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女体化ジルヴェスターの災難~ドレッファングーアの暇潰し~

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母性の意思 1



 翌日。通信でエーレンフェストに今すぐ行くと言い切り、護衛夫婦のエックハルトとアンゲリカだけを連れた強行お忍びを決行した。
 お忍びにならないお忍びで、皆の視線が集まる中、フェルディナンドが最大級の謝罪をした事で、城は蜂の巣をつついた状態になる。
 慌てたジルヴェスターにより、隠し部屋へ連れて行かれた
「ジルヴェスター、済まない!! 許してくれとは言わぬ!!! 私は最低な事をした。抵抗出来ない其方を無理矢理に繋ぎ、人間としての尊厳を、男としての誇りを、私は無茶苦茶に踏みにじった!!! 責めてもの償いに…、何とか男に戻す!!! 戻すから…、」
 許されるとは思っていない。だから、最後は何を言って良いか分からない。
「養父様、私からも謝罪します。何も知らなかったとは言え、酷い提案を致しました。何をすれば、償いになりますか?」
 アウヴ同士としての償いであれば、それこそ金銭が基本になるだろう。だがジルヴェスターとローゼマインは血の繋がりは無いと言えど親子であり、ジルヴェスターとフェルディナンドは血の繋がりが怪しかろうと兄弟だ。金銭だけでは済まない。だが。
「謝るのは私だ。フェルディナンド。」
 静かにジルヴェスターは言った。
「私は何も気付かなかった。気付かぬままに、フロレンツィアとの星結びを協力させ、その後も散々話を聞かせた。どれだけ其方の心を抉ったか…、あの頃の自分を殴ってやりたい…。」
 フェルディナンドの顔を上げさせ、それからローゼマインを見る。
「済まない、ローゼマイン。其方の幸せにこんな…、」
「!! 違います!!! 養父様は悪くないっ!!!」
 そのまま頭を下げようとするジルヴェスターに、ローゼマインが肩を掴み止める。その分、2人の距離が近付く。バニラ系の香りのリンシャンを使用している髪が、ジルヴェスターの鼻先近くまで流れた。
「っ!!」
 その途端、ジルヴェスターは突如、嘔吐感に襲われ、口を塞ぎ、ローゼマインから離れる。
「養父様!!?」
 何とかやり過ごそうと堪えるジルヴェスターに、フェルディナンドは体を支え、ローゼマインが更に近付く。

 …悪手である。完璧に。

 「養父様…、もしかして…。」
「ジルヴェスター、其方…。」
 少し落ち着いて、原因が自分の髪の匂いだと気付いたローゼマインとフェルディナンドがその事実に気付く。
「診察させろ。」
「え、いや、」
 医者と同じ事が出来るフェルディナンドが素早く、ジルヴェスターの身体に触れる。女の体では抵抗出来ないし、そもそも暴れる事が出来ないくらいには、気遣ってしまっている。
「…黙っているつもりだったのか。」
 ジルヴェスターが妊娠判定機を持っている事を知っているフェルディナンドは、直ぐに気付いた。この状況で確認していない訳が無い。サッと見渡し、大雑把なジルヴェスターらしく、置かれている魔術具を見付けた。
「ローゼマイン、そこに妊娠判定機がある。取ってくれ。」
「な、何も無い!! 必要無い!!!」
「黙れ。要不用は私が判断する。」
 震えながらも断言するフェルディナンドを止められないし、ローゼマインも止める気は無い。
 ――斯くして、ジルヴェスターの秘密はあっさりとバレた。
「だ、大丈夫だっ!!! 迷惑は掛けないから…、」
「こんな大事な事を1人で背負わないで下さい!!!」