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逆行物語 真二部~エーレンフェストの為に~

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麗乃=マイン視点~お兄様の計算違い~



 「錯覚?」
「真実全てを書く訳にも行かぬ。下手をすれば、言い掛かりだとアーレンスバッハから責められ、王命に対する不敬とも言われ兼ねぬ。
 故に王族もアーレンスバッハも悪者にはせぬ。その条件で叔父上がエーレンフェストと言う片田舎で神殿に籠る事を望んでいるとせねばならぬ。となれば捏造も必要、元より物語なのだから、そのくらいは当然ありと言えよう。
 さて、では真実だと思わせるには説得力が必要だが、その手っ取り早い方法は何か。それこそが其方に頼みたい事だ。」
「私は何を?」
「其方が書いた事にする事。作家名を“ローゼマイン”にする許可を貰いたい。そして何を聞かれても、自分が書いたとは答えず、けれど自分以外が書き手だとも伝えず、でその思い込みを独り歩きさせて欲しいのだ。
 騒ぎが大きくなれば、必ず王族やディートリンデ様の耳に入る。無視は出来ぬ。いや、させぬ。
 王族が動いた時が勝負だ。勿論、その舞台は私が立つ。
 故に私が書く物語は、父上の耳に入れる訳には行かぬ。立場上、反対せざるを得ぬ。勿論、叔父上にも、だ。秘密裏に事を進める為、また、本の出回りを助ける為、儲けを度外視して欲しい。無料で配るのだ。」
 “ローゼマイン”はぐっと顔を上げた。
「お任せ下さいませ!」

 …………………………………。

 【…兄様、ディートリンデ様に何かしました?】
【いや。】
【じゃあ、こうなると分かっていたのですか?】
【…いや。】
【………。】
【…完全に計算外だ。あんな変態とはごめんだと騒ぎ立てると思っていたのだが。】
 完全なる予想外なディートリンデを、それでも利用した結果、見事に更正することになる。

 …ディートリンデ様……、、、

 “ローゼマイン”の死後、フェルディナンドは正気こそ失わなかったけど、やっぱり養父様に依存した。問題が何も起こらない訳じゃ無かったけど、ヴェローニカ派閥を生き残らせた事が、アーレンスバッハの貴族の取り込みに役立った。
 ライゼガングが日の目を見るのは難しいけど、高望みしなければそれなりに仲良く出来るだろう。シャルロッテやメルヒオールと兄様は仲が良いし。
 
 兄様は“ローゼマイン”の望みである家族団欒を叶えた。そして上手く操作して、ブリュンヒルデに流行りのノートを与えさせた。これは“ローゼマイン”の死後を考えての事何だろう。
 兄様はさりげなく、スピードは落とすだろうけど、流行りの発信がしやすい様に舞台を整えた。

 巻き戻りの時点が来た時。兄様がハンネローレ様と結ばれる事は無かった。