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神殿長ジルヴェスター(10)

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 冬が深まる。マインは泊まり込み、雪の浅い間にベンノとフェルディナンドが顔合わせして、孤児院は動き…、とまあそれなりに忙しい。
 そして、冬と言えば…、
「ジルヴェスター様、冬の主が出ました。討伐のご準備を。」
 カルステッドの改まった言葉がオルドナンツから流れる。
「了解した。」
 驚いているマインに準備をする様に命じると、私も直ぐに行動した。

 騎士団と合流した。
「何故だ。」
 思わず挨拶無しにカルステッドに聞く。
「…押さえられなかったのです。」
「たまには良かろう。運動不足なのだ。」
 戦う前から疲れた顔で答えるカルステッドの横で堂々と佇むアウブ。エックハルト、何故、楽しそうなのだ。アウブを守る護衛だろう、何故困らぬ。私は聞いても無駄に終わる予感がして、溜め息を呑み込んだ。
「ところで…、抱き抱えておられるのは…、」
 カルステッドの視線がマインに映る。
「儀式を行う青色巫女見習いだ。マイン、騎士団長のカルステッドだ。このままで良いから挨拶を。」
 どうせ直ぐに騎獣に乗せるからな、下ろすのが面倒だ。
「カルステッド様、マインと申します。宜しくお願い致します。」
 カルステッドの目が検分の色を帯びた。
「こちらこそ宜しく。…ジルヴェスター様、アウブの視線が痛くないですか?」
 声が潜められた後半に、私はふっと笑う。
「勘違いであろう、騎士団員は何も感じておらぬ。」
 そうとも、貴族が集まる討伐隊に参加して、感情移入している訳がない。…視線で痛むのは、感情隠蔽の必要が無い時だけだ。カルステッドは私に対するフェルディナンドの執着に気付いているからな、どうしても敏感になるのだろう。
「マイン、今日が其方の初舞台だ。頑張りなさい。」
「はい、精一杯やらせて頂きます。」
 フェルディナンドがマインに声を掛け、マインが若干私にしがみつく力を強めながらも、表面上は何とか取り繕っている。
「兄上、マインは兄上の騎獣に乗せるのですよね、なら側仕えは私が預かりましょう。」
 …本来、アウブであるフェルディナンドに私は礼を示さなければならない。だが取り繕う必要が無ければ、普段の言葉を使う。
 今は正式な場では無い。だが取り繕う必要が無い訳では無い。アウブへの態度が無難なのだが…。
「…任せる。」
 フェルディナンドは兄弟としての態度を選んだ。ならば私はそれに従うだけだ。

 成長したトロンベが暴れている。自分の知っているトロンベと違うと、マインは驚いている。私は安全と思う位置にマインを下ろす。次いでフェルディナンドがフランを下ろす。そしてカルステッドが神具をフランに返す(預かる様、命じた)。
「騎士団が刈り終わってからが其方の出番だ。それまではここで隠れている様に。
 根こそぎ力を奪われた土地を癒すのが其方の仕事だ、良いな。」
「はい。」
 マインに目線を合わせ、言い聞かす。その近くでカルステッドが騎士団員に命じた。
「ダームエル、シキコーザ、巫女見習いを護衛せよ。」
「「はっ!」」

 何!? シキコーザ、だと? 冗談ではない!! 
 
 シキコーザは元・青色でエグモンドと同類な類友だ(ダームエルについては良く知らない)。しかし騎士団はカルステッドの領域だ。文句を言うのはカルステッドを信用してないみたいで嫌なのだが、しかし…。
「…私から追加だ。マインは平民だが、豊富な魔力を持つ故に、青色を纏う事を許可した特別な存在だ。必ず心身共に守り抜け。」
 まるで私の葛藤が伝わるかの様に、フェルディナンドが命じる。…何か裏がありそうな気もするが…。まあ内心はどうあれ、マインを守ってくれれば良い。
 私はマインと目線を合わせる為に屈んでいた姿勢から立ち上がった。
「きゃっ!?」
 暴れるトロンベによって、地面が揺れる。マインが私の足にしがみついた。
「申し訳ありません。」
「大丈夫か?」
 直ぐに離れたが、顔色が悪い。確認すると、気丈にも頷き、私達を見渡す。
「神殿長、領主様、騎士団の皆様、ご武運をお祈り申し上げます。ライデンシャフトの眷属である武勇の神アングリーフの御加護があります様に。」

 え? 

 与えていた魔術具の指輪から、祝福の光が降り注ぐ。この場にいる全員に。…かなり大規模だ。私もフェルディナンドも息を呑んだ。
「…巫女見習いからの祝福だ、行くぞ。」
 逸早く立ち直り、指示を出すのは流石だ。私はマインに出番までは大人しくしている様に言うと、トロンベに向かった。

 弱まったトロンベ。討伐は終わる。と、その時。
「神殿長!!」
 甲高い悲鳴に似た呼び声に、私は下を見る。フランがマインを抱き抱えている。その少し離れた場所で向かい合う、2人の騎士。
「マイン!!」
 何かが起こっている事を把握した私は、弱り切ったトロンベは他に任せ、騎獣を操り、下へ向かった。
 マインとフランの前に降り立ち、2人の騎士を見る。振り向いている、つまりはマイン達に背中を向けていたのはダームエル。そして正面を向いていたのはシキコーザだ。シキコーザの手にはシュタープの剣がある。
「何があった? 答えよ、ダームエル、シキコーザ。」
「そ、それが…、」
「身分を弁えぬ者達に教育しようとしたまでです。」
 言い淀んだダームエルに対し、シキコーザが流れる様に言った。
「…続けよ。」
 促せば何を勘違いしたのやら、身分を笠に着た行動を誇らしげに語っている。8割はマインへの、2割はダームエルへの非難だった。
 青色を纏う身の程知らずで愚か者な平民と、それに馴れ合う下級貴族。要は魔力持ちのマインに対する嫉妬と、家格に劣る筈のダームエルの方が魔力量が多いらしい事(私から見れば無いに等しい差だが)に対する嫉妬を纏めてぶつけたと言う事だ。
「ダームエル、其方の番だ。」
 言い淀んだダームエルの答えを促す。
「はっ、」
 ダームエルが話し出す。
「巫女見習いに騎士団の戦いについて、解説をしておりました処、シキコーザが巫女見習いに平民は貴族に脅えていろ、と言う内容の暴言を…、抑えようとしたのですが、シュタープを出し、巫女見習いを傷付けようとしたので、私が前に出たのです。」
「フラン。」
 マインを守っているのだろう、フランを見る。その後ろには戦いが終わった騎士団と、それを率いるカルステッドとフェルディナンドが既に待機している。
「流れは仰られた通りです。私はマイン様を傷付けない為に抱えました。神具を手放して、」
「良い判断だ。」
 フランが最期まで言わぬ内に、フェルディナンドが前に出た。フランの肩を叩き、褒める。フランにとって思いもよらなかったろう、領主からの褒め言葉等。
「シキコーザ、私は巫女見習いを守れと命じた筈だが?」
 フェルディナンドがその場を仕切り出した為、私は後ろに下がると、フランからマインを受け取る。
「怪我は無い様だな。」
「ダームエル様とフランが守って下さいましたから。」
 小声で短く言葉を交わすと、フェルディナンドの方に向き直る。私に背中を向ける形になったフェルディナンドから怒りを感じる。
 こう言う態度を嫌うからな、フェルディナンドは。当たり前の反応だ。
「し、しかし、それは平民で、神殿の秩序を乱す、」
「黙れ。」