二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

逆行物語 裏四部~ジルの背景~

INDEX|4ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

フロレンツィア視点~夫と息子~



 ジルヴェスターが突如、行方不明となりました。状況から察するに、フェルディナンド様が関わっているのは明白でございました。勿論、信じ難くはございましたが。
 そしてお義母様が語るフェルディナンド様の動機、それからジルヴェスターの過去…、私には驚きの連続でございました。
 私にはお義母様の妄言とは思えなかったのです。恐らく殆どの人間が、何をバカな、と思うでしょう。この事件がなければ、私達もそう言ったかも知れません。
 しかし現実にフェルディナンド様がジルヴェスターを誘拐したとしか思えない事に加え、ジルヴェスターの過去、更に妻の私だけが知る事実を思えば、そう言う常識外な事も有り得ると思ってしまうのです。
 忘れもしません。星結び後の夜を…。ジルヴェスターと共に閨に入り、私は緊張していました。
 貴族女性も貴族男性も教育係から閨の事を学びます。女性は知識のみですが、男性は実施があるそうです。
 その為、女性は閨では男性に全て任せろと言われます。私は勿論、その積もりでございました。ですが………。
「嬉しいな~、嬉しいな~、幸せ過ぎて涙出る。死んじゃいそう。」
 実際にそのまま言っていた訳ではありませんが、こう言う内容の事を語り、顔を赤くして、泣きながら寝入ってしまいました。

 嘘でしょう!? 

 それが私の初夜の想い出でございました…。私の緊張は何処かへ行ってしまったのです。
 それでも私は淑女として、待っていましたが、3日目で駄目だコリャと悟って、ジルヴェスターに迫りました。ジルヴェスターは全身赤くして、正直、私の羞恥を吹き飛ばす程、恥ずかしがっていました。心の準備が、とこの期に及んで言い出すので、私から口付けし、魔力を流しました。本当に…、染め薬を飲むのは何の為ですか、と聞きたい気持ちになったものです。
 まあ、それで何とか初夜になりましたが…、その後も大変でした。恥ずかしがって、恥ずかしがって…、一体、どうやって閨教育を受けていたのかと思いましたが、恥ずかし過ぎて、本を隠し部屋で読んでいただけだと言われ、私は目眩がしたものです。
 今は甘えて抱き付くくらいならしますし、頬に口付けを受ける事には、普通の反応になりましたが、相変わらずその先が大変でございます。
 お義母様のお話を聞いて、漸く腑に落ちました。確かにそれでは知識以上は教えられなかったでしょう。
 その後、急にヴィルフリートが現れ、一気に話は進みました。落ち着いて考えれば、誘導された様な印象もありましたが、ヴィルフリートの案は実用的であったには違いありません。
 正直、かなりしっかりしていて、少し教育が遅れている様に思っていた為、とても驚きました。
 話が纏まると、片付けるべき処から問題に対処して行きました。その際、後回しにする処でした、神殿の魔力補充をどうするのか、ヴィルフリートから案が出ました。
 領主一族が率先して、神殿に魔力を奉納する、何故ならどうせ誰を使っても不満が出る、それなら領主一族が動いた方が心証も良い、協力を願う場合も従って貰いやすい、と。更に神官長は今いる青色の中から選び、神殿長は領主一族から、自分が出ると言い切りました。
 当時はとても賛成出来ませんでしたが、熱心さに推し切られた形でした。しかしそれが後になって、大きな力になりました。
 ヴィルフリートの策は、エーレンフェストの発展を導いていくのです。

 ヴィルフリートがダンケルフェルガーのハンネローレ様に婿入りする事になり、次期アウブの座を返還する事になりまさした。
 派閥融和が進んでいるとは言え、後継者争いはやはりライゼガングとヴェローニカ派閥とに別れてしまいますから、それを未然に防いだ形になります。お義母様がお倒れになりましたし、緩やかに権力移行が進む事でしょう。エーレンフェストは発展しながらも、非常に穏やかな空気を作り出しています。
 その中でダンケルフェルガーに入り込むヴィルフリートだけが、平和な心境とは言えないのです。
 私は母として、ヴィルフリートに無理はしないで欲しいと思っています。ヴィルフリートは焦らないから、時間をゆっくり掛けるから、無理な動きは無いと言っておりましたが、心配なモノは心配です。

 ……………。

 ヴィルフリートが婿入りして4年。とうとうジルヴェスターをエーレンフェストに返すと言う、暗号手紙が届きました。詳しくは逢って話すと言う息子の里帰りを、夫との再会に心が踊るのを実感致しました。
<章=ジルヴェスター視点~ジルの誕生~]

 衝撃が頭の内部から発した。混乱しながらも、甦った記憶が教えるままに口を開いていた。
「ヴィ、ヴィルフリー、ト?」
「お久しぶりです、父上。」
 成長した息子の声は平淡だった。

 フェルディナンドに呼び出された時、内密に、2人だけで話したいと言われ、私は了承した。
 私はフェルディナンドを信頼していたし、カルステッドもそうだった為、何の疑いも躊躇いもなく、フェルディナンドが呼び出した下町へ向かった。下町は余り詳しくは無かったが、事前に渡された簡易の道案内の木札を見ながら、夜の森へ着いた。
(下町にも森があるのか、臭いさえ我慢すれば、狩りを楽しめるのではないか。)
 初めての発見に心を踊らされ、気分良く歩いていると、フェルディナンドを見付けた。
「フェルディナンド。」
 声を掛けると、差して何時もと変わらぬ表情でフェルディナンドが振り向いた。その時だった。
「シュラートラウムの祝福をジルヴェスター様に。」
「え?」
 何処からか、高い声が響くと共に、真近くで魔力の波動。慌てて魔力を動かし、防御しようとしたが、只の祝福とは思えぬ膨大な魔力は私の魔力の壁を破ってしまう。
「ぐっ、」
 途端に遠ざかる意識。マズイ、フェルディナンドは、と必死に眠気に耐える私の耳に届いた声。
「シュラートラウムの祝福をジルヴェスターに。」
 確かにフェルディナンドの声だった。二重に掛けられた強力な祝福に抗えず、倒れ掛かる私の体を誰かが支えた。
「シュラートラウムの祝福をジルヴェスター様に。」
「シュラートラウムの祝福をジルヴェスターに。」
 駄目押しの二重祝福を最後に、私は意識を喪った。

 次に目を覚ました時、私は私では無かった。
「お早うございます、お兄様。御気分はどうですか?」
 心配げな顔を見せる幼女。その姿に見覚えもなければ、高い声にも聞き覚えはない。
「お前は誰だ?」
 咄嗟に口に出た言葉には違和感しかない。幼女は目を真ん丸にしている。
「お兄様…、私が分からないのですか!?」
 そう言われて眉をしかめる。分からないも何も初対面だ。私には妹は…!?
 自然と浮かび上がる筈の日常を、全く覚えていない事に気付いた。
「俺は…、お前の兄なのか?」
 愕然としながら起き上がる。そうして自分が動いている馬車に運ばれている事が分かる。
「何故、馬車に? 俺は何をしている? そもそも俺は誰なんだ? 親はいないのか?」
 混乱している私は、言葉を出せば出すほど強まる違和感に、頭痛さえ感じていた。
「お兄様…っ、」
 大きな瞳から涙が零れそうになっている。シュミルみたいだ、と凡そ場違いな感想が沸く。