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神殿長ジルヴェスター(5)

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 子供達が集まる食堂に着いた。腕の中でマインが周囲を見渡している。
「神殿長…、ここの掃除はどうされているのですか?」
「適当にしておるのでは無いか? 私が住んでいる訳では無いからな。一々細かい事は言わぬ。」
 小声で聞いて来たので、合わせて応える。…何故、不服そうな顔をしておるのだ? 
「洗礼式前の子供はいないのですか?」
「確か地階にいる筈だ。上がって来れぬからな。彼等への食事は此処にいる女子の誰かが運ぶ。」
 男子棟と女子棟の事も合わせて説明すると、マインは何やら眉間に皺を寄せる。…フェルディナンドみたいな顔を辞めろ。折角の可愛さが台無しだぞ。
 …ああ、フェルディナンドも綺麗な顔が台無しになるのだ。やむを得ない理由があるが、実を言えば結構惜しいと思うのだ。少女と見間違う昔は特に強かったな。
 …そう言えば弟ではなく妹ではと初対面では言ってしまった様な。その後の記憶は無い。まあ子供だったしな。…しかし何やら怖かった様な…。まあ良いか。
「神殿長、私、地階にも行ってみたいのですが。」
「ん? ならばこの中の誰かに案内させるか。いや、側仕えのデリアにさせるか? 女子棟に私やアルノー達が行く訳には行かぬからな。」
「恐れながらマイン様、お勧めは出来ません。地階は青色の方々に御見せできる状況ではございません。」
「私もフランに賛成でございます。御祓をさせずにお会いになる等、御不快が大きすぎると存じます。」
 フランとアルノーが難しい顔になっている。マインは顔を青くさせている。
「いいえ、気になります。でも…、そうですね、倒れる可能性もあるので、出来たら力のある、成人に近い女性にお頼みしたいわ。」
 こうしてマインは名乗りを上げた者と地階に向かったのだ。

 気になって待っていた我々の元に土気色のマインが詰め寄るのは後――、

 案内した者に手を引かれながら、マインは此方を睨んでくる。だが正直、そんな事はどうでも良かった。
「マイン!! どうしたのだ!!? 青を通り越してるぞっ!!」
 マインの土気色の顔に声を上げると、マインの体から魔力が立ち上がってくる。案内していた者が後ずさって尻餅を着いた。
「!! 駄目だマインっ!! フラン達を威圧するではないっ!!」
 正面側に居た為に視線を受けてしまった、耐性の無い2人が膝を着いている。私はマインの視線を真正面から受ける位置に、2人をマインの視線から外す位置に動く。
 それでもマインはフラン達の様子に気付いたらしく、慌てて込み上げる魔力を押さえに掛かった。
 …助かった。一瞬であったが、合わさった視線から受けた威圧で、心臓に痛みが走ったのだ。…ここまで魔力が強いとは。
 興奮したせいで、気を失ったマインを私は抱えて、急ぎ孤児院を後にした。
作品名:神殿長ジルヴェスター(5) 作家名:rakq72747