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逆行物語 第四部~ハイスヒッツェ~

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フェルディナンド様との再会(2)



 「あの2人は平民の富豪の産まれだ。マインが身食いで虚弱な為、魔術具を貴族から買っていた。偶々ユストクスがそれを知った時、マインの魔力が余りにも高過ぎると気付いたのだ。豊富な魔力は幾ら有っても良い。そこで私はマインの両親に接触し、魔石を渡していたのだ。
 マインとも直接話をしたのだが…、まあ、いつの間にやら、そう言う感情を持つ様になってな、それで婚姻したいと思っていた処、マインはグルトリスハイトを宿したのだ。
 ジルヴェスターにも相談したが、元・下位の中領地では抱え切れない、と結論付けられた。星結びに関してだけ見たとしても、今のエーレンフェストでは難しい。そこで秘密裏に領地を出る事にしたのだ。
 だがその計画最中に、マインの存在がヴェローニカ様に知られてしまった。幸い、グルトリスハイトの事は気付かれていないが、彼女は昔から私の大事なモノを奪って悦ぶクセがあってな…、マインの家や店を襲ったのだ。
 その時、マインは私と一緒に居た為、難を逃れた。だがマインの家族は……、高みに昇っている。しかも最中に一番の目的が居ない事に気付いた実行犯がジルを生かして捉え、拷問に掛けた。…人間の尊厳も、男としての自尊心も粉々にする様な遣り方でな…。
 余程、堪えたのだろう、助け出し、癒しを掛けた直後に気を失い…、目覚めた時には全ての記憶を失っていた…。自分の名すら言えなかったのだ。
 こうなった以上、無理に思い出させる必要は無いだろうとは思っているが。」
「…………!!!」
 私は拳を握り締めた。何と言う事を…。フェルディナンド様のお言葉、視線の様子から否応無しに悟らされる。ジル殿は恐らく……、くっ、許さまじ、ヴェローニカ!! 無理矢理に男児をゲドゥルリーヒに仕立てるとは!!!
「助け出すのには、ヴィルフリート…、洗礼式前のジルヴェスターの嫡男が協力してくれた。ヴェローニカ様を引き付けくれてな。お陰で秘密裏に拷問真最中の連中に対応出来た。」
 そうか…、やはりジル殿は…。恐らく領地内の秘密裏の情報、グルトリスハイトに関わらぬ部分を勝手に漏らす訳には行かぬのだろう。
 かなり遠回しに仰られたが、伝わった。ジル殿とマイン嬢は…、ジルヴェスター様のお子なのだと。人に言えぬ身分…、恐らく何らかの理由で神殿にいる青色巫女が愛妾なのだろう。
 ジル殿には魔力が感じられぬと言う事は、魔力に対する知識がなく、第一子妊娠時期には、魔力を与えられなかったのであろう。それもあって、普段は富豪家に預け、平民と誤魔化していたと言う訳か…。
 そして嫡男…、ヴィルフリート様、だったか。その邪魔になるのではないかとヴェローニカは考えたのやも知れぬ。だがヴィルフリート様は異母兄を味方したと言う訳か。うむ、理解した。
「ジル殿は騎士に負けぬ心意気を持っておられるのですな。」
 しかし、暗黙の了解をそのまま口には出せぬ。貴族の良識である。だから私は頷くに留め、違う言葉で理解を伝える。
「拷問に掛けられている最中に助け出されたと言う事は、妹の居場所を教えなかった、口を割らなかった、と言う証でございましょう。いやはや、ヴィルフリート様でしたか、きっと見習いたいと思うたのではないですか? ジル殿は偶然にもジルヴェスター様と同じ髪色の様ですし、憧れるやも知れませぬな。」
 若いアウブの顔は、話をせずとも、覚えている領主会議出席者は多かろう。幼きながら、ジルヴェスター様そっくりのご容姿を、私は見詰めた。