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神殿長ジルヴェスター(4)

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マイン視点



 私が孤児院長室に着いたのは、通常より遅かったろう。フランもギルも良く私のペースに合わせられるモノだと感心する。まだまだルッツに叶う事は無いけど、そう遠くない内に私の体調を管理出来る様になるだろう。
 孤児院長室の執務机には木札が幾つもある。
「フラン、あちらは?」
 そう尋ねた時だった。
「貴方がマイン? 平民のクセに青色を纏う身の程知らずの。」
 ノックもせずにいきなり入って来た少女が言った。
「身の程知らずはお前だろ。灰色が青色にそんな口を聞いて良いのかよ。」
「ギル、彼女に合わせて身を落とさぬ様に。マイン様のお耳汚しになります。」
 私が答える前にギルが文句を言い、フランがギルを嗜める。…相手を挑発してるの間違いかも知れないけど。
「貴方も仕事に戻って下さい、デリア。」
 少女ーデリアと言うらしいーはフランの言葉を鼻で嗤う。
「あら、これが私の仕事なの。」
「どーゆー意味ですかー? 側仕えの意味を忘れましたかー? バッカじゃないですか?」
 慇懃なギルにムッとしたデリアは大きな声で宣言する。
「私、神殿の常識も分からない平民が何を仕出かすのか、全部見張って報告しなさいって主のエグモンド様に命令されてるの。私がこんなのに仕える訳無いじゃない、バッカじゃないの。」
 思わず呆気に取られてしまった。
「…フラン、失礼ながら此方のアホ、いえ、頭の愉快な娘を私の側仕えにしなさいと言う
命令なのかしら? エグモンド様と言う青色神官の。」
 もしかしたら仕事の出来ない(偏見)デリアを押し付けたのだろうか、嫌がらせで。
「その様な事で悩む必要はございません。ギル、急ぎ神殿長の元へ行き、対応をお伺いしてください。」
「ちょっとちょっと、何ボソボソ話してるのかしら。嫌だわ。これだから淑女の自覚が無い平民は。」
「ああ、ギル。『デリアを召し上げても宜しいでしょうか?』と伺って頂戴。」
「「えっ!?」」
「ちょっと何無視してるのよ!」
 何かゴチャゴチャなってるけど気にしない。嫌がらせでもデリアなら大した事は出来なさそうだし、それなら周りに置いていた方がやり易い。下手に神殿長に庇われて、余計な恨みを買って、より厄介な手を使われても困る。私はギルを見送った。
作品名:神殿長ジルヴェスター(4) 作家名:rakq72747