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逆行物語 裏四部~ジルの背景~

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ハルトムート視点~搦め手~



 ヴィルフリート様はダンケルフェルガーの産業をエーレンフェストに分業する、2号店を作る許しを得てきた。
 ヴィルフリート様主導で選ばれたのはギルベルタ商会で、エーレンフェストの経済は一気に回り、そこから成績も上がり、何時しか順位も上がる。
 ダンケルフェルガーに入り込む為に、着実に進んでいる。全く以て浅ましい。
 ダンケルフェルガーがそこまでしてエーレンフェストを守る理由は、確かにフェルディナンド様が関係しているかも知れないが、それはつまり、あれだけ不遇を敷かれながらも、外からエーレンフェストを守って下さっていると言う事だ。
 あの馬鹿げた話が真だったとしても、無能なアウブ1人の生け贄ならば安い。
 ローゼマイン様は優しい、だけの存在ではない。恐らくだが、フェルディナンド様が後ろにいるのではないかと思う。
 アウブにしか扱えない魔術具は、礎への魔力供給で登録変更が可能だ。だから高みに昇っていなくとも、高みに昇っている、と言う偽装工作が可能だ。そして逆に、高みに昇っていても、昇っていないと言うのも問題は無い。
 アウブ業とは関わりの無い登録は本当に個人的なモノだから、多くの者には分からない。私も私の両親も知らない。
 結論として、私はフェルディナンド様は復讐したのではないかと思う。アウブは既に高みだ。ヴェローニカから大切な者を奪い、同時に不遇を強いるアウブの命を奪う。そしてダンケルフェルガーに逃亡。エーレンフェストから離れて、様子を見ていたのかも知れない。そして罪悪感からなのか、フェルディナンド様はエーレンフェストを守り出した。ヴィルフリート様にローゼマイン様を通して、手柄を渡しているのはそう言う事では無いか、と思っている。
 それを知らずにダンケルフェルガーに入り込んで、等と何とも愚かではないか。
 ローゼマイン様にエーレンフェストの企みを進言する事が出来たなら…! くっ、名捧げの為に縛られた我が身が憎い…! 
 
 とにかく私は機会を伺っていた。ローゼマイン様の側近へのダンケルフェルガーに婿入りが出来ぬし、それ以外の貴族への婿入りも断られる為、ヴィルフリート様に取り立てられる様、行動していただけあって、間も無く打診が来た。
 私の名はヴィルフリート様に捧げ直す事になり、名を奪われたその場で新たな命令で縛られた。
「以前の名捧げの命を継続すると同時に、これより先は、私の許可なく、ローゼマイン様に賛同する事も、彼女の為になると独自で行動する事も許さぬ。エーレンフェストの利を言い訳に使う等、以ての外と心得よ。私の側近に来た以上は私の命ある限りは守ってやるが、心の決着までは世話はせぬ。」
 私は…、エーレンフェストにとって、危険人物と見なされていた様だ。私は自由と引き替えに、安寧とダンケルフェルガーへの居住権を得た。恐らく、打診を断っていたなら殺されていたのだと考えるのは、決して間違いでは無かったのだろう。