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ハルトムート視点～絶望～

　ヴェローニカ様が病に倒れると、派閥融和が進んでいたとは言え、全く問題が無い訳では無かった水面下では、次期アウブについて、決して優雅では無い、青い花が散っていた。
　ボニファティウス様はある程度、押さえていたものの、ダンケルフェルガーからヴィルフリート様の婿入りを願われて、次期アウブと決定しているからと言いながらも、心は揺れていた様だ。
　結局、ヴィルフリート様が領内の安定を優先して欲しいと言われ、ハンネローレ様への婿入りが決定した(婿取りディッターで勝利したからだとダンケルフェルガーは思っているだろうが)。
　因みにローゼマイン様は既に婚約している。それがエーレンフェストの出身者だとかで、それがフェルディナンド様では無いか、と思われた。

　実際にヴィルフリート様がダンケルフェルガーに婿入りすると、やけに喜ばれた。此方ではフェルディナンド様については余り隠されていないらしい。普通に情報が入る為、ランプレヒトが悔しそうにしている。
　フェルディナンド様がローゼマイン様の御相手として、顔をお見せになられた時等、何時飛び掛かるかと私は折角の機会だと言うのに、落ち着いてローゼマイン様を観察出来なかった。
　表向きは笑顔でフェルディナンド様と挨拶なさっているが、お互い、胸の内はどうであろうか。
　…集めた情報ではフェルディナンド様がエーレンフェストを出た際、ヴィルフリート様が手を貸したらしい。…何だ、このエーレンフェストとの差は。
　まあ、グルトリスハイトをツェントに下賜した話に比べればどうでも良い。流石はローゼマイン様!　ローゼマイン様に祈りを!!　

　何……?　ローゼマイン様が、高みに!?　バカなっ!!!　これから何を励みに生きて行けば良いのだっ!!?　
　頭を殴られている様に痛む。なのにヴィルフリート様の命令で、アウブを取り戻しに行く。ランプレヒト共々、決して顔に出すな、言葉に出すな、と言われたが、元よりそんな気力は無い。
　私はボンヤリとしたまま、アウブに良く似た青年と共に、隠し部屋に入った。