女体化ジルヴェスターの災難~腐女子の養女・前編~
かくれんぼの終わり 9
確かにローゼマインはエーレンフェストに利をもたらしている。けれど利が大きければ、当然、責任も大きくなる。だからこそ急激な順位の上昇についていけなかったのだ。
ローゼマインは大きな変化をもたらした故の混乱を知らない。平民時代はベンノを抑えていたグスタフが、貴族になってからはジルヴェスターが抑えていたのだ。マルクが、フェルディナンドが調整を図っていたからこそ、グスタフもジルヴェスターも出来た事だったのだろうが、決してそれも完璧じゃない。
だからマインはローゼマインになったし、フェルディナンドはアーレンスバッハに奪われたのだ。
それにより更に包囲が壊れ、現状が生まれた。エーレンフェストは優秀な領主候補生を2人、上位領地と社交が出来る人材を数人失う事になる。
シャルロッテはローゼマインの残したものを守ると言ったが、そう言っている内は無理だろう。そもそも一番の問題を人材の質だと勘違いしている気もする。
もし、それを覆すとしたら私の存在だろう。ならば、私を与えると決めた神々にジルヴェスターは愛されているのかも知れない。
…何にせよ、ローゼマインはジルヴェスターの派閥問題を馬鹿げていると一蹴し、彼が用意した新産業の担当を切り捨て、子育てを間違っていると言い切り、貴族の決め事を学ぼうとせず、1度は了承したヴィルフリートとの婚約を厭だったと告白し…、
彼女とジルヴェスターの価値観、能力、育った環境、性格…、余りに差が有りすぎて、互いに理解出来なかったのだろう。
それでもジルヴェスターはローゼマインを否定する事は無かった。ローゼマインは何も考えず、何度もジルヴェスターを否定した。
如何に子供っぽく見えても、ジルヴェスターは大人で、ローゼマイン、いや、本須麗乃は子供だった。
働いた経験がなければ、分からない事は多い。彼女の迂闊さ、無神経さはそう言う経験不足から来ていると思っている。
まあローゼマインに関してはこれ以上、掘り下げる必要は無い。どうせ彼女と深く知り合う積もりはない。都合の良い時だけ付き合えば良いのだから。
「納得頂けたと言う事で、金銭に関してはここまでにしましょう。続いて年齢制限についてですが…、洗礼後まで引き下げましょう。」
「待て。貴族院に通うまでは自力での圧縮が出来ぬ。」
「出来なくはありませんよ。ヒルデブラント元王子は、マグダレーナ様にご指導の下、自ら圧縮しておられましたから。」
さらりと本編であった事を教える。
「10歳未満、貴族院未通学者に関しては、神殿にて大人の監視の下、教えると言う事にしましょう。勿論、教えるのはアウブですから、勝手に他者へ教えないと言う契約をしてしまえば、親が焦って危険な方向で教える事は無くなると思います。」
「む…、それならまあ…。」
腕を組んでまだ迷いが見られつつも、一応、了承の気配がある。
「私が出す条件は以上です。他にアウブが必要と思う条件があれば、お付け下さい。」
「…敵対関係になる事を禁ずる、と言うのはなくて良いのか?」
「それについては自信がありますから。私にとって、場合によってはアウブでさえ従わせる契約は邪魔にしか思えません。」
程無くして、魔力圧縮方法の話し合いが終わり、そのままジルヴェスターに2つの方法を教える。実施するのはまた後で、となり、盗聴防止が解かれた。
作品名:女体化ジルヴェスターの災難~腐女子の養女・前編~ 作家名:rakq72747