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神殿長ジルヴェスター(14)

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ハルトムート視点



 アウブと2人だけ。更には盗聴防止。私は切り出した。
「ローゼマイン様は平民なのですか?」
「ハルトムート、他言無用だ。」
 厳しい表情でアウブは先を続ける事を望まれた。私は集めた情報を繋げ、お話した。
「其方の推測はほぼ正しい。…確かにローゼマインはマインと言う名の平民だった。
 だがエグモンドが他領の貴族を連れて来たと言うのは少し違う。」
 その言い方が気になった。
「アーレンスバッハを警戒されてましたね。しかし結局アウブの執務室に侵入した人間は不明のままですから、警戒も充分ではありません。
 …エグモンド自身や近い関係者には不可能と言う事までしか解っていないませんし…。」 
 黒幕がいる、と言う噂はあった。だが身内を疑う行為はまだしづらいのだろうと思っていたし、思われていた筈。
「少し違うと言うお言葉は…、黒幕がいる、と言う意味で宜しいでしょうか。」
「ああ、それで良い。」
 それを敢えて匂わせる理由…。もしや…、
「ではその黒幕は…、フェルディナンド様、ですか?」
 一瞬、目を見開いたアウブに正解が教えられる。
「…驚いたな…、まさかこれだけで当てて来るとは思わなかった。」
「恐れ入ります。しかし如何様な手段を用いたのでしょう?」
「分からぬ。」
 素の声が出た。
「は?」
「全く持って分からぬのだ。マインの事だけでなく、兄上一家の暗殺方法もな。」
 ゲオルグ様の心中事件については、フェルディナンド様がアウブを救う為に仕組んだのでは無いかとは言われていたが、まさかこんなあっさりと認めるなんて…。
「薄々は解っていましたが…、衝撃がありますね…。」
 私は溜め息を吐くアウブを見つめる。
「フェルディナンドは…、紛れもなく天才なのだと思う。多数の意味で、な。
 そして私は只の凡才だ。フェルディナンドの様な策は立てられぬ。せめて兄上の様に優秀であれば、まだ立ち向かえたのかも知れぬが…、いや、言い訳だな。」
 自嘲するアウブに、私は確かに能力の差はありそうだと認める。自身を知る事は悪い事では無いのだが…。
「だから私は足りぬ部分を補える人材が欲しい。ローゼマインを幸せにするに当たって、優秀で、決してフェルディナンドに靡かぬ人材を必要としているのだ。」
 後ろ向きな評価を下さざる得ないのは、偉大だったフェルディナンド様と比べてしまうからだろう。そう考える私にとって、突然の言葉だった。この先が見えない人間では無いし、ローゼマイン様の幸せと言われれば、見えない振りも出来ない。
「ハルトムート、力を貸してくれぬか?」
 否、と言えるだろうか。

 「ローゼマインを、マインに戻す。」

 ローゼマイン様を至上とする私が。決断は早かった。私は跪き、アウブの手を乞うた。