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逆行物語 第三部~フロレンツィア~

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変動と覚悟(2)



 ともかく今は色々と片付けなければならない問題が山積みです。そこに…。
「罪を犯していない子供達は助けるべきです。魔力だって余ってる訳では無いのですから。」
「駄目だ。余計な争いの元だ。敵対勢力の魔力等、当てに出来ぬどころか、負になる可能性も高い。」
「必ず敵対するとは限りません!! 貴族院で、親の影響の無い彼等を見てきました! 親の派閥から抜け出したがっていました!! 魔力圧縮の契約や名捧げ等の制限は必要かもしれませんが、まずは子供達自身を見て下さい!!」
 本気を出したローゼマインが止まった事はありません。どうしたものでしょうか…。
「ローゼマイン、君はフェルネスティーネ様を廃して、ツェントに立つ気があるか?」
 ひゅ、と緊張で息が詰まりました。
「…ローゼマイン、ツェントはエーレンフェストの内情を掴む、何らかの手段をお持ちです。」
 それを隠して、私はローゼマインが再び言葉を出す前に声を発しました。
「ゲオルギーネ一派に見られる者達を故意に逃がせば、反逆とも取られるかも知れません。今、中央が何も言って来ないのは、エーレンフェストがどうするのかを試しているのかも知れないのです。
 これから暫くは神の内政干渉が避けられないツェントは、命懸けで落とし処を探るでしょう。
 エーレンフェストが協力者になるか、奴隷になるか…、選択を誤る訳には行かないのです。」
「…ツェントの了承があれば、救えるのですか?」
「君より遥かに強かなツェントだ。君と違い、未知なる知識を貴族の常識の中に当て嵌められるお方だ。対価にグーテンベルクの主体人物等を奪われ、手塩に掛けて育てた君の強みが、完膚無きままに失われるだけであれば、まだ良いな。」
 顔色が変わりましたね。ローゼマインは優秀ですが、貴族の常識からすると、考えられない事を実行するので、正直な話、今は何もして欲しくはないのです。
 曾てその常識外れの優しさのお陰で、ヴィルフリートやシャルロッテが救われたので、感謝の念はあります。
 しかし、辻褄の合わない事を承知で意地の悪い、勝手なる責任転嫁をするならば、全てローゼマインを引き立てる為、お義母様を排除したからこそ、起こったのです。
 そして事件を期に更に派閥を削った事で、私達は不利な状況に陥りやすいのです。
 しかし、誰もがローゼマインにはその様な事を教えていません。まだ幼いとか、ユレーヴェから出たばかりだとかを理由に後回しにしてきました。
 ですが、状況が大きく変わった今、それは赦されません。曾て、ヴィルフリートに対し、許してしまった事で、敵対派閥に付け入れられ、次期領主の内定を消され、誰よりも不利な形で再出発させてしまった事から、私も学んだのです。
「君の望みは本に囲まれて過ごす事。君をエーレンフェストの利にしているのは我々だ。だが君の暴走がエーレンフェストにとって、不利に陥るかもしれない時が度々ある。
 私は君に強くなれ、と言った。それは貴族の中で游げる様になれ、と言う意味だ。今の君は貴族が游ぐ川の縁で、身に合わない餌を投げているだけだ。
 投げられたツェントが無礼千万を働かれた元王子の様に大人しくしている訳がない。川に引き摺り落とされ、溺れさせられるだけだ。
 身に合わずとも、餌を投げて欲しいから、私達が投げられた餌を細かく砕く事を了承しているのだ。
 君の暴走にエーレンフェストが付き合えぬ。アウブとして、私は許す訳には行かぬ。」