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神殿長ジルヴェスター(15)

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ジルヴェスター視点



 ローゼマインが行方不明になった。図書室で。
「何だソレ!!?」
 唯一の次期領主候補が行方不明。外聞を考えれば、余り大きく騒ぐ訳には行かないのだろう。
 だが行方不明になった瞬間は誰も見ていないが(図書室の中で魔術具のシュミルが一緒だった為、若干、別行動していたらしい)、他領の人間も利用していた為、既に知っている処も多い。
 私はそう建前を用意して(ハルトムート作戦)、貴族院へ向かった。
 図書室でソランジュとヒルシュールに話を聞いていた処、1人の騎士が入室した。
「おや? アウブ・エーレンフェスト?」
 振り返った私に、騎士は初対面の挨拶をする。…中央騎士団長か。
「ローゼマイン様の事で此方に…。」
「ひめさま、じじさまのところ。」
 ソランジュの言葉に被さるシュミルの声。直に見るのは初めてだが、このシュミルは嘘を付けないのか、お陰で行方不明が隠せない様だ。…と言うかじじさまとは何だ? 
「ほう…、礼儀を守るとこうなるか…。」
 図書室の奥へと視線を向けるラオブルート様が呟く。
「何かご存知で?」
 此方の質問にラオブルート様は目を細める。
「ここでお話出来るのも、リーベスクヒルフェの導きかも知れませんな。少しお時間を頂いても宜しいですかな。」
「構いませんが…。」
「では直ぐ様準備をして参ります。」
 鐘1つ~2つの間を空けて、また話をすることになった。

 図書室の奥に連れられ、盗聴防止の魔術具を渡され、カルステッドに背中を向けさせ、話が行われた。
「ローゼマイン様には現在、グルトリスハイトを取得して頂いております。」
「は???」
 ラオブルート様の発言に目を剥く。…聞いておらぬぞ、ローゼマイン!! 契約魔術!!? 何を勝手にしておるのだっ!! 水面下で薦めているマイン帰化計画がぁっ!!!!
 …フェルディナンドよ、お兄ちゃんはもう理解不能だ。其方がどうやって貴族院に編入制度を設けさせたのか疑問だったが、王族に貸しを作っていたとはぁっ!!!!
「フェルディナンド様がグルトリスハイトを会得した時は上空から魔方陣に魔力を叩き付けたらしいのですが、エアヴェルミーン様より見れば、かなり無礼な行動だったらしく、正しい行き方をご教授されたとか。ローゼマイン様にはその方法をご使用して頂いております。フェルディナンド様はご帰還さえも本来の道を使わず、上空をお選びになったそうで…。
 ローゼマイン様が行方不明になってしまったのは、本来の道を辿る事で時間の擦れが出ているのではないかと愚考します。」
「左様でございますか。」
 それ以外何が言えようか。…ローゼマインめ、戻ったら説教してくれるっ!!
 なし崩し的に契約魔術に了承せざる得ない私は、自分が説教される事になるとは夢にも思わなかった。
 …まさかフェルディナンドや兄上との関係を知られるとは…。