神殿長ジルヴェスター(4)
孤児院長室に行くと、マインがフランと木札を見ながら話していた。恐らく必要な教育を行っているのだろう。…ん? 何故恐らくなのか? 私が用意した訳では無いからな。きっとフランが準備したのだろう。うん、優秀な側仕えであろう。
「マイン様、神殿長がいらっしゃいました。」
「ご足労頂き、ありがとう存じます、神殿長。ギル、お帰りなさい。」
「うむ、早速フランに扱かれている様だな。ところでデリアは?」
「私が神殿の事について、説明を受けていたのですが、その様子を見たデリアが得意気に常識知らずだとエグモンド様にご報告申し上げなくてはと、出ていかれました。」
「ふむ、予想内だな。デリアを召し上げぬ事を勧めるが、其方は側仕えとして遣いたいのか?」
マインはふるふると首を振った。
「いいえ、側仕えとしてではなく、青色の方々のお心を安全に宥める為に置きたいのです。」
「ほう?」
マインに続けさせる。
「私が他の方に悪感情を抱かれているだろう事は分かりますが、余計な諍いを招きたくないので、この様に離れた位置に居るのは有り難いですが、それでも感情のままに走られた際には、非常に困る事になるのは避けられなさそうですもの。
デリアは精々私の悪口を言うだけですから困る事はありませんし、側に置いておけば、エグモンド様とやらの溜飲も下がるでしょう。」
「聞かされている間に悪感情を募らせる可能性もあるのでは無いか?」
ジトリ、と見遣ってやる。
「それで募る悪感情であれば、私が居る限り、どう足掻いても募らせて行くでしょう。デリアを返しても同じ事ですわ。それどころかより厄介な事を仕掛けられても困ります。」
何も考えて居ない訳では無いか。しかし出来れば苦労はさせたくないのだが。
「ご心配をお掛けして申し訳ございません。何かあればまたご相談させて頂きますわ。」
「…分かった。絶対だぞ? …フランもギルも目を離すでないぞ?」
「「畏まりました。」」
私は溜め息を1つ吐いて、一旦引く事にした。
作品名:神殿長ジルヴェスター(4) 作家名:rakq72747