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女体化ジルヴェスターの災難~腐女子の養女・前編~

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生活スタイル



 私の生活は非常にやり易かった。何せ思考するだけで、必要な魔術が使えるのだ。動体視力や運動神経、直感までもが向上した為、姿を隠しながら狩りをしたり、食材が腐らない様に、簡易冷蔵庫となる礎を作り、小屋を丈夫にして、隠蔽術を使い、魔力の気配さえも消した上で、シュツェーリアの盾を張り、自分の意志で消さない限り、維持する様にしていた。それだけの魔力があったのだ。1日中使っても枯渇する事はなく(10/1程度も減らない)、眠れば使用量よりも回復が早い。
 私は生活の基盤が完全に調った事を確信し、次にユルゲンシュミットの時代を幽体離脱術を作成し、探った。結果、本編途中だと分かった。
 本好きの下剋上の中で一番好きだったキャラはジルヴェスターで、その為、私は幽体でストーカーの様に見詰めていた。
(カワイイカワイイカワイイカワイイカワイイカワイイ…………、)
 腐女子だった私にとって、ジルヴェスターは受けだった。そしてフェルディナンドが攻めだ。でもフロレンツィア一筋で、なのにブリュンヒルデを娶り…、この流れも無視は出来ない。きっとジルヴェスターはブリュンヒルデと冬を迎えない。そこも可愛い(この辺りは願望で妄想だと分かっているが)。
 フェルディナンドはそんな男に片思いをしていた、と思いたい。後、私は先代アウブ・エーレンフェストに都合上、悪役になってもらったりもしている。
 とまあ、そんな事は置いとくとして。私はストーカーみたいにジルヴェスターを見ている。原作では分からなかったジルヴェスター視点も結構分かって嬉しい。妄想の更なる糧だ。
 そう妄想だ。妄想だけだ。私は実際にジルヴェスターに逢いたいとか、本編の未来を伝えたいとか思わなかった。物語を変える事が恐かったのだ。
 だってここは現実の世界だ。作り物じゃない。無闇矢鱈に掻き回しても、責任なんて取れない。これが理由の半分。
 もう半分はジルヴェスターを含む、ユルゲンシュミットの人間は物語の登場人物と言う見方が捨てきれない処にあった。自分の好きに変えれるのでは無いかと言う、悪魔の囁き通りになってしまうのは、好きなった数多くの漫画やラノベにゲームに、それと同じだけ飽きてきた事実を思い起こさせる。
 折角生まれ変わったのに、この世界に飽きてしまえば、自ら死を選びそうだ。そうなるのが怖い。
 矛盾した2つの気持ち。けれど私の偽りない理由だった。幾つか異世界転生や成り変わり転生を読んだ事による、知識の所持に影響されているのかも知れないけれど。
(でもここが物語の世界なら…、私も何処かの誰かが考えた作り物かも知れないな。余り気分は良くないけど…、あ、そう言えば!)
 何時だったか、平行世界や異世界は人の思考の数だけ存在する、と言う説を聞いた事がある。
 私達が存在するのは、何処かの異世界の誰かが考えた物語のお陰かもしれなくて、その何処かの誰かを、私達が考えているかも知れない。そして想像された物語の進行の可能性の数だけ、平行世界が生まれる。
 もしそれが正しければ、相互で支え合っていることになる。誰かに強制されているのではなく、自分達が切り開いているのだと信じる事も出来る。ならばそう信じよう。
 でも、物語には関わらない。もしかすれば信じる事を否定されるかも知れないし、肯定されたとしても、その結末が原作より良いモノと思えないのかも知れないのだから。