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逆行物語 真二部~エーレンフェストの為に~

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麗乃=マイン視点~お兄様と貴族院~



 貴族院でも兄様は遣り方が上手かった。“ローゼマイン”の暴走を上手く利用しながら、“ローゼマイン”の手綱を取れると見せ、その中で順位は爆上げだ。
 そうして兄様は“ローゼマイン”の婚約者となり、“ローゼマイン”死後を考え、ブリュンヒルデを娶る話まで出した。
 実際、ブリュンヒルデは嘗てもそうだった様に、エーレンフェストを、領主一族の事を第一に考え、その上に自分の望みを乗せていた模範的な優秀な貴族だった。
 きっと良い選択だった。でも…。
【宜しいのですか? 兄様はハンネローレ様の事…、】
 ここまで状況が揃うとハンネローレ様の嫁入りは難しい。
【正直…、ハンネローレを想わぬ訳では無いが…、私が愛しく思い起こす彼女は、私の意識と同年なのだ。今、此処に存在する彼女は子供にしか思えぬ。
 政略婚として宛がわれるなら、子供であろうと問題無いが、女性として意識するのは無理だ…。】
【ああ~…。】
 納得した。その辺りが幽霊な私との決定的な差なんだろう。ちゃんと生きている兄様は、その分、年を取っているもんねぇ…。
【お祖父様とお呼びしても?】
【構わぬぞ、婆様や。】
【…ゴメンナサイ…。】
 冗談でも厭だ、私は。兄様はクックッと笑っていた。

 フェルディナンドがアーレンスバッハに行く事になった。これは想定内だと言う。そして“ローゼマイン”ではなく、兄様がフェルディナンド取り戻しに動く。

 「私が必ず叔父上を取り戻す。」

 兄様は“ローゼマイン”にそう言った。“ローゼマイン”が感激していたけど、他の男を想っている婚約者に仏対応って、バカにされそうな気もする。兄様はそう言うのも分かった上で、何だろうけど。

 …ほんと、ごめんなさい。

 あの頃の自分を振り返って、自己嫌悪する。
「良いか、“ローゼマイン”。叔父上が心配なのは良く分かる。色々と気を使うべきだとも思う。だがそれは其方個人でしか出来ぬ。エーレンフェストを代表しては出来ぬ事なのだ。
 だが貴族院で動くと必ずエーレンフェスト全体の事になる。如何に個人的に叔父上に関する話を持って来られたとしても、勝手に動いてはならぬ。
 下手をすれば叔父上を取り戻す為に動く、私にとって邪魔になるやも知れぬ。
 納得行かぬかも知れぬが、今暫くは私の指示以外では勝手をせぬで欲しいのだ。」
 本当に旨い…。“ローゼマイン”は早速、何をすれば良いのかと聞いてきていた。
「星を結ぶ前であれば、婚約破棄も容易いとは言わぬが、出来ぬ事ではない。この結婚が叔父上の望みでは無い事を全領地に知らしめる。」
 “ローゼマイン”が目を見開く。
「この婚約がフェルディナンド様が望むと思われるのですか!?」
「表向きは大領地への婿入りだ。神殿入りと言う傷を持った中領地の領主候補生には過ぎた出世だ。
 更に付け足すなら、叔父上が貴族院時代に交流のあった、ダンケルフェルガーやドレヴァンヒルと言った、上位の大領地は叔父上が不遇に置かれていた話も知っている。
 外から見れば、未だ神殿から出られず、其方の後見人と言う形で飼い殺しにされていると映るのだ。
 アーレンスバッハが今回の事を持ち出したならば、深い事情を知らぬ領地は賛成するであろうし、賛成せずとも、自領の領主候補生に白羽の矢を立てられるのが嫌ならば、静観するであろう。

 まずはその認識を覆す。

 其方の大好きな本を使ってな。」
「兄様…。」
「私は物語を書くのは始めてだ。故に完成した話をエルヴィーラに監修を頼もうと思っている。必ずや売れ筋になるであろう。
 そこで重要なのは、物語が叔父上を示すモノであり、真実だと錯覚させる事だ。」