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逆行物語 第三部~ローゼマイン~

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神の意思(1)



 神の意思の取得。先生方の注意事項説明が終わると、最奥へ向かう洞窟への入り口が開く。
 私と兄様は並んで足を踏み入れた。…のだが、私の足は遅い。後から入って来る人がつっかえて、邪魔になってしまう。端によって、先に行くよう促すと、兄様もそれに習って、私と一緒に行こうとする。断ろうと思った時だった。
「ヴィルフリートは優しいのね。」
 何時の間にか、フェルネスティーネ姫が近くに居た。
「ローゼマイン、折角だから背負って貰ったら? 虚弱な貴方が1人歩いたら、熱を出すかも知れないわ。」
 かも、と言いながら断言している様に聞こえる。
「それ程歩くのですか?」
 兄様が尋ねる。
「ラオブルート、…私の護衛騎士から聞いたのだけれど、魔力量や属性数が多ければ、より奥まで向かわなければならないらしいの。階段も結構多いと言う事だし、人より小さい身体、と言うだけでも大変だと思うのよ。
 行きは登りだし、神の意思を見付けるまでは、体力を温存するべきだと思うわ。」
「そうですか…、しかし、背負うと身体が密着しますし…。」
 お貴族様だもんねぇ…。私は父さんやルッツに背負われていた頃を思い出し、少し寂しくなる。
「気遣いを破廉恥と思うなら、それはそう思う人間が破廉恥なのよ。」
 悪戯めいた表情は誂いの色に染まっている。…どうやら遊ばれてるらしい。でも兄様は気付いていない。真剣に考えて、答えを出した。
「ローゼマイン、私の背中に乗れ。」
 兄様、フェルネスティーネ姫の顔をちゃんと見ようよ。そうは思うけど、しゃがんでしまった兄様を前に、それとなくフェルネスティーネ姫を交わすのは難しい。決してラクチンなのを大歓迎している訳ではないのだ。

 テクテク歩く兄様と背中の私とフェルネスティーネ姫。戻って来る人間はすれ違い様に何か言いたげな顔をするけど、フェルネスティーネ姫が楽しそうにしているからか、黙って通り過ぎて行く。
「何かを大事そうに抱えて歩いてますね。」
「うむ、神の意思は持ち主以外には見えないと聞くから、それがそうなのだろう。」 
「その代わり、持ち主には見れば分かると言われているわ。美しく光っているそうよ。」
 3人で会話しながら、ドンドン奥へ向かっていく。…確かに結構な距離かも。自分1人なら、もっと時間が掛かっただろう。改めて背負う事を提案したフェルネスティーネ姫、背負ってくれた兄様に感謝する。やがて。
「む、私の神の意思が…。」
「降りますか?」
 兄様の発言に私は聞く。
「其方はまだ見付からぬか?」
 逆に聞き返されて、私は改めて見渡すけれど、何も無い。
「はい、私の神の意思は見付かりません。」
「ならばまだ奥か。其方の神の意思を優先しよう。私は後で取る。」
「では暫く3人一緒ね。申し訳無いけれど楽しいわ。」
 2人きりにしてあげられなくてごめんねと副声音が聞こえた気がする。…このお姫様、前世は仲人おばちゃんだったりして。そんな事を思いながら、私達は更に奥へと進むのだった。