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女体化ジルヴェスターの災難~ドレッファングーアの暇潰し~

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新たな可能性



 翌日。エーレンフェストに過去のフェルディナンド、アレキサンドリアに過去のユストクスとエックハルトに別れた夜から一夜明けて。
 過去のフェルディナンド曰く、夢の中にドレッファングーアが出てきて、還る時には時の東屋から魔方陣が浮かび上がる為、強い魔力を迸らせるから、波動を感知したら東屋に来い、と言ったとの事で、特に還る為の方法を探す必要は無いと分かった。
 恐らく明日には還るであろう事を含め、それを全領地に一応告げる。研究に没頭している者達に拉致される勢いで、捕まったのも無理はない。過去勢は本日は缶詰だろう。
 さてその間に本来の予定であった、他領との会議に入ったのだが。
 急ぎエーレンフェストから取り寄せた騎士の服に身を包んだジルヴェスターに、驚愕の視線が集まる。直接会っていない他領も含めて、ジルヴェスターが女性になってしまった事は早々に伝わったろう。感情を隠す、と言う事を忘れさせた一件となった。

 一方、ローゼマインは髪型を少し変えた。ジルヴェスターから貰った髪留めを付け、その上でトゥーリ作の髪飾りとフェルディナンド作の虹色魔石な髪飾りを着ける為だ。
 あんまりハデハデは却ってセンスが悪い。側仕えに色々と確認しながら、完成した。その際、「それ、男物ですが」と言う視線は黙殺された。
 その出来上がりは美しく、敢えて男物を付ける、と言う流行りの可能性を誰もが見出だす程に。ただし本人はこれっぽっちも考えていなかったが。

 「お髪をお揚げになります?」
「それはイヤだ。」
「ドレスは?」
「もっとイヤだ。」
 これがジルヴェスターとの朝の会話だった。体が女性になっても、中身は男性なのだから、この返事は当たり前だった。
 そんな事を話すのは、エーレンフェスト、アレキサンドリア、ダンケルフェルガー、中央の集まりである。
 何時も違う髪留めで、何時もと同じ髪形をしている女性版ジルヴェスターに、どう会話したら良いのか、探り探りである。
 多分、過去勢が帰った後、元に戻る為に、ヒルシュールの研究素材になるだろう。交渉して安く依頼出来るかどうかは不明だ。ふと、ローゼマインが口を開いた。
「…そう言えば、どうして成人女性の髪形が決まっているのですか? 男性は自由なのに。そもそも髪形の自由は女性の方にこそ、需要がありそうではありませんか。」
 ドレスに似合う、似合わないがある様に、髪形にもそれがある。何故、決められなければならないのか。今まではそう言う文化と納得していたが、目の前に例外が現れて、疑問を感じてしまったのだ。
「…そう言えば、特に決められた事ではありませんでしたね。只の慣習であって、他の髪形を禁止するモノではありませんし。」
 罰則は何も儲けられていない。その事に気付かされたのは、エグランティーヌである。
 …突き詰めてしまえば、新たな流行りが生まれそうだが、流石に慣習を破るのは勇気がいるモノである。その為、その会話はソコで終わったものの、頭の中でずっと考えていた者が居た…。