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神殿長ジルヴェスター(10)

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 冬が深まる。私は神殿に泊まり込んでいる。翌日には用意されていたびっくりの寝具にお世話になっている。
 雪の浅い間に、ベンノさんと領主様が顔合わせしたり、かなり忙しい。そして。
「ジルヴェスター様、冬の主が出ました。討伐のご準備を。」
 何この鳥。
「了解した。」
 驚いている私に討伐の後の儀式の準備をする様に、神殿長が言った。

 騎士団と合流した。
「何故だ。」
 領主様? 
「…押さえられなかったのです。」
「たまには良かろう。運動不足なのだ。」
 えっと、戦うのだろうか。細身の領主様が? 
「ところで…、抱き抱えておられるのは…、」
 何だか怪訝そう。まあお貴族様が平民をだっこするなんてまず無いよね。神殿長はもう癖になってるけど。
「儀式を行う青色巫女見習いだ。マイン、騎士団長のカルステッドだ。このままで良いから挨拶を。」
「カルステッド様、マインと申します。宜しくお願い致します。」
 言われた通り、そのまま挨拶すると、カルステッド様の目が検分の色を帯びた。
「こちらこそ宜しく。………、」
 あ、何か小声で何か言ってる。神殿長も何か返してる。何だろ? 
「マイン、今日が其方の初舞台だ。頑張りなさい。」
「はい、精一杯やらせて頂きます。」
 あ、もしかせずとも牽制されてますよね、これ。何とか顔には出さず、返事をしたけど、体には力が入ってる。
「兄上、マインは兄上の騎獣に乗せるのですよね、なら側仕えは私が預かりましょう。」
 のうおおんっ!!!! フラン人質っ!! …言い過ぎかな。そんな酷い事はしないよね。
「…任せる。」
 うん、神殿長もそう言ってるし。
 
 あれがトロンベ!? 自分の知っているトロンベとの違いに私は顔を青くする。そりゃルッツが栽培に反対する筈だよ。
 私は少し離れた位置に下ろされた。次いで領主様がフランを、カルステッド様が神具を下りたフランに渡した。
「騎士団が刈り終わってからが其方の出番だ。それまではここで隠れている様に。
 根こそぎ力を奪われた土地を癒すのが其方の仕事だ、良いな。」
「はい。」
「ダームエル、シキコーザ、巫女見習いを護衛せよ。」
 カルステッド様がそう命じて、
「「はっ!」」
 彼等の返事の後、領主様が言った。
「…私から追加だ。マインは平民だが、豊富な魔力を持つ故に、青色を纏う事を許可した特別な存在だ。必ず心身共に守り抜け。」
 私が平民って言う必要あったの? 何か言わなかった良かった気がするけど。そうじゃ無かったのかな。
「きゃっ!?」
 暴れるトロンベによって、地面が揺れる。立ち上がった神殿長の足に思わずしがみついて、ハッとする。…領主様と目が合っちゃったんだけど。
「申し訳ありません。」
「大丈夫か?」
 心配そうな声。今はそれどころじゃない! あんなのと戦うんだよっ!! 私は思わず離れた後で言った。
「神殿長、領主様、騎士団の皆様、ご武運をお祈り申し上げます。ライデンシャフトの眷属である武勇の神アングリーフの御加護があります様に。」

 え? 

 神殿長が貸してくれた魔術具の指輪から、光が溢れる。慌てて止めたけど、何コレ?
「…巫女見習いからの祝福だ、行くぞ。」
 領主様がそう言って、神殿長が大人しくしておく様に言い残し、騎士団は戦いの場へ向かった。

 戦いが始まり、号令が響いている。黒い武器を皆が持っている。あれは何だろう? 
「意味がない祝福だったな。何てバカな事をするんだ。」
 苛立った様な、蔑む声が私に向けられた。
「シキコーザ、何を言ってるんです!?」
 それを咎める声。どちらもまだ若そうだ。仁王立ちがシキコーザで、押さえているのがダームエルか。
「只でさえ魔力が少なくて足りない状況なんだ、騎士団への祝福に力を使うなんて愚か者と呼ばず、何と呼ぶのだ?」
 シキコーザはダームエル様を払い除ける様に、私を指差す。
「確かに祝福が無くとも、トロンベ如きに負ける騎士団ではありませんが、祝福があるのと無いのでは大違いでしょう、今回は人数だって少ないのですよ。」
 祝福しようとした訳じゃない。武運を祈ったら勝手に祝福になったのだ。指輪が無ければ何も起こらなかった筈だ。…神殿長も驚いてたし。
 それに魔力はまだタップリ余ってる。溢れ出した時に慌てて止めたからだ。
 ただここでお貴族様に反論するのは良く無いだろう。私は素直に謝る事にした。
「ご不快な思いをさせてしまったのでしたら、申し訳ございません。以後、気を付けます。」
 シキコーザから返ったのは、鼻息だけだった。そんな場をフォローしようとしたのか、ダームエル様が私に話す。
「シキコーザの言う事は気にしなくて良い。人数が少ない分、魔力の上乗せをしてくれる祝福は有り難いんだ。…ほら、ご覧。」
 指し示された上空では、黒い矢が沢山飛び交っている。トロンベにぶつかって消えていく。ぶつかる瞬間に微妙に勢いが削がれ、その一瞬を狙い定めたのだろう、一撃で枝を落としていく。
 …凄いよ、神殿長も領主様も!!
「あれがトロンベとの戦い方なんだ。騎士団の戦いを見れるなんて滅多に無いし、領主様とジルヴェスター様の共闘なんてそれ以上だ、折角だから良く見ておくんだ。巫女見習いも側仕えも。」
 説明しているダームエル様の口調も熱っぽい。
「「畏れ入ります。」」
 私とフランの礼が重なる。
「黒色の武器は闇の御加護を賜った武器で、込めた魔力の倍、相手から奪う事が出来るんだ。トロンベは普通の魔力攻撃では吸収して力を回復してしまうから、必須の武器となる。」
 …ホントに凄いよ。まさか細身の領主様が戦えると思わなかった。それに神殿長との連携が凄い。お互いに合わせてるのだろう、息がピッタリだ。
「領主様の放つ黒い矢が幾つも分裂しているだろう? 魔力が多くなければ、あんな事は出来ない。それを何度も撃つなんて、見事だろう?
 普通はジルヴェスター様とカルステッド様が指揮を取りながら、交代で回復薬も飲みながら行って、枝払いを他がするんだが、今回は領主様がいるからな、回復藥を使わず、1人で矢を撃つなんて、離れ業が出来るんだ。
 それにジルヴェスター様とカルステッド様の2人が枝払いに参加するから、ずっと的確に、速く枝払いが出来る。特にジルヴェスター様の行動が凄い。」
 確かに、と私は思う。他の騎士達が参加し出したから分かるが、先に矢で何回も穿ち、ある程度弱らせた処で枝払いに入り、枝が少なくなって来たところで、一斉攻撃で幹を倒すのだろう。しかしながら今回は領主様が参加した事で、魔力が多く、指揮も取れる遠距離戦の2人が中・近距離戦に参加出来た。魔力の多い2人は、弱る前からでも枝を落とす攻撃力があるらしい。
 矢を放たれ、その軌道を追って枝払いを掛けるカルステッド様は矢が当たり、少し怯んだトロンベの隙を見逃さない。矢を放つ前に動き出す神殿長に添って、矢が後ろから追い越していく。お互いの動きを邪魔する事は無く、カルステッド様以上にタイムロスが無い為、時間が経つ程、落とす枝数に差が出る。
 トロンベが弱って行くのと、枝が少なくなるのに、時間差が無い。多分、このパーティーは通常よりも速く、トロンベを倒し終わるのだろう。