神殿長ジルヴェスター(3)
約束の日。馬車が神殿前に付いたとギルが知らせて来た。フランは出迎えている様だ。
来客室にて挨拶を交わし、席を勧め、ギルを退出させて、フランを残した。
マインが先日の雰囲気とは違っている。ベンノから教えられたのだろうか。固まっているルッツとは違い、その様子は様になっている。
「フラン、希望を聞きなさい。」
何処まで出来るのか、とフランが飲み物を準備する際に、幾つかを用意させる形を取らせた。
来客に飲み物を出す時、既に好みを熟知している場合を除けば、それが本来の形だ。
しかし先日のマインの様子と家族を確認し、選ばせるのは却って手間にしかならないだろうと、私がお茶を指定した。
つまり先日とは違う流れだ。マインはどうするのか、と観察する。
「マイン様、どの様なお飲み物がお好みでしょうか?」
幾つかの用意されたお茶の中から、マインは選んだ。
「これを頂きたいわ。」
…上手い。あれならお茶の名前を知っているか、知らなかったかを判別出来ない。中々機転が利く。
「ミルクはどうされますか?」
農家や牛の種類を尋ねるフランになんと逆に聞き返した。
「貴方はどんなミルクがこのお茶に一番良く合うと思いますか?」
当然、これは個人の好みに左右される為、用意した者を信用する意味があり、これも知らない事をボヤかす良い遣り方である。
僅かな日程で身に付く事では無い。頭の回転が相当であるとこの短いやり取りで、再確認出来た。
「さてベンノ。本題に入らせて貰おう。まずマイン公房の事だが、一体何を作っている処なのだ?」
「マイン公房はマイン様がお考えになる物を作る公房で御座います。目で見た方が早いかと思いますので、お持ちいたしました。――マルク。」
「心得ました。」
呼ばれた従者が応える。
「髪飾り、リンシャン、そして植物紙でございます。」
広げられた物に眼を見張る。
「これらは全てマイン様がお考えになり、当店の見習いがお作りした物でございます。髪飾りとリンシャンに付きましては、現在、当店において全て権利を買っております。
マイン公房は主に植物紙関連を作る事になるでしょう。」
「ふむ…。」
私が一番気になるのは植物紙だ。どの様な手法で作り出したのか…。
作品名:神殿長ジルヴェスター(3) 作家名:rakq72747