなはずないわ!
 レティアは小百合の後ろにいるラナが腰にある小さなポシェットを大事そうに隠しているのに気付いた。彼女は笑みを浮かべて杖を振った。
「キュアップ・ラパパ! ポシェットよこちらにきなさい!」
 ラナのポシェットが腰からほどけて浮き上がる。ラナは慌てて飛んでいこうとするポシェットに掴みかかった。
「これはだめーっ!」
「よほど大切なものが入っているのね、見せなさい!」