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女体化ジルヴェスターの災難~腐女子の養女・前編~

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かくれんぼの終わり 8



 ジルヴェスターは少し目を閉じて、何かを考えている様に見える。
「落ちぶれる者が出るのは、社会や政治の責任だと言うが、多種多様な能力主義争いはそれを後押ししないモノなのか? 私には寧ろ逆の様に思えるが。」
 …嘗てローゼマインはヴィルフリートの教育に口を出す際に、シャルロッテ達と争わせれば良いと言った。
「仰る通り、競争社会が激しくなる程に、落ちぶれる人間は増えます。それを放置すれば、治安は悪化します。もし統治する側の力が弱れば、戦争になる可能性も十分に有り得ます。
 アウブの身近で例えるなら、次期アウブを巡って、お子様方が争い、蹴り落とされたくない故に、足の引っ張り合いが激化し、内乱が勃発する様なモノでしょうね。」
 ゲオルギーネを思い出すには十分だった様だ。
「規則の無い競争は容易に戦争に結び付くでしょう。しかしだからと言って、競争を排除してしまえば、何時しか無能な王が立ち、側近達が私利私欲に従った傀儡政治を行うかもしれません。その先にあるのは荒れ果てた世。それもまた戦争に繋がるでしょう。
 競争がある方が良いとか、はたまた無い方が良いとか、そんな風には決められません。どちらも良い面と悪い面があります。何を選び、どんな責任を負うか…、結局はその違いでしょう。
 けれどアウブ、もし競争を全て否定するならば、それはローゼマイン様を否定した事に等しいと思います。」
 卑怯な言い方だろう。解っている。ジルヴェスターは幼い頃の確執から、競争を排除したがっていたし、エーレンフェスト防衛でゲオルギーネをその手で打ったが、それがだめ押しになっている。彼女の魔石を大切にしている事から、結局、苦手であっても、嫌いにはなれなかったのだろう。
 …競争する事には忌避感が強い筈だ。それでも彼が現状を受け入れているのは…、
「…それもそうか…。ローゼマインには感謝している。彼女はエーレンフェストに大きな利をもたらしてくれた。否定等、出来ぬな。」
 …人が良すぎて不器用で、却ってそれが伝わりにくい人がいる。ジルヴェスターはそう言う人だと思う。