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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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「それ!」動きの鈍ったヨクバールの側頭にウィッチが蹴りを入れる。ヨクバールはたまらず一歩二歩と後退するが、その状態で空中のウィッチに爪を払う。
「うわわっ!?」
 ヨクバールの体制が悪かったので攻撃は当たらないが、爪を払った風圧でウィッチは飛ばされ、スカートを押さえながらくるくる回る。ウィッチは尻から着地して何ともなかったのでほっとした。ダークネスは腕輪を胸の前へ、隙ができたヨクバールに魔法を使おうとしていた。
「うさちゃん!」
「ルミ、行くんじゃない!!」
 突然、異質な声がダークネスの耳に飛び込んでくる。ダークネスの横を通って幼い女の子がウサギ型ヨクバールの前へ。ダークネスは想定外の事に驚き、次に戦慄した。幼い少女はヨクバールの前に立ったまま動かない。ヨクバールはその場で暴れだし、近くの建物を破壊してはがれ落ちた壁の一部が少女に迫る。ダークネスはすぐに冷静になり自身が黒い風となって走った。後ろから父親が叫ぶ声があったが、風を切る音にかき消された。
 ダークネスは崩れた壁が落ちてくる直前に少女を抱き、その場から離脱する。ダークネスに抱かれていた少女が地面におろされる。少女の体は震えていたが、その顔は悲しんでいるように見えた。
「ルミ、無事か!?」
 父親が走ってきて、息を切らせながら言った。その顔は蒼白になっていた。
「大丈夫です、怪我はありません」
 ダークネスは父親を安心させてから、少女の肩を抱くように優しくつかんで言った。
「どうしてあんな化物の前に立ったりしたの? あなたはあれが怖くないの?」
「わたしのうさちゃんなの、お母さんのうさちゃんなの……」
 少女は涙を流しながら言った。父親は顔を歪めて辛そうな顔をしている。
「あのぬいぐるみは、一年前に亡くなったこの子の母親の手作りなんです」
 それを聞いたダークネスはすっと立ち上がる。父親は幼い娘を抱きしめて言った。
「もうあきらめるんだ……」
「やだぁーーーっ!」
 幼い少女の泣き声が高くなる。ダークネスはまるで自分自身を見ているように感じる。歳は違えど母親を亡くした境遇は同じだ。ダークネスには少女の気持ちが自分の事のようにわかる。
「大丈夫よ、わたしが取り戻してあげる」
 少女はピタッと泣くのを止めて、涙に濡れた顔でダークネスを見上げる。
「お姉ちゃん、本当に取り戻してくれるの?」
「約束は必ず守るわ。だってわたしはプリキュアなのだから」
「プリキュア、伝説の魔法つかい……」
 父親がほとんど呆然として言うと、ダークネスは無表情のまま不本意な気持ちを声色に乗せて言った。
「伝説の魔法つかいではありません」
 そしてダークネスはヨクバールに向かって走り出す。スタートダッシュの勢いが凄まじく、親子は風圧を受けた。
 ウィッチは四苦八苦しながら一人でヨクバールの相手をしていた。
「ダークネス、手伝ってよ〜っ!」
 ウィッチは攻撃はせずにひたすら逃げ回っていた。彼女はダークネスと一緒じゃないと敵が倒せないと本能の部分で分かっている。だから一人で頑張って戦うという思考は生まれないのだ。
「もう少し頑張りなさい」
 ダークネスが右手を横に呼びかける。
「リンクル・インディコライト!」
 ダークネスの右腕のブレスレッドにブルーのトルマリンが現れ輝きを放つ。
「ウィッチ、離れて!」
 ウィッチは大きくジャンプしてダークネスの隣に戻ってくる。そしてダークネスが前に向けた右手から青い電流がほとばしり、ヨクバールを直撃する。敵が痺れて動けなくなっている時に、ウィッチが左手を天に向け、
「リンクル・スタールビーっ!」
 ウィッチのブレスレッドに宿ったスタールビーの赤い光が二人の体に吸い込まれる。
「同時に行くわよ!」
「了解だよ!」
 パワーアップした二人は走り出し、ヨクバールにスライディング、足をすくわれた巨体がゆっくり前に傾くと、少し後ろに下がった二人はぐっとかがんで力をため、思い切り地を蹴ってとび出す。二人の気合と共に突き上げられた拳が倒れてきたヨクバールの腹に炸裂し、巨体がくの字に曲がって真上にぶっ飛んだ。
「ヨクバールゥッ!!」
 地上に降りたダークネスとウィッチは、もう一度かがんでさらに高く跳躍する。二人は豪速で真上に飛んでいるヨクバールに追いつき、
『はあーっ!!』
 同時の気合と共に同時の空中蹴りをヨクバールにお見舞いする。
「ヨクーーーッ!?」
 ヨクバールはウサギの耳をなびかせながら中央広場の方に吹っ飛んでいった。
 その戦いの一部始終を見ていたフェンリルがオッドアイを見開いて驚愕する。
「あいつら、前より強くなってないか!?」
 フェンリルの視界の中でダークネスとウィッチが道路を疾走して吹っ飛ばしたヨクバールに向かっていった。

 中央広場の猫の像近くではマジカルが丸型ヨクバールに苦戦していた。上空のヨクバールが骸骨の口から氷のブレスをはき、マジカルはそれを身に受けて耐えていた。続けてヨクバールが急降下してくる。マジカルは動こうとして自分の足が凍り付いていることに気づいた。
「しまった、さっきの攻撃で!」
 ヨクバールが氷の翼を開き、凍ったミカンの胴体を下に急接近してくる。
「マジカル!」
 その声を聴いた時に、マジカルの胸に希望の火がともる。ミラクルが階段の上から跳んできてマジカルの横に立った。ヨクバールは目前まで迫っている。二人は一瞬視線を通わせ、両手でヨクバールを受け止める。二人の足元に紅蓮の炎が噴き出し、マジカルの動きを封じていた氷が一瞬で溶けて蒸発した。
 ボルクスが二人そろったプリキュアを見てうろたえる。
「なにぃっ、どうしてミラクルがここに!? フェンリルのやつ失敗したのか!?」
『はぁーっ!!』
 ヨクバールを軽々と受け止めた二人がボルクスに向かってヨクバールを投げつけた。
「うおーっ、やべぇ!?」
 ボルクスは尻を向けて走り、辛くも落ちてきたヨクバールから逃れる。
「マジカル、遅くなってごめん」
「心配したわよ。でも、無事でよかった。あのウサギみたいなヨクバールは?」
「ダークネスとウィッチが助けに来てくれたんだよ!」
「何ですって、あの二人が!?」
 ミラクルは嬉しそうな顔をしているが、マジカルは事ダークネスに関しては嫌なイメージしか持っていない。大量の闇の結晶を奪われているのだから、そういう感情を持つのは当然だ。マジカルは少し嫌な予感がしたが、今は考えている時ではなかった。
「くっそーっ! ヨクバール、二人まとめて倒しちまえ!」
 ボルクスが地団駄を踏んで命令すると、ヨクバールは口を開き、また氷のブレスで攻撃してくる。それをミラクルがリンクルステッキを片手に迎え撃つ。
「リンクル・ムーンストーン!」
 突き出したリンクルステッキの先から白く光る円形のバリアが広がって氷片の混じった吐息を遮断する。攻撃を受け止めているミラクルの背後からマジカルが跳躍し、宙返りしてヨクバールの斜め上から襲撃した。
「てやーっ!」マジカルの飛び蹴りがヨクバールの眉間に食い込んだ。