神殿長ジルヴェスター(10)
マインが帰宅すると、ギルベルタ商会のベンノに手紙を書き出した。マイン工房が領主に目を掛けられている事、近い内に面会の予定となるだろう事を知らせる為に。
…無論、マインの愛妾云々は割愛しておく。必要であれば、マインの口から伝わるだろう。
出すのは明日で良いか…。そう考えていた時だ。ノックが響く。
「失礼します、神殿長。領主様が寝具を持って来られました。」
「!!?」
今日の朝だぞ!! 一体どれだけ急いだのだ!?
寝具を孤児院長室へ運ぶ。業者の人間が素早く設置していく。金銭のやり取りは既に済んでいるのか、仕事が終わった彼等は、早々に馬車で引き揚げていった。
「何か言いたい事でもあるのか?」
まさかまた、泊まって行くとは言わぬよな?
「ジルヴェスター、其方、私が言った事を忘れたのか? 必要以上にマインに近付くな、と言った筈だが。
…何故、妻同然な愛妾約束に繋がるのだ?」
!! 何故、もう知っているのだっ!!??
本日2度の訪問になっているフェルディナンドに、戦々恐々として尋ねたら、とんでもない返しが待っていた…。
「…もしかして入浴も排泄も見張られているのか? 私は。」
「さあな。」
どうなっているのだ!!? 本当に!! …よそう。規格外な弟の手段等、考えるだけ無駄だ。
…思考放棄するものではないと、後悔するのはまだ先の話だった…。
因みにフェルディナンドは又しても泊まって行った…。癒しを掛けられないくらい、怒っていた様だ…。マインが来ない日で良かった…。
作品名:神殿長ジルヴェスター(10) 作家名:rakq72747