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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 小百合もラナと一緒にポシェットを掴んだ。レティアの魔法は強力で、ポシェットと一緒に二人の体が引っ張られて浮き上がりそうになる。
「アハハッ! 無様ね! ろくに魔法が使えない人と魔法も使えないのに意味のない勉強をする人、いい取り合わせだわ!」
 レティアに罵倒(ばとう)されて、ラナの瞳に涙が滲んだ。
「小百合、ごめんね、わたしのせいで、わたしがダメだから、魔法が使えないから」
「あんたはダメなんかじゃないわ! 卑屈にならないで!」
 小百合の声はみらい達にも届いていた。
「大変だよ!」
「助けに行きましょう!」
 二人で駆けだそうとすると、モフルンがみらいの懐から飛び降りて、でんぐり返しの勢いで草の上に立ち上がる。
「モフルン?」
「くんくん、甘いにおいがするモフ」
『ええ!?』
 みらいとリコは同時に驚き、そして小百合たちのすぐ近くにある大樹の上の方で何かが光るのを見た。
 小百合はポシェットを引き寄せる引力に抵抗しながらラナを叱咤するように叫ぶ。
「魔法が使えないのが何だっていうの! もうラナは誰よりもすごい魔法をもっているじゃない! その魔法でわたしを救ってくれた! ラナの笑顔と明るさは、どんな魔法よりも素敵よ!!」
 その時、ラナの大きく見開かれた碧眼から涙が零れた。母と祖母と暮らした記憶が駆け巡る。おばあちゃんは、ラナには素敵な魔法があると言った。母は決して笑顔を忘れないでと言った。この瞬間にラナはその意味が分かった。小百合が教えてくれた、そして小百合だけがラナの全部を分かっていてくれたのだ。
 二人の気持ちが通じ合った時、樹の上から何かが落ちてきて、小百合の目の前で止まった。これは小百合の物だとでもいうように、細い純白の棒の先に三日月形のクリスタルの付いている魔法の杖が浮いていた。その存在に小百合が驚いたのはほんの一瞬で、すぐに凛々しい表情で杖をつかみ取り、勢いよく振った。
「キュアップ・ラパパ! 魔法よ跳ね返りなさい!」
 引っ張られたポシェットが急に軽くなる。ラナは自分の手に戻ったポシェットと小百合が持っている魔法の杖を交互に見て目を白黒させていた。
「そんなバカな!? なんで魔法の杖が!?」
 レティアが驚いていると、すぐ近くで呆然とつっ立っていた取り巻きの小太りの方の体がふいに浮き上がり焦る。
「え!? な、なにこれ!?」
 小百合がレティアを魔法の杖で指して言った。
「あんたのポシェットを引き寄せる魔法をお友達に跳ね返したわ。よって、お友達の方があんたに引き寄せられる」
 小太りの方がレティアに飛んでってぶつかった。二人とも悲鳴をあげて一塊になって倒れる。
「どきなさい!」
 レティアが怒りをぶつけると、小太りの少女は怯えていた。レティアは強気を保つのが精いっぱいで言葉が出なかった。代わりに様子を見ていたリコがレティアが心の中で思ったのと同じことをいった。
「目に見えない魔法を跳ね返して別の物にぶつけるなんて、相当な経験を積んだ魔法つかいじゃないとできないことなのに……」
 レティアは憎悪で燃える瞳で小百合を睨み、小百合は相手になるとでも言うように一歩前に出る。今まで人に危害を加える魔法を取り巻きにやらせてきたレティアだったが、小百合のことはどうしても許せずついに自ら杖を振るった。
「キュアップ・ラパパ!」
 レティアが地面に杖を向けると、小石が一つ浮き上がる。
「そのきれいな顔にぶつけてやる!」
 小百合は黙って見ていた。その冷静さがレティアの憎悪を増長する。
「石よ飛んでいきなさい!」
 石が高速で飛び出した瞬間に、小百合が杖をまっすぐ前に出して呪文を唱える。
「キュアップ・ラパパ! 石よ止まりなさい!」
 透明な三日月の前で石がピタリと止まる。小百合は力強い言葉と共に杖を振った。
「キュアップ・ラパパ! 石よ飛べ!」
 レティアには小石が消えたように見えた。瞬間、なにかが顔の近くをかすめて横髪を突き抜けていく。レティアがまるで壊れた人形のようなぎこちなさで後ろを見ると、背後の樹木に小百合がお返しした小石がめり込んでいた。レティアは腰が砕けてその場に座り込んでしまった。そして彼女は震える声で言った。
「リコのいったことは本当だわ……」
 レティアを置いて取り巻きの二人が逃げ出す。小百合は右手で持っている魔法の杖の三日月を左手の上に置いていった。
「イメージ通りね」
 ずっと様子を見ていたリコとみらいは『すごい……』とつぶやいていた。
 レティアはゆっくり立ち上がって、顔を見せないように下を向き敗残者の体を晒し、おぼつかない足取りで去っていく。レティアは必然的に入り口に立っていたリコとみらいのすぐ近くを通ることになった。悪いのはレティアの方だが、それでも気の毒になってしまうような姿だった。
 杖の樹の下には小百合とラナだけが残った。小百合は杖の樹を見上げて言った。
「この樹の上から魔法の杖が落ちてきたのね」
「びっくりだね、普通は生まれた時にもらうものなんだけどね。でも、小百合が魔法の杖をもらえて本当によかった! うれしい!」
「きっとラナのおかげよ」
 それからラナはうつむいて小百合の顔を見ずに言った。
「助けてくれてありがとう。それでね、わたし小百合にかくしてたことがあるんだ。ずっといえなかったけど、いまいうね」
「ええ」
 ようやくこの時が来た。ラナは本当の意味で小百合に心を開こうとしている。
「わたしが魔法をちゃんとつかえないのって、病気のせいなんだぁ……」
「もっと早く言ってくれればよかったのに」
「さゆりぃ……」
 小百合の温かい言葉にラナは涙が出そうになる。小百合は可愛い妹でも見るような目をしていた。
「ラナのことが全部わかったわ。あんたがナシマホウ界に来たのは、リンクルストーンを探すためじゃないでしょ。おばあちゃんが亡くなったり、いじめられたり、辛いことがたくさんあって、あんたは逃げ出したんだわ。わたしにはあんたの気持ちよくわかる。その辛い気持ちが消えるこはないけれど、二人一緒なら乗り越えていけるわ」
 ラナが顔を上げて小百合をまっすぐに見た。大きな瞳に溜まっていた涙が輝く雫になって次々と頬を伝って流れ落ちる。ラナは小百合の胸に飛び込んで大声で泣いた。みらいとリコがその姿を黙って見つめていると、二人の後ろに気配があって同時に振り向く。
『校長先生!?』
「魔法の水晶が杖の兆しがあると言うのできたのだ。やはり彼女は魔法の杖を手に入れたか」
 
 校長室に4人の少女が集まっていた。校長の側にはリズがまるで社長秘書のように立っている。校長は小百合に向かって言った。
「まずはおめでとう。その魔法の杖は魔法界が小百合君を受け入れたという証しじゃ。君を正式な魔法学校の生徒として認めよう」
「校長先生、ありがとうございます」
「あなたは努力していたもの、当然の結果だと思うわ」
 今度はリズが嬉しそうな顔をする。リコの胸が疼いて思わず姉から目をそらしてしまう。
「これは君のために用意した魔法学校の制服じゃ」
 校長の言葉を合図に、リズが用意しておいた制服と生徒手帳を机の上に置いた。
「頂いていいんですか?」
「うむ、これからは二人で一緒にやっていきたまえ」