神殿長ジルヴェスター(14)
「偽物が受け継げない理由と本物の在処を探って欲しいとの依頼を受けたお養父様が、メスティオノーラの書を手にしたのです。そして私達は真実を知る事になりました。」
うへぇっ!!
「私達はその叡知を王族の為に使って頂く代わり、エーレンフェストの為に使用する事と、時として便宜を図る事を約束しました。王族にメスティオノーラの書を持てる者が生まれるまでは、ですが。」
「今はまだ…?」
「ええ、おりません。派閥を混乱させない為、次期ツェントのお子に期待している状態ですが。」
ラオブルート様は目を細めて私を見る。
「現状の問題は恐らくツェントの先が長く無い事です。現・ツェントが高みに昇れば、偽物とは言え、グルトリスハイトが消えてしまいます。そうなれば王族を王族足らしめる事が出来なくなります。しかし協力者足るフェルディナンド様が居られない以上、隠蔽も難しい…、そこで。
ローゼマイン様にメスティオノーラの書を得て頂きたいのです。」
うわあ…、大変な事になっちゃったなあ。これ依頼じゃなくて命令だ、って事に漸く私は気付いたのだ。
取り敢えず私は条件を出した。メスティオノーラの書を手にしたら(手に出来るか分からないけど)、それはアウブ・エーレンフェストに報告させてもらい、次の話し合いにはジルヴェスター様に同席してもらうと。
秘密が広がる事に懸念を示されたけど、私が養父様と違い、自分の判断に自信が持てない事と、故に王族に間違った助言をしてしまいかねない事を話すと、渋々承諾されたのだった。
貴族院6年生。現在、シュタープを手にした私の前にはエアヴェルミーン様。
「縮んだな、フェルディナンド。」
開口一番に言われたのはコレ。どうやら神様は魔力で人を判断しているらしく、姿形では大きさぐらいしか、違いが分からないらしい。…私の魔力は養父様に染められているからね。
違うと人違いを指摘すると、過去を読み取られ、マインの名前で呼ばれた。
「ふむ、確かにフェルディナンドは高みに昇っている様だな。ならば良かろう。」
否定したい様な事を言われたけれど、何か言い返す前に私は激痛に襲われた。
「頼む、アーンヴァックス!」
その掛け声の直後に。
魔力塊がなくなっても、私の成長は人より遅い。魔力が強過ぎて、成長にエネルギーが回せない状況だったらしいのだが、それを一気に成長させられたのだ。どうやら器が小さ過ぎると問題らしい。
そして私はメスティオノーラの書を手に入れた。
…一番出来たてほやほやの知識は養父様の人生だったよ。思考が停まるくらいに気持ち悪くて、吐くくらいに悔しかった。
ジルヴェスター様のバカァッ!!!!!!
作品名:神殿長ジルヴェスター(14) 作家名:rakq72747