神殿長ジルヴェスター(3)
マインは才能も異常だが、社会経験の低さから来る警戒心のなさも際立ち(能力が高いから目立つのかもしれないが)、何よりも本に賭ける執着も異様で異常だ。
そのマインが身食いだと完全に解った時、いや、確信に似た疑いを持ち始めた時から死んだリーゼを思い出して、半分身内の様に思い始めた。生き延びるには貴族の力が必要で、だがそれにはマインの場合、今の家族から引き離される為、早死にを選んだマインを。
そんな俺をオットーは何を思ったか、マインが俺の水の女神だって、言い触らしやがった…!! そのせいで……っ!!
…出来る限り力になってやろうと思っていた矢先、あんの阿呆は自分から貴族に近付き、巫女見習いの話を掴んで来やがった…っ!!
マインにどう言う話になったのかを全て聞き出し、公房の話も含めて、これからの対応を全部説明した。
俺と話がしたいと言われたのは、気が重すぎるが幸いだった。マインと言う存在の価値は、魔力以外でも大きい事を示す事が出来る。
会合に向けて準備をしながら、考えた事はルッツを連れて行った方が良いかどうか。通常ならば貴族の前に出せない子供は置いていくべきだ。しかしルッツは既に神殿長の前に出ているし、マインの虚弱さのフォローの為には適任となる人物だ。
…それに平民の貧民に蔑む事もせず、無礼レベルな事を言っても、怒りもせず、最後まで話を聞き、此方に譲るくらいの事が出来る、貴族には珍しいくらいの、物分かりが良いお人だ。
どうせルッツとマインの糸を切る気は無い。ならば一応とは言え、マインを庇護するお貴族様に関係者と認識して貰った方が良いだろう。
…こうして俺は会合に臨んだのだが。
作品名:神殿長ジルヴェスター(3) 作家名:rakq72747