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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 ヨクバールに向かっていくミラクルを見ながら、フェンリルはさっきとは違い神妙な顔をしていた。
「このまま伝説の魔法つかいを倒せればそれに越したことはないが、本当の目的は違う。奴らも闇の結晶を集めていたんだから魔法界にきているはずだ。出てこないのか、黒いプリキュア」

 小百合とラナはまだ空から街を見おろしている。ラナはミラクルとマジカルの戦いを何度も交互に見て死ぬほど心配していた。
「小百合、このままじゃ二人ともやられちゃうよ!」
「プリキュアの力を発揮できないように分断しているようね。敵は考えているわね」
「さゆりぃーっ!」
 ラナがそわそわしながら叫ぶ。もう我慢できないという感じだが、小百合は黙って目下で繰り広げられているマジカルの戦いを見ていた。

「いけーっ、ヨクバール!」
「ギョイーッ!」
 丸型ヨクバールが超低空を飛び、氷漬けのミカンの体で突進する。マジカルは両手を前にヨクバールを受け止める。衝撃で受け止めた態勢のまま後退していく。
「くうぅ!」
 次第にヨクバールの勢いが衰え、マジカルの踵(かかと)が階段の際に接触した時にヨクバールを受け止めた状態で完全に止まった。それを見てボルクスは赤い目を見開く。
「げげっ、一人で止めやがった!?」
 しかし、マジカルはヨクバールを止めるのがやっとで反撃に転じることができないでいた。
「ええい、押し込めヨクバール!」
「ギョイ!」ヨクバールが氷の翼を広げて羽ばたく。マジカルにさらなる重圧が加えられ、ついに耐え切れずにヨクバールの体の下敷きになってしまう。ヨクバールが飛び上がって離れると、マジカルは段が砕けてほとんど平坦になった階段の中に埋もれてしまっていた。
「ううっ……」
 ダメージが大きいのか、マジカルが苦しそうにうめく。ボルクスは好機と見るやヨクバールに命令する。
「これでとどめだ! ヨクバールッ!」
 ヨクバールが高度を上げてから、ミラクルに向かって急降下、その時にマジカルが目を開けて素早く起き上る。
「まだまだなんだから!」
 マジカルは目の前に出たリンクルステッキを左手に取り、剣で敵を切るように強く横に振る。
「リンクル・ペリドット!」
 マジカルの呼びかけに乗じてリンクルステッキに若葉色のドーム型の宝石がセットされる。マジカルがリンクルステッキをヨクバールに向けると、無数の葉が螺旋の竜巻になってヨクバールに襲いかかる。まともに食らったヨクバールは、あっという間に葉っぱに全身を包まれて身動きが取れなくなった。マジカルは墜落してくるヨクバールに向かって思い切りジャンプ、
「はあーーーっ!」
 マジカルの渾身のパンチでヨクバールは葉っぱをまき散らしながら吹っ飛び、弧を描いて墜落する。とどめを刺せると思っていたボルクスはマジカルのパワーにまた驚かされる。
「何て奴だ!?」
 着地したマジカルは広場の外に向かって疾走した。
「今のうちにミラクルのところに!」
「ヨクバール!」
 マジカルの頭上からツララの雨が降ってくる。
「キャァーッ!?」
 マジカルに大したダメージはなかったが、地面に突き刺さったツララが目の前に壁を作っていた。
「ミラクルのところには行かせんぞ」
 ボルクスが腕を組んでマジカルの前方に仁王立ちしていた。空からはヨクバールが近づいてくる。
「どうしたらいいの……」
 ミラクルもマジカルも、たった一人で敵と戦う苦しさに心が疲弊(ひへい)していった。

 箒の上のラナが握った両手を胸に当てて、息が苦しいような変な声を出しながらウサギ型ヨクバールとミラクルの戦いを見おろしていた。ミラクルは懸命に攻撃を加えるが、ヨクバールの爪の一撃を受けて近くの建物に叩きつけられてしまう。その建物が崩壊して煙が舞い上がるとラナは叫んだ。
「もう我慢できない! わたし一人でも助けにいくから!」
「あんた一人じゃ何にもならないわ。3人そろわないと変身できないんだからね」
「それでも助けにいく〜っ! わたしが魔法を使いまくれば、ヨクバールを倒せる魔法がでるかもしれない!」
 ラナそういうと、途端に小百合は慌てた。
「そ、それはやめなさい! 今より恐ろしい状況になるわ!」
「このままじゃミラクルとマジカルがやられちゃうよぅ……」
「もう観察は十分よ、わたしたちも行きましょう」
 泣きそうなラナの顔がたちまち笑顔に変わる。
「二人を助けるんだね!」
「勘違いしないで、あの二人はどうでもいいわ。ただ、このままだと人的被害が出る、さっさと片付けてしまいましょう」
「そんな、どうでもいいだなんて、友達なのに……」
「あの二人は敵よ。友達だなんて気持ちは捨てなさい」
 小百合に言われるとラナは目伏せて黙っていた。
「変身するわよ、街に降りて」
「うん……」
 ラナは言われた通りに箒を降下させた。

「大変モフ、二人が危ないモフ、どうしたらいいモフ?」
 モフルンが苦戦するミラクルを物陰から見ていた。今ヨクバールの前に立っているミラクルは傷だらけで、見ていると涙が出そうだった。
「モフルンいたデビ」
「モフ!?」呼ばれて振り向くと、リリンが羽を動かしながらすぐ近くに浮いていた。
「リリンモフ〜、今ミラクルとマジカルが大変モフ、力を貸してほしいモフ」
「それならもう大丈夫デビ〜」
 ぬいぐるみたちの間近を黒い影が風を切って走り抜ける。疾走するダークネスとウィッチが、ミラクルに攻撃しようとするウサギ型ヨクバールに向かって跳び、敵の胸部に同時に飛び蹴りを叩き込む。
『はぁーっ!』
「ヨクバールッ!?」
 吹っ飛んだヨクバールは道路に叩きつけられ、後は勢いに引きずられて巨体で街路樹をなぎ倒していく。そして、二人の黒いプリキュアがミラクルの目の前に舞い降りる。
「助けにきたよ!」
「ウィッチ!?」
 振り向いて笑顔を振りまくウィッチの姿に、ミラクルは喜びを交えた驚きを示す。しかし、ダークネスはミラクルを黙って見据えていて、それが少し怖かった。
「あれはわたしたちが倒すから、あんたはマジカルと合流してもう一方のヨクバールを倒しなさい」
 ダークネスがいうと、ミラクルが笑顔を見せる。
「ありがとう、ダークネス!」
 以前、ひどい目に合わされている相手にミラクルがどうしてそんな笑顔になれるのか、ダークネスには不思議だった。
 ミラクルはジャンプすると、屋根伝いに中央の広場に向かっていった。
 
 戦いを見ていたフェンリルは、宵の魔法つかいが現れ憎しみが込み上げてくる。
「出たか、黒いプリキュア! ヨクバール、そいつらを何としても倒せ!」
 フェンリルは離れたところにいたが命令は届いていた。倒れているウサギ型ヨクバールがむくりと起き上がり、新たな標的に向かって足を踏み出し近づいていく。ダークネスとウィッチに怪物の巨大な影がさしかかる。
「一気に片付けるわよ、ウィッチ!」
「うん! やっちゃうよ〜っ!」
「ヨクバァール!」
 二人に長い爪が叩きつけられる。それぞれ左右に広がって攻撃を避け、二人が別々の建物の側面を踏み台に同時にヨクバールに突っ込む。
「はっ!」ダークネスのパンチがヨクバールの腹部に決まってよろめく。