二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

INDEX|99ページ/168ページ|

次のページ前のページ
 

「うわぁ、ダークネスったら、またあんなことして!」
 ウィッチが慌てて屋根から跳び下りてミラクルとマジカルの方に走っていく。その時にヨクバールが消えて安心した街の人々が、中央の広場に集まってきた。
 ダークネスはミラクル達の近くに着地すると言った。
「強力な魔法だったわね」
 ダークネスそう言って相手を小馬鹿にするような笑みを浮かべる。それが挑発だと分っていても、マジカルは言わずにはいられなかった。
「ふざけないで! 横取りするなんて卑怯よ! あなたそれでもプリキュアなの!」
「なんとでも言いなさい。わたしは目的のために手段なんて選ばない」
 ダークネスの後ろに来たウィッチが、ミラクルとマジカルを見て自分が悪いことをしているとでもいように、申し訳なさそうな顔をしている。ダークネスは奪った闇の結晶をマジカルに見せつけて言った。
「これは頂いていくわ。悔しかったら力づくで取り返したらどう?」
 マジカルの握る手に力が入る。ミラクルがその姿を不安そうに見つめた。ミラクルにはマジカルが苦しんでいるのが分かった。まるで追い詰められている、そんな空気を感じる。
 集まってきた街の人々はプリキュア達の間から漂ってくる不穏な気配に戸惑っていた。その中のブラウンの帽子をかぶった小柄な老人が杖をつきながら言った。
「前に見たプリキュアは2人だったが、今度は4人、仲間なのか?」
「俺にはもめているように見えるぞ」
 老人の隣にいた大柄な箒店の店主が言った。
 ダークネスはどこか苦しそうなマジカルに余裕の笑みを交えて言う。
「あんた達はチェスでいえばチェックメイトされているようなものよ」
「どういうこと?」
 ミラクルにはダークネスが何を言っているのか分からない。
「マジカル、あなたは分かるわよね。だってあなたは、破壊されたビルの壁を見ていたのだから」
「あなたもあそこにいたのね!」
 ミラクルとウィッチにはまったく話が見えない。しかし、次のダークネスの話に衝撃を受けた。
「プリキュア同士で戦った場合、破壊されたものは元には戻らない。わたしたちが本気で勝負したらこの街は消滅するかもね」
『ええーーーっ!?』
 ミラクルとウィッチが同時に叫んだ。
「だからあなた達は、この闇の結晶を取り返すことはできない」
 ダークネスは見せつけていた闇の結晶を手の内に隠し、マジカルにさらに近づく。二人の間にほとんど距離がなくなった。ダークネスはマジカルの目を射るように見ながら言った。
「闇の結晶を持っているでしょう、全部渡しなさい」
「そんなこと言って渡すとでも思っているの?」
「わたしは手段を選ばないと言ったわ。渡さないというのならば攻撃も辞さない」
 そんな事は出来ないとマジカルは思う。ダークネスの正体が小百合だということはもう分かっている。あの小百合が街を巻き込んでまで攻撃してくるとは思えない。だが一方で、この人なら本当にやるかもしれないという気持ちもあった。ダークネスの徹底した合理性をマジカルは理解しているし、つまらない脅しなどかけてくる質(たち)ではないとも思う。100%攻撃をしてこないという保証はない。
 ダークネスとにらみ合っていたマジカルの視線が下がる。手ごたえを感じてダークネスは薄く笑った。
 ――マジカルはわたしと同じ合理的な考えの持ち主、この街に危険が及ぶ可能性はすべて回避してくる。
 ついにマジカルが目を閉じる。その表情に辛い気持ちがよく表れていた。ダークネスは勝ったと思った。
「そんなこと、できるわけないよ」
 ダークネスが思ってもみないところから声が起こった。声を聞いたマジカルは不思議な安心感が広がって目を開けた。
「ミラクル……」
 今度はミラクルがダークネスの近くまで進み出て言った。
「ダークネスは優しい人だよ。友達を家族みたいに思いやれる人に、この街を壊すことなんてできるわけない」
「あなたにわたしの何が分かるというの?」
「それは、分からないことだらけだけど……」
 責められるように言われたミラクルは一瞬目を伏せるが、すぐにダークネスを見つめて友達に見せるような笑顔で言った。
「わたし、カタツムリニアの中でダークネスが小百合だって分かって嬉しかった。あんな酷いことしたのは、とっても大切な理由があるからなんだって思えるようになったから」
 それを聞いたダークネスはさすがに驚いた。
「……どうしてわたしの正体が分かったの?」
「それは、ダークネスがウィッチを呼ぶ姿と、小百合がラナを呼ぶ姿が同じだったから」
 ダークネスはミラクルの研ぎ澄まされた感覚に一種の恐ろしさを感じる。つまりみらいは、校長よりも先に小百合がダークネスだということを見抜いていたのだ。それにもかかわらず小百合とは友達として普通に接していた。それにまったく気付けなかった事がダークネスに敗北感を与えた。
「なるほどね、注意すべきはあなたの方だったのね」
 ダークネスは踵(きびす)を返してミラクル達に背を向け、少し離れたところに立って見ていたウィッチの方に歩き出す。
「作戦は失敗ね、うまくいくと思ったんだけどね」
 ダークネスはウィッチの隣にくると手のひらを返して言った。
「ウィッチ、ぬいぐるみ」
「はいっ!」
 ぬいぐるみを受け取ったダークネスが階段の上に集まっている人々を見上げる。街の人たちの不安と困惑が重い空気となってよどんでいた。ダークネスが跳躍して人々の前に降りると、ダークネスの姿が闇をイメージさせる事も手伝って人々は恐れを抱いた。ダークネスが群衆の中にいた幼い少女に近づく。周りの人々は思わず後ろへ下がってしまった。ダークネスは少女の背丈に合わせて膝をつくと、ぬいぐるみを手渡して言った。
「約束通り、ぬいぐるみは取り返したわ」
「ありがとう、プリキュア!」
 少女のその一言とダークネスの優しい対応で、人々の間に安心感が急速に広がった。この乙女もプリキュアなんだと、みんな確認する事ができた。
「行くわよ、ウィッチ!」
 ダークネスに呼ばれたウィッチは妙に慌てて、ミラクル達に向かってしどろもどろに言った。
「な、なんていうか、ミラクル、マジカル、ごめんね!」
 ミラクルが気にしないでというように首をふり、
「ウィッチ、助けてくれてありがとう」
「わたしたち、こんな関係じゃなかったら、もっと良かったのにね」
 その言葉には、ミラクルは悲しい顔で返すしかなかった。ウィッチはダークネスに向かって跳び、二人の前からいなくなった。
「帰りましょう、ミラクル」
「うん……」マジカルに答えるミラクルは元気がなかった。

 プリキュア達の一部始終をフェンリルはよく見ていた。彼女は自分のヨクバールが負けたにも関わらず勝者のような笑みを浮かべて言った。
「あいつら敵対してんのかい。こりゃあ利用できそうだねぇ」
 一方、ダークネスとウィッチの大魔法に巻き込まれそうになって街外れまで逃げてきたボルクスは地団駄を踏んでいた。
「くっそーっ、プリキュア! 次は絶対倒すからな!」

 夕方ごろにリズは校長室の掃除をしたり書籍を整理したりと雑用をこなしていた。校長は机を前に考え事をしている。最近はこういう姿の校長を見ることが多くなった。