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逆行物語 第四部~ハイスヒッツェ~

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フェルディナンド様との再会(1)



 私はアウブに手紙を見せた。勿論、人払いをしている。
「うむ、是非もない。このダンケルフェルガーにあの天才とグルトリスハイトを持つ神の愛娘に迎えるのだっ!!!」
「で、貴方、誰を選ぶのです?」
「え、え~っと、だな…。」
 ジ、ジークリンデ様、少し怖いです。
 フェルディナンド様がエーレンフェストからダンケルフェルガーへ移動するなら、ダンケルフェルガーに婿入りする事が一番容易い(手紙にも記入されている)。
 1度婚姻し、直ぐに離縁。そして後に大切なお相手と星を結ぶ。…しかし果たして偽装婚に了承して下さる淑女がいるのか…。はっ!!!
「良い手がございます!!!」
「良い手?」
「私の妻でございます!!!」
 妻はフェルディナンド様をご存知だ!!! きっと事情を説明すれば解ってくれるに違いないっ!!!
「――つまり、貴方が離縁し、貴方の家であるに関わらず、貴方が家を出て、フェルディナンド様は婚姻で、貴方の家に入る。直後に離縁し、貴方の家では無い別所で、真の花嫁を迎える、と言う事で良いかしら。貴方はその後に家に戻り、再び婚姻すると。」
「おお!! 完璧ではないかっ!!!」
「……男共……。」
 何か仰られたか?
「取り合えず了承が得られたら、お話を進めましょうか…。」
 気のせいであったか!!! うむ、では早速、妻に説明を!!!

 無事に根回しも終わり(妻のお陰だ)、私はフェルディナンド様を迎えに行く。
 ダンケルフェルガーに永住するのはフェルディナンド様と、遣える側近達、そしてグルトリスハイトをお持ちされている、フェルディナンド様の奥方とその御家族。一体、如何様な…。はっ、来た!!!
 境界門が開かれ、懐かしき姿が現れる。おおお…、御立派になられて…! 感情を抑える等、出来る訳が無い!!!
「フェルディナンド様~っ!!!」
 いかん、涙でお姿が霞んでしまう!!!

 「御初に御目に掛かります。フェルディナンド様の妻となる、マインと申します。」

 初対面の挨拶から、そう仰せられたのは…、
「フェ、フェルディナンド様、こ、此方の幼子が!?」
 どう見ても洗礼式前の子供では無いかっ!!! し、しかも名前からすれば平民のっ、
「私の兄を紹介致しますね。お兄様。」
 私の動揺を畳み掛ける様に、マイン嬢が指し示す。兄もまた、初対面の挨拶を行ったのだが…、
「御紹介に預かりました、マインの兄で、ジルと申します。」
 こ、この少年は…! 私の動揺が逆に収まる。収めなければならなかった。
「フェルディナンド様…。」
 私は改めて2人の所作を見詰め、認める。2人は上級、いや、領主候補生と比べても遜色は全く無いのだ。その事が私にある確信を抱かせる。
「ハイスヒッツェ、此方に。ハイデマリー、2人を頼む。」
 少々離れた場所で、ユストクスから盗聴防止の魔術具を渡される。む、これは…、
「気付いたか。これは声だけでなく、唇の動きも隠すのだ。」
 成程、読唇術も効かぬと。私はフェルディナンド様の相変わらずの有能さに感心しながら、魔力を注いだ。