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逆行物語 第六部~貴族院の教師~

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グンドルフ~エーレンフェストの領主候補生~



 噂が聴こえてくる。エーレンフェストの領主候補生。神殿育ちと平民育ち。侮蔑する様な噂は直ぐに、異様な優秀さを騒ぐ内容に擦り変わった。
 優秀なエーレンフェストの領主候補生と言えば、天才と名高いフェルディナンド様が思い起こされる。
 神殿に行かされたと聞いて、何ともやるせない心持ちになったものだが、アウブ・エーレンフェストが自身の子を神殿に入らせていると聞いて、その布石だったのかも知れぬと考えた。
 何故、神殿に拘るのか解らぬが、エーレンフェストでは神殿の有り様を変えようとしているのは分かった。
 件のお2人はフェルディナンド様に鍛え上げられたそうで、非常に優秀だ。
 よりお話に昇られるのはローゼマイン様だが、その影に隠れる様にしながら、確かな道を歩いているのはヴィルフリート様だ。
 言うなればローゼマイン様は突き抜けているのだ。天才と称される人間は全ての神々より祝福されていると言われる。そして故に、カーオサイファにも愛される。その典型がローゼマイン様だ。
 そしてフェルディナンド様。あの方も確かに天才ではあった。だが、カーオサイファに愛されたのは才ではなかった。
 ローゼマイン様を知れば、フェルディナンド様は天才肌であって、天才ではなかったのかも知れぬ、と思わされる。
 だがしかし。ヴィルフリート様は天才ではない。いや、天才であると同時に天才ではない、と言えるお方だ。…ヴィルフリート様は努力の天才なのだ。故に自身を祝福する神を、時と場合で選ぶ事が出来る。目立たなくとも、着実な道を掴んでいる。

 さて。そんなお2人が神秘的な素材を、乗り込み型騎獣一杯に詰めて帰ってきた。シュタープを取りに行った筈なのに。
 お2人の説明に依ると、洞窟の最奥まで行くと、真っ白な大木があり、その枝がその神秘的な素材らしい。
 フェルディナンド様がシュタープを得た際に、最奥まで行かれたのだが、当時は神の意思に魔力を注ぐ事に意識を持って行かれた為、枝を折り、持ち帰る発想が無かったと言う。
 しかし最近になり(自身の弟子が神の意思を取る時期になったからか)、ふと、その事を思い出され、今になって、素材を取ってこれば良かったと考えられたとか。
 神の意思のある洞窟の素材等、他では見た事も無い上に、1度きりしか取ってこれぬ。あの神秘的な気配を思えば、最高峰の素材に違いないと、2人に指令を出していたのだと言う。
 お2人はフェルディナンド様と同様、最奥にまで行かれ、そこで神の意思を見付け、その場で回服薬を飲みながら、魔力を注ぎ込み、取り込まれたと言う…。
 そして後は大木から山程枝を折り、乗り込み型騎獣に積み上げたと…。ご丁寧に土や周囲の雑草まで…。
 無論、私も興味があった。だから、少し譲って貰えぬかと頼んだ処、ヴィルフリート様に見事乗せられ、全領地の稀少素材を手に入れる為の伝を貸し出す事になった。まあ、損は無い…。